最近増えてきた年金のニュース。どこに注目すればいい?

老後の収入の中心となる年金ですが、5年に1度その制度が見直されているのをご存知でしょうか。今年がその年であり、見直し内容に関してのニュースが新聞やネットでよく取り上げられています。今回は最近のニュースからその背景にあるものを考えてみたいと思います。

年金のニュース、どこがポイントになる?

年金のニュース、どこがポイントになる?

 

【厚生年金加入、70歳以上も 厚労省が納付義務を検討】

2019年4月15日付の日経新聞が報じたタイトルです。年金制度は大きく基礎年金(国民年金)と厚生年金に分けられますが、厚生年金は企業に雇われている会社員が加入している年金です。現在はリタイア後の再雇用の場合でも月額賃金が8万8000円以上なら70歳までは保険料の納付が義務となっています。これを70歳以降も負担してもらうことを検討しているのです。

実は厚生年金への加入拡大策は今回初めて議論されるわけではありません。2016年10月には短時間労働者(いわゆるパート)でも501人以上の企業に勤め一定以上の条件(注1)に当てはまる場合には加入が義務付けられました。

翌2017年4月には501人未満の企業に勤めていても労使が合意すれば加入ができるよう、さらに適応拡大が行われています。これによりパートの方でも将来の厚生年金が受け取れるようになりました。今回の改正で70歳以上の方の加入が義務づけられた場合、その方たちの将来受け取る年金額は増えますが保険料負担で目先の手取りは減ることが予想されます。

*注1:「週20時間以上」「1年以上働く見込み」「月額賃金8万8000円以上」「学生以外」のすべてを満たす場合
 

年金は働く世代の保険料で維持されている

一連の厚生年金の加入拡大策の背景にある理由の一つとして年金財源の確保があります。日本の年金制度の基本は「賦課方式」がとられており、働く世代が支払っている保険料が現在の年金受給者への支払いに充てられています。少子高齢化が進むと年金受給者は増える一方で保険料の担い手が少なくなることが考えられますので、パートや働く高齢者にも適応を拡大し加入者を増やすことで保険料収入を増やす必要があるのです。
 

働くシニア層の増加も議論を後押ししている?

働くシニア世代の増加が70歳以上の加入の議論を後押ししている側面もあります。図1は労働力人口の推移をみたグラフです。これによると高齢者の就業率は65~69歳は45.3%、70~74歳も27.3%、75歳以上では9%であり、65歳~74歳の就業率が年々増加していることがわかります。
 
労働力人口比率の推移(出典:内閣府HP 平成30年版高齢社会白書)

労働力人口比率の推移(出典:内閣府HP 平成30年版高齢社会白書)



また内閣府による現在働いている方の意識調査によると「働けるうちはいつまでも仕事をしたい」と考える割合が42%に上ることがわかるかと思います。
 
高齢者の就労意識調査(出典:内閣府HP 平成30年版高齢社会白書)

高齢者の就労意識調査(出典:内閣府HP 平成30年版高齢社会白書)

 

高齢者の就労意欲を高めようとする制度改正も?

【在職老齢年金の廃止検討 政府・与党、高齢者の就労促す 高所得者優遇懸念】


2019年4月19日の毎日新聞の記事のタイトルです。「在職老齢年金」とは一定以上の収入のある高齢者の厚生年金支給額を減らす制度のことであり、具体的には60歳以上で企業に勤めている人について、60~64歳では賃金(ボーナス含む)と年金の合計額が月28万円、65歳以上は月47万円を超えると年金支給額が減らされ賃金が多くなれば減額幅も大きくなるという制度です。この制度が高齢者の働く意欲を削いでいるとの指摘が今までもあり廃止することで就労意欲を高めようというのが狙いです。その一方で高齢者一律に制度廃止により支給が増えることになり、一部の高所得者を優遇することになるのではないかとの懸念もあります。また制度廃止による財源負担はどうするのかも今後の議論となりそうです。
 

【70歳雇用へ企業に努力義務】


年金関連の記事ではないですが、2019年5月16日の日経新聞の記事タイトルです。現在の法律では働いている方が希望すれば65歳まで継続して雇い入れる義務が企業にはあります。具体的には「定年延長」「定年廃止」「契約社員や嘱託などでの再雇用」いずれかの措置が取られていますが、これに加え「他企業への再就職支援」「フリーランスで働くための資金提供」「企業支援」「NPO活動への資金提供」などの選択肢を準備することで、働く意欲のある高齢者を後押しするよう企業への70歳までの努力義務を促していくようです。
 

キーワードは人生100年時代

安部内閣は政策会議として「人生100年構想会議」を定期的に行っています。その中で具体的なテーマの一つとして「企業の人材採用の多元化、多様な形の高齢者雇用(注2)」が掲げられています。紹介したような新聞記事からは、人生100年構想に沿った高齢者の活用、高齢者に活躍してもらう環境づくりが根本にあり、働いても損をしないような年金制度に変えていこうという意図が読み取れます。一つだけではその意図が分からない新聞やニュースも、時系列的に読んでいくと背景にあるものが見えてきますし、これからの報道記事もそのような観点で読んでいけば、より理解が深まるのではないでしょうか。

*注2:首相官邸HP、人生100年構想会議、第一回議事次第配布資料より抜粋
 
執筆・監修/井出やすひろ(CFP・一級FP技能士・MR)

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