イタリア統一前夜の混乱期を描いたベストセラー同名小説をイタリア映画界の巨匠ルキノ・ヴィスコンティ監督が見事に映像化。カンヌ映画祭でパルム・ドール賞を受賞した名作で、日本でもデジタル復刻版が販売されています。
舞台はイタリア統一前夜のシチリア島の州都パレルモ
原作は、シチリア・パレルモ出身の貴族ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペデューサによる同名小説。自身の先祖であるサリーナ公爵をモチーフに、19世紀のシチリア貴族の華々しい暮らしとイタリア統一運動最中の混乱を描いた歴史小説で、1958年の初版発売当時からイタリアで大ヒット。戦後のイタリア出版界の伝説となるベストセラーを記録し、世界各国で翻訳されています(もちろん日本語にも)。シチリアの近代史を知るための手がかりとして、小説自体も当然オススメですが、映画ならよりわかりやすい。美しいビジュアルと共に、当時の世界観に浸ることができます。
華麗なる当時の貴族文化の象徴、舞踏会は名シーン!
地中海の真ん中に位置し、東西文明の十字路として栄えシチリア。本作の舞台でもある州都パレルモは、かつてシチリア王国の首都であり、スペイン帝国支配時代以降も華やかな貴族文化を謳歌する黄金の時代を生きてきました。その黄金の歴史の転換期が、イタリア統一。貴族が既得権益を失い、民主化が進む過程で巻き起こる悲哀と諦観に満ちた貴族の没落を描いた本作は、その映像美も見どころです。 なかでもゴージャスな舞踏会シーンは必見!
実在する豪華絢爛な貴族の館で撮影された「イル・グラン・バッロ(偉大なる舞踏会)」シーンは、本作の代名詞。クラウディア・カルディナーレ演じるやんちゃな村娘・アンジェリカが魅惑的な淑女に変身し、バート・ランカスターのサリーナ公爵と華麗に舞うシーンは、まさに釘付けになります。
シチリアの美しい過去を知る名画でバーチャル旅行
舞台そしてロケ地となったパレルモの旧市街には、今も重厚な貴族の館が並んでいます。そこで毎夜繰り広げられていたであろう舞踏会……。映画を観た後は、街の風景がリアルな歴史として心に響いてきます。イタリア統一は、いわば日本における幕末の歴史のようなもの(パレルモ暮らしでは、イタリア人たちとの会話に映画(小説)の登場人物やシーンが当たり前のように登場しますよ!)。いつかシチリアを訪れるときのために、基礎知識として観ておきたいイチオシ映画です。
シチリアといえば、マフィア?なイメージだけではちょっと偏り過ぎ。秋の夜長に、150年前のシチリアをバーチャル旅行してみては?
DATA
山猫
監督:ルキーノ・ヴィスコンティ
時間:186分