次世代住宅ポイント制度は増税後の住宅取得支援策
2019年10月に予定される消費税10%への引き上げで住宅購入を控える人が増えることを懸念して、質の良い住宅を購入またはリフォームをした人に、様々な商品と交換できるポイントを発行する「次世代住宅ポイント制度」が創設されました。
これまでも同様のポイント制度がありましたが、主に省エネ性に優れた住宅が対象だったのに対し、今回は「環境」「安心・安全」「健康長寿・高齢者対応」「子育て支援・働き方改革」に優れた住宅に対してポイントが発行されます。
1戸当たり新築住宅は最大35万円相当、リフォームは最大30万円相当(※)のポイントをもらえます。今回は注文住宅の新築、新築分譲住宅の購入に関わる「次世代住宅ポイント制度」について解説します。
(※)若者世帯及び子育て世帯が行う場合はポイントの上限が最大60万円となります。詳しくは【リフォーム編】で解説します。
<目次>
- 次世代住宅ポイントがもらえる「新築住宅」の要件
- 次世代住宅ポイントの発行対象期間
- 次世代住宅ポイントの発行ポイント数
- 次世代住宅ポイントの交換対象商品等
- 次世代住宅ポイント発行申請開始と期限
- 次世代住宅ポイントの注意事項:発行は最低2万ポイントから
- 新築購入時にはポイント対象となる性能があるかをチェック
- 次世代住宅ポイント(新築)を利用する時の注意点
次世代住宅ポイントがもらえる「新築住宅」の要件
次世代住宅ポイント付与の対象となるのは、注文住宅の新築、新築分譲住宅の購入(完成済み住宅の購入も含む、戸建住宅・マンション含む)で、所有者が自ら住むことを目的に新たに発注する住宅です。借家は対象外になります。もらえるポイント数は、「省エネ」「長寿」「耐震」「バリアフリー」のいずれかの性能に優れる住宅の場合は30万ポイント、さらにより優れた性能を持つ住宅にはプラス5万ポイント、また、家事の負担を軽減する設備の導入や、耐震性のない住宅の建て替えには、オプションポイントが付加されます。発行ポイント数はそれらの合計となり、上限は1戸当たり35万ポイントになります。詳しくは「3.発行ポイント数」を参照してください。
次世代住宅ポイントの発行対象期間
新築住宅のタイプによってポイント制度の対象期間が異なります。消費税率10%が適用されるものが対象です。■注文住宅の新築
2019年4月1日~2020年3月31日の間に請負契約・着工(※)し、2019年10月1日以降に引渡しを受けたもの
■新築分譲住宅の購入(マンションも含む)
2018年12月21日~2020年3月31日の間に請負契約・着工し、かつ売買契約を締結し、2019年10月1日以降に引渡を受けたもの
■新築分譲住宅の購入(完成済み購入タイプ/マンションも含む)
2018年12月20日までに完成済みの新築住宅であり、2018年12月21日以降に完成から1年以内に売買契約を締結し、2019年10月1日以降に引渡しを受けたもの
※税率引き上げ後の反動減を抑制する観点から、2018年12月21日~2019年3月に請負契約を締結するものであっても、着工が2019年10月~2020年3月となるものは特例的に対象とする
【用語解説】
着工とは…根切工事または基礎杭打ち工事の着手日
引渡しとは…一般的には鍵の引渡日
次世代住宅ポイントの発行ポイント数
下記(A)+(B)+(C)の合計1戸当たりの上限は35万ポイントです
(A)標準ポイント
以下の(1)~(4)のいずれかに該当する場合は、1戸当たり30万ポイント
(1) エコ住宅…耐熱等級4または一次省エネ等級4以上
(2) 長寿住宅…劣化対策等級3かつ維持管理対策等級2以上
(3) 耐震住宅…耐震等級2以上または免震建築物
(4) バリアフリー住宅…高齢者等配慮対策等級3以上
(B)優良ポイント
上記(A)の要件に加え、下記に該当する場合は、1戸当たり5万ポイントが加算されます。
(1) 認定長期優良住宅
(2) 低炭素認定住宅
(3) 性能向上計画認定住宅
(4) ZEH
(C)オプションポイント
家事の負担を軽減する設備の導入や、耐震性のない住宅の建て替えには、オプションポイントが付加されます。
(1)家事の負担を軽減する設備
・ビルトイン食洗器…1.8万ポイント
・掃除しやすいレンジフード…0.9万ポイント
・ビルトイン自動調理対応コンロ…1.2万ポイント
・掃除しやすいトイレ…1.8万ポイント
・浴室乾燥機…1.8万ポイント
・宅配ボックス※…1万ポイント
※各住戸専用のもので、他の住戸用のボックスと一体となっていないものに限る
(2)耐震性のない住宅を除却し、自ら居住する住宅として住宅を建築または購入する場合。2018年12月21日以降に除却したものに限る…15万ポイント
【用語解説1】
耐震性のない住宅とは、旧耐震基準で建てられた住宅とし、以下の書面で確認します。
・確認申請の日付が昭和56年5月31日以前の建築確認済証など
・表題部、原因及びその日付が昭和56年5月31日以前の新築である登記事項証明書
・建築士が耐震性を有しないことを確認した本制度独自の証明書
【用語解説2】
・除却対象は住宅に限り、付属する離れ、小屋、納屋等の除却は対象外
・除却時期は新築住宅の建築工事と前後しても可
・除却は原則不動産登記の閉鎖事項証明書(減失登記の原因日)で確認
・除却する住宅が不動産登記の表示義務付け前に建築されたものについては、その解体工事に伴う産業廃棄物管理票(マニフェスト)B2票により確認
下記表のうち、除却する住宅に対応した2種の追加書類が必要。
次世代住宅ポイントの交換対象商品等
ポイントの交換商品は「省エネ・環境配慮」「防災」「健康」「家事負担軽減」「子育て」「地域振興」に関する商品となります。商品券や追加工事費への充当はありません。交換可能な商品は2019年6月3日に公開される予定です。次世代住宅ポイント発行申請開始と期限
2019年6月3日(開始予定)予算に達した時点でポイント発行申請を締め切る予定。最終でも2020年3月31日。
次世代住宅ポイントの注意事項:発行は最低2万ポイントから
オプションポイントの「家事の負担を軽減する設備の導入」のみを行う場合、1申請あたり2万ポイント未満の場合はポイントの発行申請ができないため注意が必要です。これらの設備は、設置台数に限らず設置を行った設備の種類に応じたポイント数の合計を発行となります。例1:掃除しやすいトイレを2台設置 →18,000ポイント→2万ポイント以下なので申請できない
例2:掃除しやすいトイレと掃除しやすいレンジフードを設置 →
18,000ポイント+9,000ポイント=27,000ポイント→2万ポイント以上なので申請可能
新築購入時にはポイント対象となる性能があるかをチェック
消費税増税後に新築分譲住宅(戸建て・マンション)を購入予定の方は、ポイントをもらえる要件にあう性能を持つ住宅かどうかをチェックしましょう。例えば免震構造のマンションの購入であれば30万ポイントがもらえ、さらに認定長期優良住宅であれば35万ポイントがもらえます。
注文住宅を建てる場合は、どのような性能を持たせるかによって設計内容や工事費が異なるため、設計に着手する時から設計士や工務店に相談してください。
次世代住宅ポイント(新築)を利用する時の注意点
残念ながら家そのものがポイントがもらえる性能ではなかったとしても「家事の負担を軽減してくれる設備」の導入ならしやすいのではないでしょうか。ポイントをもらえる設備はいずれも家事負担を軽減してくれるものばかりです。もし使ってみたいと思っていたものがあったら、新築時にこれらの設備の導入を検討してみてはいかがでしょうか。新築住宅の購入時に「家事の負担を軽減する設備」の導入だけでポイントを得るために気を付ける点は、導入する設備のポイントが合算して2万ポイント以上になることと、予算に達した時点で締め切られてしまうため、申請期限を次世代住宅ポイントのホームページで常にチェックしておくことです。
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【参考】
次世代住宅ポイント制度(次世代住宅ポイント事務局)
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