「サレ妻」とは、「夫に浮気・不倫された妻」のこと
サレ妻たちのホンネから見えるものは?
サレ妻という言葉をご存知でしょうか? 何かを夫に「サレた」妻を指す言葉ですが、一体、何をされたと思いますか? 答えは「浮気・不倫」。不倫をされた妻はどんな思いを夫や不倫相手に抱くのか、その複雑な思いを経験者の声から探ってみましょう。
不倫相手への気持ちとは
当然ですが、最も「悪者」になりやすいのは不倫相手。たとえ自分の夫が一方的に口説いて実現したデートだったとしても、です。「うちの夫が、あの女を飲みに誘わざるを得ないような、弱みを握られていたのだと思います。そんなずるい女に出会ってしまったウチの夫は被害者なんです」(50代の妻)
「仕事上の相談があるとか言って、個人的に会う機会を仕掛けられ、素直な夫はその罠にはまってしまったに違いありません。夫の優しさをあの女が勘違いしただけでしょう」(20代の妻)
「本来は課の飲み会であったのに、欠席者が多く、結果として1対1になってしまった時点で、無理やりでも理由をつけて、飲み会自体をキャンセルさせるのが既婚者に対する正しい対応。そのまま食事に行くなんて、非常識です。きっと、あの女が周囲の人に欠席するように頼みこんだに違いありません」(40代の妻)
こんなふうに、かなり強引なシチュエーションを妄想してまで、「悪いのはあの女」と考える人が一般的です。
その背後にあるのは、女性としてのプライドと結婚生活への執着心。
「私より不細工でデブなくせに、ありえない」(20代の妻)
「派遣社員の分際で図々しい」(30代の妻)
「夫とまだ会って4カ月しかたっていないのに、わかったような口をきいて、何様なの?」(40代の妻)
「40代で3人も子どもがいるのに、まだ男が欲しいのか」(30代の妻)
こんなふうに、相手の容姿や年齢など、自分よりも劣った点を必死に見つけて、そこをこき下ろす発言が見られます。不倫相手を「自分よりも劣った女」と格付けることで、自分がその女に負けたのではない、また、夫は騙されているに違いないと、自分のプライドを守っているのです。
相手への憎しみに心が燃え上がる
さらには「ウチの夫は被害者」「夫は騙されているだけ」「夫の本当の気持ちは(妻である)私から離れていない」と思うことで、「まだ夫とやりなおせる/やりなおしたい」「今の生活や妻としての立場を失いたくない」という、結婚生活への執着心が現れている点も見逃せません。
夫を悪者にした時点、あるいは夫が被害者ではなく自らの意思で行動をしたと認めた時点で、自分が相手に負けた、そして今の結婚生活を失う可能性があるとわかっているからこそ、その事実を認めず、相手の女性の非を突く発言に終始するのだとみることができます。
夫への気持ちとは
一筋縄ではいかない夫への想い
120%悪者にすれば気がすむ不倫相手と違い、夫に対する気持ちはもっと複雑で微妙です。
まずは夫の浮気に呆れたり、怒ったり、傷ついたり、失望したり、非難したりといった発言は当然出てきます。
「毎年、課に新人の女の子が入ってくるたびにちょっかい出すくせ、ホントに何とかならないのかな」(40代の妻)
「よりによって私の友人と不倫をするなんて、本当にあり得ない。人として最低」(20代の妻)
「いい年して、キャバクラのお姉ちゃんに本気になってるなんて、呆れてものが言えない」(50代の妻)
「自分にも相手にも家族や子供がいて、不倫によってどれだけの人に迷惑をかけ、傷つけてしまうのか、そんなこともわからないんだろうか」(40代の妻)
不倫には、相手はもちろん、夫にも十分な責任と罪があることをしっかり理解しており、だからこそ悩んでいる妻の姿がそこにあります。
そしてそのような裏切りに対して、今後、どのように関係性を持っていくのかを悩む発言もたくさんあります。 「結婚した時は『浮気したら離婚するからね』って言ってたけど、そんなに簡単にできるわけないし」(20代の妻)
「許せない、と思う自分と許したいと思う自分。許さなきゃ、と思う自分と、許せるだろうかと思う自分が心の中で戦っています」(50代の妻)
「正直、もう信頼できないって、心の中では夫のことを切り捨ててしまっています」(40代の妻)
など、夫婦関係への対応も「復旧したい」「迷っている」「諦めてしまった」のように数パターンに分かれる傾向があります。
不倫相手のように、罵倒し倒すわけにはいかないけれど、何もなかったようにスルーすることはできない。夫への非難の強弱は、そのまま結婚生活を維持する意思の強弱につながっているようです。
自分自身への気持ちとは
いつしかこぼれ落ちていた幸せのピース
最後に、サレ妻になってしまった自分自身への気持ちはどのようなものなのでしょうか? まずは、自分は被害者であるという気持ちを持つ方が多いです。
「子育ても仕事も頑張ってきたのに、私が1人で、必死になって子供たちをお風呂に入れたりしている時に、あいつは女とホテルで楽しんでたなんて、許せない」(30代の妻)
「20年間、夫には1つも嘘をついたことはなかったのに、あの人は嘘だらけの生活を送っていた。それもショックですし、それに全く気付かずにいた自分にもショックです」(50代妻)。
そして、最初の衝撃が去ると、浮気に至った原因を冷静に振り返り、自分の責任を分析できる人もいます。
「もしかしたら、お互いが忙しいことを理由に『何も言わなくてもわかりあえる』って、勝手に思い込んでいたのが一番の原因で、彼があの女に会う前に、すでに私たちの夫婦関係は実態がなくなっていたのかもしれない」(40代の妻)
「子育てと仕事でいっぱいいっぱいで、彼のことを全然気にしてもいなかった。始終イライラしている妻がいる家には居たくないって思われても仕方がなかったかもしれない」(30代の妻)
浮気は相手の女性だけが悪いのではなく、夫だけが悪いのでもなく、自分にも浮気を生み出す原因があったのではないか、という気持ち。ここまで自分の気持ちに整理がつけられると、不倫をきっかけにその後夫婦関係を再構築するにしろ、破棄するにしろ、自分の進むべき方向が見えてくることが多いようです。
サレ妻の発言から見えてくること
もがき苦しんだ先に見えるものは?
浮気に限らず、何か自分にとって不都合なことが起きたときに、他者だけを一方的に悪者にする物事の見方にとらわれていると、状況を冷静に考えることができず、次への一歩が踏み出しにくくなります。
「浮気は完全にしたほうが悪い」論がありますが、それを踏まえた上で「いや、待てよ。私がいつも小言を言ってたから夫の気持ちが離れたのかな」と一瞬でも浮かぶ妻と、まったく浮かばない妻では、その先の夫婦のあり方が確実に変わってきます。
サレ妻たちの発言を参照してみることで、何か困難な状況に陥ったとき、それをどのように受け止め、どのように乗り越えていくかのヒントが見えてくるのではないでしょうか。
夫婦仲相談所に来られる浮気に悩む妻たちに、まず私がしてもらうことは「なぜ夫が浮気したと思うか、理由を30個書いてみて」です。最初は「夫がだまされやすいアホだから」と書いている方も、最後の方では自分に目を向けるようになります。
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