それもあり、「結局、株式投資では運が全てなのでは?」みたいな話が盛り上がることがあります。
しかし、この説に対して筆者は否定的です。たしかに投資に運はつきものですが、「運はすべてではない」というのが僕の見解です。計画的に行えば、運が悪くてもお金を増やしている人はゴマンといるからです。
このあたりの話は、「投資とギャンブルの違いは何か?」という記事で詳しく説明しています。気になる方は、読んでください。
お金持ちは幸運に頼らない!
筆者が「投資=ギャンブル」という考えに否定的になったのは、これまでの研究で「お金持ちは幸運に頼らない!」ことが実証されているからです。お金持ちになる人は、「運に頼らない方法で資産を運用している」ようです。
株式投資などの世界では、一部の投資家は「ギャンブル目的」で株取引をしています。たとえば、「応援している会社があるから、その会社の株を買う」とか、「好きな商品を出している会社があるから、その会社の株を買う」といった具合です。
残念ながら、これは投資とは言えません。むしろ、「好きなサッカーチームがあるから、そのチームのスポーツくじを買います」というギャンブルに似ています。
本物の投資は、「適切なリスクを取って、その見返りとして利益を受け取ること」です。この点を熟知し、賢い投資家たちは運に頼らない方法で資産を運用しています。
運に頼らない投資法の最たる例としては、「分散投資」が挙げられます。
マネー誌のアンケート調査を研究した論文(1)によると、「分散投資をしている人は、運用成績が大体同じ結果になる」ことが分かりました。つまり、誰もが同じ運用成績を出しやすく、運に左右されにくいということです。
さらに、この調査によれば、「分散投資をしている人ほど、資産形成に成功しやすい」ことも分かりました。運に頼らない人の方が、運に頼る人よりもお金持ちになりやすいということですね。
やや話は逸れますが、金融心理学者のブラッド・クロンツ氏が2015年に公開した論文(2)によると、「失敗を周りのせいにしない」ということも分かっています。
たとえば、不運が原因でお金を失ったとき、普通の人なら「運が悪かった」と考えて、それでおしまいです。しかし、お金持ちの場合は、「不運に対して準備していなかった自分が悪かった」と考えるのです。
まとめ
これまでの話をまとめると、「お金持ちは幸運に頼らない!」「お金持ちは失敗を不運のせいにしない!」ということです。この話をひっくり返すと、「貧乏になる人ほど幸運に頼る」「貧乏になる人は失敗を不運のせいにする」と言えそうです。今まで成功を「幸運」に頼り、失敗を「不運」のせいにしてきた人は、考えを改めた方がよいかもしれません。かくいう筆者も、衝動に駆られるときがあるので、注意しなきゃいけませんな…。
●参考文献
- 論文:川西諭, 田村輝之, 功刀祐之, 2012, "長期分散投資vs短期集中投資 日経マネー誌アンケートから見えるネット投資家行動の実態", 行動経済学, 5, pp. 152-156
- 論文:Bradley T. Klontz, Paul Sullivan, Martin C. Seay, and Anthogy Canale, 2015, "The Wealthy: A Financial Psychological Profile", Consulting Psychology Journal: Practive and Research, 67(2), pp. 127-143