消費支出から見る最新家計調査!
ベースアップ、ボーナス増額のニュースがある一方、社会保障関連費の負担増もあり、なかなか景気回復の実感をもつことができません。じわじわとモノの値段が上がりはじめ、一般世帯の家計収支は厳しい状況が続いていると言えるでしょう。さらに追い打ちをかけるように、2019年10月には消費増税が予定されています。家計の引き締めは、一層進みそうです。
2019年5月に発表された総務省統計局の『家計調査報告(貯蓄・負債編)』では、平均貯蓄額が前年から60万円減少と、ベースアップ、ボーナス増額などのニュースとは裏腹に、貯蓄が増えない、増やせない世帯が多かったという結果になっています。
みんなの平均貯蓄額は?1752万円【2019年5月発表・最新家計調査】
一方、支出については、どういう傾向があったのか、見ていきましょう。
実質的な消費額は5年連続で減少
同調査の二人以上世帯のデータでは、1カ月の平均消費支出は28万7315円で、前年から約4000円増加していますが、物価変動などを考慮した実質増減率は、0.4%マイナス、という結果となっています。2007年と比較すると、1万円ほど消費支出が縮小しています。東日本大震災が発生した2011年は大幅に減少し、その後4年連続で消費支出が増加。しかし2015年から再び、消費支出が縮小する傾向にあります。
アベノミクスがスタートしたのが2012年12月。ここから景気回復、消費拡大に向かうかと思われましたが、5%から8%への消費増税があり、また年金不安の解消もなければ、簡単に消費拡大とはならないのでしょう。2014年以降、5年連続で実質マイナスとなっています。
支出の内訳10項目のうち5項目で実質減少に
二人以上世帯の消費支出の内訳では、10項目のうち5項目が実質減少。特に教養娯楽が2.4%のマイナスとなる一方、教育費が5.4%のプラス、次いで、交通・通信が3.8%、家具・家事用品が2.8%のプラスとなっています。ただ、実際の額としては、その他の消費支出を除き、すべての項目が前年から増加しており、実感としては、収入が増えて支出が増えたというよりは、少しずつ、家計負担は増えている、といったものではないでしょうか。
消費支出を年代別で見ると「30代」が大幅に増加
年代別で前年と比較してみると、全体では約4200円の増加ですが、20代が約1万7500円の減少、30代が約1万8800円の増加と、明暗が分かれました。ただ、この2つの年代は、消費支出額自体が、平均よりも低く、特に20代は21万円程度と、平均とは7万円以上の差がありますから、より厳しい家計状況であったと言えるかもしれません。年収が多いほど、消費支出は増加する
当たり前といえば、当たり前ですが、年収別で消費支出をみると、年収が多いほど消費支出は増加します。表面的には、そのとおりなのですが、基本的な生活にかかるコストは、年収が低くても、それなりの額が必要です。年収が最も低い第1階級の消費支出を1年で換算すると約230万円。この階層の平均年収は252万円ですから、残りは22万円。これでは貯蓄に回すお金はなく、生活するのでギリギリの状態と言えるでしょう。かたや、最も年収が高い第5階級の年間消費額は約500万円。平均年収から差し引いても、600万円も貯蓄に回せる可能性があるのです。
年収が低い層には、若年層が多く含まれていますから、今後の年収アップなどで、家計収支は改善されるかもしれませんが、現状では、給料のやりくりで精一杯、というのが実情でしょう。
消費増税前に家計の支出見直しを!
内閣府が5月に発表した、2019年1~3月期の国内総生産(GDP)は、実質前期比0.5%のプラスとなりました。2018年は日本各地で自然災害に見舞われ、個人消費が伸び悩んだとの見方がありますが、この先、消費増税が予定されており、景気回復が停滞する可能性が高まり、消費もさらに縮小傾向に向かうことも考えられます。一般の家庭においては、4月の昇給、ベースアップ、夏のボーナスなどで足元の家計は余裕があるように見えても、あらためて、家計収支を把握し、見直すべきところは見直す必要があるでしょう。くれぐれも、消費増税前に、不要不急のものを駆け込みで買いすぎないようにすることは、最低限の家計防衛になるでしょう。
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