2002年公開。
留学生活をしたことがある人なら「分かる!」と思う部分がいっぱい。留学生活をしたことがない人は、してみたくなる映画かもしれません。
バルセロナで笑いあり、涙ありの青春留学ストーリー
私は2000年にスペインのバルセロナへ語学留学に旅立ちました。その間日本ではあり得ない数々の失敗に悪戦苦闘しながら必死で生活していたのですが、ある時日本の友人からメールが来ました。「『スパニッシュアパートメント』っていう面白い映画を見たよ。バルセロナでルームシェアしてる人たちの物語。まきちゃんもこんな生活してるのかな~って思って」と。
映画は見ていませんでしたが、「まさか。映画みたいな素敵な留学生活なんてしてるわけないやん……」と思ったものです。とはいえずっと心のどこかで気になっていました。そしてその後、一時帰国をしたときに、何気なくレンタルして観てみました。
フランス人の青年グザビエ君がイタリア人、スペイン人、ドイツ人、デンマーク人、イギリス人、ベルギー人とバルセロナでの共同生活を通じて成長していくというストーリー。
私は、中国人、イタリア人、オーストラリア人、イギリス人、スペイン人、アメリカ人、コンゴ人、ドイツ人と共同生活をしたことがあり、語学学校の友人たちもみんないろんな国の人々とルームシェアをしていたので、微妙にリアルで他人事と思えない映画だと思いました。
細かい設定がリアルなのです。「大学の授業が現地語のカタルーニャ語で行われて困る」とか、「学生の住人は大家さんに嫌がられる」とか「急な家賃の値上げで出て行かせようとする」とか「冷蔵庫の区分け問題」「バルの店員と仲良くなる」「ルームメイトの彼、彼女や兄弟が訪れてくる」とか。
まさにバルセロナ生活&留学生生活あるある! ルームメイトとのいざこざや、なんとなくの孤独感、将来について悩んだり……。ほろ苦い恋の話もあるものかも。私もバルセロナで会った人と結婚して家族を持ったので。
バルセロナの街並みも楽しめる!
この映画の醍醐味は、舞台がバルセロナのフランス映画という点。舞台がスペインの首都マドリードだったら、スペインっぽいてんやわんややちょっと下品な部分がある、スペイン映画の巨匠・アルモドバル監督作品に寄りそうです。一方、フランス映画はアンニュイでお洒落な雰囲気なので、うまくバルセロナの魅力を引き出してくれています。2001年公開の映画とあり、ちょっと古い感じは否めませんが、サグラダファミリアやラバル地区、スペイン広場、グエル公園など、バルセロナの名所がいっぱい出てきます。
住んでいると気が付かないのですが、日常が映画の舞台。この映画を観たらバルセロナに行ってみたいと思うし、住んでみたいと思うかもしれません。ストーリーが組み込まれている点で、通り一辺倒の紀行番組とかよりずっと素敵です。
勇気を出して踏み出せば
バルセロナで留学生生活を送った私には、この映画は映画らしくない映画というか、まるでいち学生をビデオで追ったような、ありがちなものだと思えます。笑いあり、涙あり、そんな毎日は世界のどの街にでもありますよね。でもバルセロナで留学生活をしていた頃は、私の大事な思い出のひとつです。幼いころの夢を追っていきそうだった、映画の主人公・グザビエ君のその後は、同監督の、のちの作品でも見られます。
私もそうです。バルセロナで見つけた、「書く」という仕事を今でも続けています。人生の舞台はバルセロナから日本に変わりましたが、バルセロナについてしか書けなかった私が、今は日本についてや広告など幅広いことが書けるようになりました。あのころ発揮した勇気やチャレンジ精神はバージョンアップしているような気がします。
バルセロナじゃなくても、海外で生活してみたい、そんな人には絶対見てほしい映画です。ちなみに留学に年齢は関係ないと思います。何歳からでも、どこかの国のどこかの街でルームシェアをしてみれば、どこかしらグザビエ君みたいな気分が味わえるかもしれません。この映画では、各国の人のステレオタイプな気質などもうまく描写されている点も面白いです。