株価の下落を背景に家計の金融資産は微減となる
日本銀行が四半期ごとに公表する「資金循環統計」によれば、家計の2019年6月末の金融資産は1860兆円と2018年6月末と比較して金額にして2兆円、率にして0.1%のわずかながら減少となりました。米中貿易摩擦の激化などを背景に、世界的に株価が軟調な展開となる中、保有している株式や投資信託の時価評価額が減ったことがその要因です。家計の貯金は減っている
家計同様、企業の金融資産は大幅に減少しています。やはり株安を背景として1年前より3.2%減少の1166兆円となりました。このうち株式等は1年前より13.1%減少の377兆円となった一方、現預金は同2.3%増の266兆円となっています。企業の現預金は、43四半期連続して増加しており、企業が手元資金を厚めに積む動きが続いています。
現預金は50四半期連続して増加している
それでは家計の金融資産の内容を詳しく見ていきましょう。低金利が続いているにもかかわらず、現金・預金の残高は増え続けています。2019年6月末現在の残高は991兆円と1000兆円の大台が視野に入ってきました。残高は2018年6月末と比較して1.9%増加、50四半期(12年半)連続して増加しています。統計を取り始めた2005年3月以降で最高を更新しています。増加割合は2%前後で推移していることから、次回、2019年9月末の残高は順調にいけば1000兆円を超えていることになります。
「貯蓄から投資(資産形成)」への取り組みは残念ながら足踏みしているといわざるをえません。6月末の株式等の残高は、1年前と比較して9.7%減少の195兆円でした。また、投資信託の残高も1年前と比較して3.7%減少の70兆円でした。合算しても265兆円、金融資産残高全体に対する割合は14.3%に過ぎないのです。現金・預金が金融資産残高に占める割合は53.3%もあるのですから、低金利の長期化、老後資金2000万円不足問題が発生しても、リスクを取って資産運用を行うことには抵抗があるようです。
その時々の株価次第といえますが、株式等、投資信託は3四半期連続して残高を減らしている状況です。逆にいえば、株価の状況次第では、これまで超えたことのない金融資産残高1900兆円が視界に入ってくることになるでしょう。
これまでその残高を減らし続けていた債務証券(債券)は、2四半期連続して残高を増やしています。6月末の残高は、1年前と比較して3.6%増加の25兆円となっています。個人向け国債は最低金利0.05%でも預貯金よりもましな点が見直されたこと、4月にソフトバンクグループが5000億円の個人向け社債を発行したことが影響しているのかもしれません。
現金・預金ほどの増加率ではありませんが、地味に残高を増やしているのが保険・年金・定型保証です。そのうち保険は、1年前と比較して0.9%増加の374兆円となっています。金融資産残高全体に占める割合も20.1%と2割以上をキープしています。保険加入者の割合は減少しているといわれますが、資金循環統計を見る限り日本人の保険好きは変わっていないように感じられます。
皆さんの金融資産残高は順調に増えていますか? ほったらかしにしておくのではなく、適宜、残高等を確認するようにしましょう。
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