失恋を経験した人なら「わかる!」と共感してしまう心理描写と、名優2人の普段演じるキャラクターと真逆の、迫真の演技が見ものです。
2大スターの意外な一面とフランス人監督による緻密な映像
フランス留学時代、大学での文学の講義でフランス人の教授がおもしろいとすすめていたのが、この映画『エターナル・サンシャイン』でした。主演はジム・キャリーとケイト・ウィンスレット。コメディ俳優のお手本みたいなジム・キャリーは個人的に大好きな俳優で、タイタニックのイメージが強いケイト・ウィンスレットはイギリスの正統派女優という印象を持っていました。
ところがこの映画では、2人のキャラクターがそれまで演じていた役のイメージを覆していてとても新鮮でした。ジムは変顔を封印し不器用で繊細なジョエルを、ケイトは気高いお嬢様という一般的なイメージとは真逆の、ちょっとハスッパな女性をとてもリアルに演じています。
ちなみにこの映画を監督したのは、フランス人のミッシェル・ゴンドリー。ダフトパンクやカイリーミノーグといった人気アーティストのMVで有名になった監督です。緻密に計算された、凝った映像を得意としており、この映画でもその手腕が存分に発揮されています。
辛い失恋の記憶を消してしまうという発想
失恋したてのころって、辛すぎて記憶を消したいと思うこと、ありますよね。この映画では、主人公2人がそれを実際に実行してしまいます。記憶を消去した後のクレメンタイン(ケイト)に会いに行くと、まったく知らない人のように接されショックを受けるジョエル(ジム)。この表情が切なすぎて秀逸です。劇場では、隣の男性が1人で泣きながら観ていました。アナザーストーリー的な感じで、記憶除去クリニックの受付嬢と医師との三角関係も描かれていますが、キルステン・ダンストとマーク・ラファロがキャスティングされていて何気に豪華です。
パズルのように頭で話を組み立てながら観るおもしろさ
時系列が前後して話が進んでいくのですが、クレメンタインの髪の色と、ジョエルの車の傷が時系列の指標になっているのがポイント。まるでパズルのように頭で組み合わせながら考えて、エモーショナルにもなれる稀有な作品だと思います。アカデミー賞の脚本賞にも輝いているこの作品。ちょっと構造が複雑なので、一度のみならず、2、3回観るとより理解が深まり楽しめると思います。
DATA
エターナル・サンシャイン
監督:ミシェル・ゴンドリー
時間:107分