妻の「性欲」と「性機能」のリアル:40歳までは実際どう?
妻の性欲に旦那さまは気づいていない
かつて「40代から二極化する女性の性欲」という記事で、女性の性欲について分析したところ、非常に多くの方にお読みいただけました。中年以降の性について、より理解と実践を深めていただきたく、今回はそこをより深掘りしていきたいと思います。
その前に、まずは「40代までの性欲」について、あらためて考えてみましょう。
■それまでに「すてきなセックス」をしてきた女性の性欲は上昇傾向
それまでの恋愛過程で、ハッと目覚めさせてくれるような「すてきなセックス」を与えてくれるパートナーに巡り会えた人は、年齢を重ねるほど性の欲求は上昇傾向にあるという持論を唱えています。
パートナーが性的技術に熟練していなくとも、ベッド上での向上心旺盛、女性のことを大事に扱う、女性の気持ちを思いやるマインドセットがあればもちろん「すてきなセックス」です。
■相手は不在でも、情報収集&自己開発をしていれば別
「ちょっと待って。私は若い頃はモテなくて彼氏もいなかったけど、今も性欲モリモリよ!」という方も、もちろんいらっしゃいます。もし相手がいなくても、性に興味を持ち、情報収集と自己開発していた女性の性欲も、年を重ねてもしっかりあり続ける傾向にあります。
女性はセックスやマスターベーションをすればするほど「すてきなセックス」ができるカラダ(思考も含む)になるからです(注:夫婦関係性が悪い場合は除く。嫌いな夫とのセックスは拒みます)。
■年齢を重ねてもセックス回数が多い妻は、オーガズムを得ている率が高い
ちなみに、私の著書『となりの寝室』で、1,609名の主婦の性調査をしました。「夫とのセックスでオーガズムが得られますか」という設問に対する回答は以下の通り。
- 「得られる」は31.7%
- 「たまに得られる」は43.4%
- 「得られない」は16.5%
- 「オーガズムがなにかわからない」は8.4%
この結果によって、年齢を重ねてもセックス回数が多い妻は、オーガズムを伴う「すてきなセックス」をしていると私は判断しました。この状態がキープできている人たちの性欲は、更年期以降も低下しにくくなります。
妻の「性欲」と「性機能」のリアル:40歳からは実際どう?
「すてきなセックス」を経験、あるいは自己開発をし、40代まで性欲を保ってきた方でも、40代以降の性欲と性機能には変化が出てくるものです。ここからは40代以降の、妻の「性欲」と「性機能」について考えていきましょう。まずはTENGAヘルスケアの調査(「エイジングと性に関する意識調査2018」)の結果をご覧ください。
TENGAヘルスケアの調査「エイジングと性に関する意識調査2018」
■妻の「性欲」は40代後半でいったん低下、「性機能」はほぼ衰えず
女性の性機能はさほど下降線を描かないのに、性欲の実感が40代後半でいったん落ち、55-59歳で急降下し始めます。
40代後半で落ちる理由を、私は「旦那さんがED世代に突入してるから」と推測しています。夫婦間SEXを継続しようとしても男性側の性機能が衰え、自信がなくなるのであえて妻を誘わない。女性は「待ちの性」なのでセックスを強要する人は少ない。セックスレスになって欲求を忘れるか、封印する。
男性側から「妻には燃えない」「マンネリ妻とできるわけない」の「妻だけED発言」は後を絶ちませんが、一般的に40代後半男性はED傾向にあります。EDには段階があるので、そこは別途お伝えします。中折ももちろんEDです。何度も中折れすると男性は自信がなくなってきて、誘わなくなります。
■妻の「性欲」も「性機能」も、更年期に影響を受ける、けれど……?
50代女性で性欲が急降下する理由は、まさに「更年期世代の身体と心の変化」でしょう。更年期症状は個人差があります。元気がガックリなくなる人はセックスどころではありません。ただし、グラフには現れていませんが、確実に更年期以降、性の欲求が残る女性がいることを世の夫たちは忘れてはいけません。
関口由紀医師に、女性の性欲についてうかがったお話をまとめます。
ちなみにGSM(Genitourinary syndrome of menopause)とは閉経関連性器尿路症候群。膣が萎縮しておこる乾燥感、灼熱感、かゆみ、疼痛、性交痛、尿もれのことです。やはり「女性の性欲は更年期前後で二極化する」という事実があるのです。女性の50%は閉経後、GSMで性欲は低下します。しかし、女性ホルモン低下による相対的な男性ホルモンの上昇とそれに伴うドーパミンの増加、妊娠の心配をしなくてすむなどの理由で、性の意欲が上がるもしくは変わらない人が50%います。
■更年期以降も、性欲が残る女性は一定数いることを忘れないで
この事実に、男性がたは目を背けないでください。「子供が成人したからセックス卒業」「更年期だからセックスしなくていいだろう」という紋切型の決めつけや一般的意見で妻の性を放置すると、老後の夫婦関係にマイナスの影響が出てくる可能性が高くなります。
人生100年時代、性を切り離して生きることはデメリットでしかない
さりげない男女の絡みもセックスの1つ
女性にとって、セックスは愛です。挿入とオーガズムだけがセックスではありません。
- やさしく撫でられること
- キュっと抱きしめられること
- ちょっぴっり長いキスをされること
- 「好き」と言われること
- おっぱいなど性的な部位にタッチされること etc……
「ただ、抱きしめてくれるだけでいい」と泣きながら訴える妻達の言葉を、この20年間、気が遠くなる数聞いてきました。
旦那さん側にいつもアドバイスするのは「妻の変化に気づいてください」です。髪型が変わったとか、メイクやネイルが変わったはもちろん、ホルモンに振り回される女性の体調、気分の上下にフォーカスして見てください。イライラしてるのはなぜ?怒りっぽいのはなぜ?俺の誘いを拒否するのはなぜ?と。
「えっ夜の営み?うちの妻はもうしたくないはずだ」と勝手に決めてはいけません。その行為はしたくなくても、タッチはしてほしいかもしれない。キスは継続したいかもしれない。手をつないでお出かけしたいかもしれない。「最近元気ないね」と声をかけてほしいかもしれない。
男性側がEDで、セックスを遠ざけたいとしても、女性を道連れにしてはいけません。「妻が家族になり燃えなくなった」という意見もありますが、妻のせいだけでしょうか。己が妻を「おかあちゃん」にしたのではないでしょうか? 妻の性に気づくかスルーするかで夫婦関係はガラリと変わります。
性欲と性機能のGAPのグラフ(前述のグラフ1)は、深読みすればさまざまな事象が推測できます。
「性機能障害なし」の曲線が落ちないのは、トライする機会がなくなってくるからではないか。30代以降セックスレスになっている夫婦で、女性性機能の衰えをどうジャッジすればよいのか。
もし、セックスレスの女性が自己の性機能の衰えを探ってみたいなら、まずは指1本の挿入。次に男性の陰茎と同じ大きさのバイブを使用するとわかります。スムーズに入るか? 潤滑液が枯れていないか? 膣壁がやわらかくバイブを子宮口まで導くことができるか? 尿漏れしないか? そして一番大切なことは「ウッフン」というセクシースイッチが入るかです。そこに興味がいくでしょうか!?
妻側はセックスパートナーがいなければ、まずは自身で濡れるか、痛くないか、ウッフンと気持ちよくなれるかを確認しなければなりません。『ちつのトリセツ: 劣化はとまる』という本が熟年女性に支持され、ネットでは膣ケアという言葉が飛び交います。女性向けセルフプレジャーグッズ、セクシー動画も恐るべき進化を遂げています。
性機能に関する情報を取り入れる環境は出揃いました。自己の性の欲求は自然消滅したものか、あきらめたから隠れてしまったのか、夫が向き合ってくれなかったから行き場をなくしたのか。核心を今のうちに考えてみることが必要です。
人生100年時代。あと、50年、60年、夫と過ごす日常があります。性を切り離して生きることのデメリットを意識してみてください。
何度も言いますが、セックスの定義は夫婦2人で決めるもの。「肩を抱いてもらうと幸せ」であるならそれを告げましょう。「陰茎代理でセルフプレジャーグッズを使ってほしい」というオーダーも夫婦であればできるはず。
前述した「年齢が高くセックス頻度が多い女性はオーガズム達成率が高い」。つまり「すてきなセックス」が完遂できているわけです。
オーガズムの効能は自分でもわかると思いますが、不安を軽減させ、免疫力が高まるなど医学的にメリットが発表されていますので、そちらをお読みください。何より、オキシトシン、βエンドルフィン、よく言う幸せホルモンがたくさん出て相手のことをより好きになるのです。この効果が100年時代の夫婦には必要だと考えます。
【出典】
TENGAヘルスケア:「エイジングと性に関する意識調査2018」
【監修】
関口由紀 泌尿器科
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