お金の悩みを解決!マネープランクリニック/マイホーム購入・住宅ローンで悩むファミリー世帯

40歳貯金400万。2500万円の住宅ローンを組みたいが大丈夫?(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、2500万円の住宅ローンを組む予定の40歳の女性会社員。ただし、購入後は住宅コストが今よりアップし、貯蓄ペースが落ちることが不安とのこと。今後の教育資金や老後資金、住宅ローン減税等について、ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 教育資金の準備は積立定期預金で十分

数か月後に住宅ローンが始まると仮定して、その後のキャッシュフローを試算してみましょう。
 
まず、住宅ローンですが、借入額は2500万円。金利1.3%で35年返済、毎月の返済額7万4000円となります。購入時、諸費用100万円を貯蓄から出すとします。貯蓄は今より50万円程度上乗せできますから、手元に残る資金は350万円となります。
 
ローン開始後の家計ですが、固定資産税を月割で1万円とすると、住宅コストは8万3000円。今より3万円アップします。また、今の家賃は水道料金込みとのことですから、新たに月5000円、水道料金を家計に加算。現在の貯蓄ペースが10万円5000円なので、月7万円に貯蓄が下がります。ボーナスから引き続き70万円貯蓄できるとすれば、年間の貯蓄額は154万円。どーなっつさんが60歳となる20年間で3080万円(住宅ローン減税による軽減分は考慮せず)、住宅購入時の貯蓄350万円と合算して、3430万円となります。
 
一方、今後20年間で大きな支出も予定されています。教育資金は、高校まで公立とすると、用意すべきは大学資金。その貯め方は、利用している金融機関の定期預金で十分。大事なのは毎月、必要な額を積み立てること。今からあえて学資保険等に加入する必要はありません。大学にかかる費用は、私立文系は4年間で390万円、私立理系は520万円。進路で金額に開きがありますが、高めにかかると想定すれば、残る資金は2900万円程度ということになります。
 
また、マンションであれば事前に管理費や修繕積立金で用意する住宅の補修費用を戸建ての場合は自身で備えなくてはなりません。外壁や屋根、水回りなど、補修内容によってかかる費用に幅は出ますが、20年間で200万~300万円は見ておく必要があるでしょう。さらにクルマの買い替え費用も2台保有されていますから、その費用が400万~ 500万円とすれば、60歳の時点で手元に残る資金は1900万~2100万円。これに夫婦の退職金と確定拠出年金を加算した額が老後資金となります。
 
ただし、お子さんの大学が県外、または自宅から通える範囲でないなら、そのための生活費の負担、つまり仕送りが別途発生します。ちなみに平均は月8万~9万円ですから、卒業までに400万円ほど。そういう可能性も意識はしておくべきでしょう。
 

アドバイス2 老後のリスクに対処するため今から家計の見直しを

この老後資金については、退職金の金額など不確定要素が多いため、足りるとは断定できません。とくに不安要素となるのが住宅ローンです。完済はご主人73歳のとき。定年後13年も支払いが続きます。どーなっつさんの定年からは15年。ご自身もそれを心配されていて、繰上返済で60歳完済を目指したいとのこと。ぜひ実現してほしいと思います。
 
仮に60歳完済となれば、それ以降の生活費は現状から類推して、おそらく月20万円前後ではないでしょうか。であれば、おそらく年金だけで生活費がカバーできるか、不足しても月2万~3万円と考えられます。65歳から90歳までの25年間でトータルの不足額は最大で900万円。これに予備費として1000万円を加えて1900万円。退職金を繰上返済に全額使ったとしても(確定拠出年金はお子さんの仕送りに充てると想定)、60~65歳の5年間、手持ち資金を取り崩さなければ、準備できる金額ではあります。
 
となると、大事になるのが定年となる60歳からの5年間の家計。夫婦とも働いて収入を得ることが必須条件となることは言うまでもありません。世帯収入として月20万円(手取り額)、あるいはそれに近い収入を得ることを目標にしてください。
 
ポイントとなる繰上返済ですが、60歳の定年時に退職金等を使って完済するとします。この時点でのローン残高が1200万円ほど。それでも退職金だけでほぼ完済できるなら、何も問題はありません。
 
ただし、退職金がどれだけ支給されるかは、不透明です。期待する半分も出なければ、老後のマネープランを大きく修正しないといけません。そういったリスクに対処するには、今から貯蓄ペースを上げるのが有効です。住宅購入後も貯蓄額が今と同じ月10万円できれば、定年時に700万円が貯蓄に新たに上乗せされます。月3万円近く支出を落とすのはそう簡単ではありませんが、再度家計を見直し、そのための工夫はしてみてください。
 

アドバイス3 iDeCoは10年後からでも遅くはない

最後に、相談にあります住宅ローン減税とご主人のiDeCoについて。両者の節税メリットには大きな違いがあります。住宅ローン控除は「税額控除」ですから対象となる額(年末のローン残高の1%)がそのまま税額から差し引かれます。対して、iDeCoは「所得控除」になります。その年の掛金の全額は、税額ではなく、それを算出する課税所得から差し引かれます。
 
この両者ですが、併用は可能です。具体的には、まずiDeCoの控除が優先され、課税所得がその分減額されます。そして改めて所得税額が計算され、その税額に対して住宅ローンの税額控除分が差し引かれるということになります。
 
では、どのように利用すれば節税メリットが大きいかと言えば、iDeCoによって所得控除がされた上で、住宅ローンによる減税分がフルに所得税等に適用された場合(※)となります。逆に、住宅ローン減税だけでも、所得税等が全額控除されるようであれば、iDeCoによる節税効果は結果的に得られなかったことになります。

また、住宅ローン減税は年々控除額が小さくなりますから、途中から併用の効果が得られるようになるといったケースも考えられます。
 
ただし、マネープラン的にiDeCoの開始時期はやや早い気がします。ご存知だと思いますが、iDeCoで拠出した資金の引き出しは原則60歳以降。教育資金や繰上返済の資金をいち早く貯めたい時期ですから、今はそちらを優先させていいのではないでしょうか。
 
また、「住宅ローン控除が切れる11年目に一度、繰上返済をする」とのことですが、必ずしも11年目に合わせる必要はありません。控除期間に繰上返済をし、それによって軽減される支払利息の方が、住宅ローンの減税額より大きくなるケースは少なくありません。とくに変動より金利が高めな全期間固定や、5年固定といった固定期間選択型のローンを組んでいる場合は、その傾向が強いと言えます。繰上返済を行う際、金融機関に試算してもらうことをおすすめします。
 
それと、保険でひとこと。無駄なく加入はされていますが、どーなっつさんも世帯収入の3分の1を担っています。その点で死亡保障がやや不足気味と感じます。保険期間10年、死亡保障1000万円の定期保険で、保険料は月額2000円もいきません。検討してみてください。ご主人のがん保険は、どうしてもがんが心配なら加入してもいいでしょう。
 
(※)所得税で控除しきれなかった分は、一部、住民税の軽減も可能
 

相談者「どーなっつ」さんより寄せられた感想

アドバイス、ありがとうございました。とても参考になりました。家の購入と教育資金について漠然とした不安でしたが、数字を元にアドバイスいただき、どうしていけばよいか分かりました。また、私自身の死亡保障についてはあまり頭になかったので、ハッとしました。早速加入しようと思います。本当にありがとうございました。


教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など


取材・文/清水京武

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