記者会見でがっちり握手するボーダフォンモロー社長、ソフトバンク孫社長、そしてヤフー井上社長
3月17日、ソフトバンクグループによるボーダフォンの買収が明らかになりました。買収額は1兆7500億円という、これまでの日本経済の歴史を振り返ってみても前例のない巨額の取引が成立しました。
この買収劇によって、ボーダフォンユーザーはどうなってしまうのでしょうか? また携帯電話業界に与える影響は? その真相に迫ります。


1兆7500億円で「時間を買った」ソフトバンク


 そもそもソフトバンクグループは、2007年春に1.7GHz帯域という周波数を総務省から割り当てられて、携帯電話業界に新規参入する予定でした。この新規参入組にはほかに、ADSL回線の卸売り業を行っている「イー・アクセス」、またデータ通信に特化したサービスを計画する「アイピーモバイル」が名乗りを上げていました。いずれも今年11月から開始される、携帯電話会社を変更しても電話番号が変わらない「番号ポータビリティ制度」をビジネスチャンスとしてとらえ、NTTドコモやKDDIといった既存の携帯電話会社からユーザーを奪おうという計画を立てていました。

昨年11月、総務省から携帯電話事業の免許を交付されたソフトバンクグループでしたが、準備を進めるうちにさまざまな壁にぶつかります。
まずひとつが「エリア」の問題です。携帯電話事業を行うには、全国に2万カ所程度の「基地局」が必要になります。さらにユーザーが快適に通話をしようと思うと、地下街や地下鉄のホーム、さらにはトンネルといった電波が届きにくい部分にもアンテナを新設する必要があります。かつて「NTTドコモのFOMAはつながりにくい」という不満がユーザーの間で聞かれましたが、これもサービスが始まったばかりでエリア整備が追いついていなかったという背景があります。
 ソフトバンクがいまから新たに基地局を建設し、全国どこでも快適に使えるようにするには、早くて3年、現実的には5年近い時間が必要になると思われます。また、その初期投資は数千億円にも上ると予想されます。これだけのコストをかけても、完成が5年後となると、もはや携帯電話業界でのユーザー獲得競争は終わっている可能性もあるのです。
孫社長は、このコストと時間をソロバン勘定した際に、「買収した方が手っ取り早い」と思いついたのではないでしょうか。


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