貯金で挫折する人の思考回路
貯金できない人は、「モラル・ライセンシング」(1)という心理効果に囚われがちです。モラル・ライセンシングとは、「良いことをした後には、悪いことをしても構わない」と考えてしまう心理効果のことです。貯金できない人は、ちょっと節約できたり、貯金できたりすると「良いことをしたなぁ。こんだけ頑張ったのだから自分へのご褒美に、少しくらい“贅沢”してもよいかな……」と考えてしまいます。
そして、モラル・ライセンシングの結果、せっかく節約や貯金をしても、結果的に贅沢が誘発されてしまい、努力が水の泡になってしまうのです。
モラル・ライセンシングに囚われないためには……
スタンフォード大学の心理学者であるケリー・マクゴニガル氏は、著書(2)の中で、モラル・ライセンシングに囚われないためには、2つの対策が有効だと述べています。1つ目の対策は、「お金を貯める(節約する)動機を明らかにする」ことです。たとえば、筆者の場合は「家族を養うため」「資産運用をするため」「教育費や交際費など、必要なところにお金を回すため」といった理由で、お金を貯めて(節約して)います。
「なんとなく不安だからお金を貯めよう」という程度の漠然としたモチベーションは、長続きしません。なぜお金を貯めるべきなのか理由を明確にし、成果を守り抜きましょう。
2つ目の対策は、「お金を貯める(節約する)行為そのものを習慣化してしまう」ことです。たとえば、筆者の場合は「自動引き落としで貯蓄用のお金を引き出してしまう」「貯金目標を家族で共有する」といったように、貯金につながる習慣を奨励しています。
それと同時に、「浪費につながる悪習慣(ネットサーフィンや飲酒など)は慎む」など、貯金を妨げる悪習慣を断っています。特にAmazonなど、ネットショッピングのクレジットカードを使ったサービスでは、僕らの財布のひもが緩みがちです。貯金を促し、浪費につながる悪習慣を慎むことで、どんどんお金を貯めましょう。
まとめ
「たくさん貯金したし、自分へのご褒美を……」とか、「節約できたから、ちょっとくらい贅沢を……」とか、こういった誘惑に駆られたら要注意。モラル・ライセンシングの誘惑に負けないためにも、お金を貯める動機を明らかにし、貯蓄の習慣化を徹底しましょう。貯金は長期戦です。たとえ、いっとき貯金が上手くいっても、詰めが甘いとモラル・ライセンシングによってお金が流れ出ていってしまいます。ひどい場合は、老後破産につながりかねませんので、最後まで気を抜かないでくださいね。
【参考文献】
- 調査:Anna C. Merritt, Daniel A. Effron, and Benoit Monin, 2010, "Moral self-licensing: When being good frees us to be bad", Social and Personality Psychology Compass, 4(5), pp. 344-357
- 書籍:ケリー・マクゴニガル, 2015, 『スタンフォードの自分を変える教室(大和書房)』