子供がいると、食生活への関心が自然と高まるもの。どんなご飯を作るかはもちろん、子供に食事の大切さを上手に伝えたいとも思うものです。
管理栄養士であり、一児の母でもある私がおすすめしたい映画が『はなちゃんのみそ汁』。乳がんになった母親が生活習慣を改め、健康的な食生活を娘に伝えていくストーリーです。玄米食や鰹節から出汁を取ることなど、昔ながらの日本型食生活の魅力がたっぷり。
家族の絆や生きることの素晴らしさについて、改めて考えるきっかけにもなった作品です。
印象的な記憶は、子供の成長の糧になる
この映画に出会ったきっかけは、地元で行われた上映会に、幼稚園児の娘と参加したこと。実写映画を見るのが初めての娘はなかなか集中できず「あまり記憶には残っていないだろう」と思っていました。しかし、内容ははっきりと理解できていなくても、子供ながらに記憶に残るシーンがあったようです。劇中に、主人公の千恵が4歳になった娘のはなに、毎日みそ汁を作ることを約束させ、料理を教えはじめる場面があります。娘にとっては、同じ背格好の子供が1人でみそ汁を作るという姿が印象的だったとのこと。鑑賞後に「料理をしてみたい」「お手伝いをしたい」と料理への強い関心を示していました。
映画を通して自然な形で料理をすることの楽しさを伝えられ、興味を引き出すことができたのがとてもよかった点です。もう少し大きくなってから、またこのときのことを思い出してもらえたらいいなと思います。
食事と体は繋がっていると実感するきっかけに
もう1つよかったのは「食事と体は繋がっている」のを改めて実感できたこと。病気を扱う映画ではありますが、作中でも語られている通り、決して食事で病気を治すというお話ではありません。描かれているのは、食事を整えることによって体温を上昇させ、自然治癒力を高めようとする様子です。
子供のために「がんを殺したい」という強い気持ちで闘う千恵が、「玄米・みそ汁・魚」の日本型の食事に変えたことで、生きるための意欲が向上したり、食事の大切さを感じたりする姿に心を打たれます。私は病院で、病気を持つ方への栄養指導をしたこともあるのでより実感を持って感じることができました。
食生活を変えるためには強いきっかけが必要です。乳がんになることは決して喜ばしいことではありませんが、この映画から病気と食生活の結びつきや、理想的な食生活を後世に伝えることの重要性を再確認できました。
「自然食が絶対正しい」というわけではない
とはいえ、必ずしも全員に自然派な食生活を強要するものではないとも考えます。心と身体は繋がっているので無理はせず、何事も適度に、いろいろな食品をバランスよく摂るということを意識していきましょう。張り切って取り組んでも「結局続かなかった!」ではあまり意味がないので、持続可能かどうか見極めることも重要なポイントです。
また、過激な自然派志向は、ときに医療に背き、早期発見・早期治療のタイミングを見逃してしまうこともあります。しっかりと西洋医学と東洋医学の線を引き、本当に命を守りたいときは病院に頼ることも忘れないでくださいね。
DATA
東京テアトル株式会社|はなちゃんのみそ汁
出演: 広末涼子、滝藤賢一、 一青窈、紺野まひる、 原田貴和子
制作年:2015年
時間::118分
原作:安武信吾・千恵・はな『はなちゃんのみそ汁』