入院患者数は減少傾向が継続
下記の表は厚生労働省の「患者調査」から主な傷病の入院患者数をまとめたものです。「患者調査」は3年に1度行われており、最新の結果が2019年3月末に発表されました。過去と比較するために1996年(平成8年)も載せ、2017年患者数の1996年に対する増減数と増減率を計算し、増減率が上がっている傷病は赤字で印しておきます。資料:厚生労働省患者調査(平成8年・26年・29年)
推計入院患者数の総数は131.3万人で3年前に比べて0.6万人減り、平成が始まった頃の1990年(平成2年)と比べると18.8万人も減っています。少子高齢化時代なので入院患者数が増えていそうなイメージがありますが、総数では徐々に減ってきています。ただ、傷病別に確認すると、中には入院患者数が大きく増えている傷病もあります。
入院患者数が大きく増えている傷病で特に目立つのは「アルツハイマー病」です。1996年の0.7万人から2017年の4.9万人へ21年で約7倍にもなっています。「アルツハイマー病」の患者は80歳以上の人が多く、高齢者の増加が影響していると考えられます。「心不全」や「肺炎」も入院患者数が大きく増えています。
患者数が多いのは「統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害(15.4万人)」や「脳梗塞(9.0万人)」ですが、1996年と比べると患者数はともに減っており、「統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害」は6.3万人(29.1%)、「脳梗塞」は6.2万人(40.7%)も減少しています。「胃の悪性新生物」や「狭心症」「急性心筋梗塞」等は入院患者数が半分程度に減っています。
通院(外来)患者数は前回に比べて微減
入院患者数は全体的に減っていますが、通院(外来)患者数はどのような状況でしょうか?同じように患者調査から傷病別に推計外来患者数表をまとめてみました。表の単位は千人で、外来患者数の多い傷病を載せてあるので、前述の入院患者数の表に載せてある傷病とは異なります。資料:厚生労働省厚生労働省患者調査(平成8年・26年・29年)
推計外来患者数の総数は719.1万人で3年前に比べて4.7万人減っています。1996年と比べても13.9万人減っていますが、外来患者数は700万人前後を行ったり来たりしているので、減少傾向にあるというわけではありません。傷病別に外来患者数が特に多いのは「本態性(原発性)高血圧(症)」の64.4万人や「歯肉炎及び歯周疾患」の46.9万人で、「歯肉炎及び歯周疾患」は1996年から患者数が約2倍になっています。
外来患者数でも「アルツハイマー病」の増加が際立っています。1996年の1,700人から2017年の46,700人へ、21年で実に27倍にもなっています。他に「慢性腎臓病」や「緑内障」等で患者数が2倍以上に増えています。患者数が大きく減っているのは「C型ウイルス性肝炎」や「胃潰瘍」でともに8割減、「狭心症」や「脳梗塞」も半分程度に減っています。
がんの患者数は通院が入院を大幅に上回っている
最後に「がん(悪性新生物)」「心疾患」「脳血管疾患」の3つを取り上げ、推計入院患者数と推計外来患者数の推移をグラフにしてみました。実線が入院患者数、点線が外来患者数を表しています。資料:厚生労働省平成29年患者調査
「がん」は最近外来患者数が増えています。2005年までは入院患者数を下回っていましたが、2008年以降は外来患者数の方が常に上回っており、2017年は入院患者数が12.6万人、外来患者数が18.4万人で、差は広がってきています。入院患者数は減少傾向にあることから、がんの治療においては、入院せずに通院(外来)による治療が主流になってきているといえそうです。
「心疾患」の2017年の入院患者数は6.4万人、外来患者数は13.4万人で、以前から入院患者数に比べて外来患者数の方が多く、通院(外来)による治療が主流と考えられます。外来患者数は大きく減ってきましたが、最近はあまり変化がありません。
「脳血管疾患」はがんや心疾患とは異なり入院患者数の方が多く、入院による治療が中心と言えますが、入院患者数も外来患者数もかなり減ってきています。1996年当時は入院患者数21.6万人、外来患者数17.4万人でしたが、2017年には入院患者数14.6万人で32%減、外来患者数8.6万人で51%減となっています。
健康診断は欠かさず受けておきたい
傷病別の入院患者数や外来(通院)患者数を知ることで、傷病ごとの傾向を知ることができ、予防策や事前の準備もしやすくなります。推計外来患者数の表の中で予防接種が大きく増えていました。理由は定かではありませんが、病気にならないよう事前に行動を起こすことは大事です。いつまでも健康な体で楽しく生活できるよう、健康診断を欠かさずに受けて早期発見、早期治療するようにしましょう。
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