アドバイス1 第一子だけなら住宅も老後も資金的に間に合う
まず、お子さんが1人の場合のマネープランを考えてみましょう。奥様の職場復帰は出産から1年後とします。その働き方ですが、今後のライフイベントを考えれば、より収入が高いフルタイム勤務が望ましいことになります。入ってくるお金は現時点より2万円増えますが、保育園費用が新たに3万円(卒園後も教育費として高校卒業まで計上)、その他、食費や雑費も増えることを考慮すると、収支は頑張って月10万円の黒字といったところでしょうか。年間120万円ですから、ご主人が定年となる60歳までの18年間で2160万円。今ある貯蓄と合わせて2380万円となります。
ちょうど18年後はお子さんが高校を卒業。大学資金として400万~500万円かかる(仕送り費用は除く)とすれば、教育資金用に変額保険に加入されていますが、便宜上、貯蓄からその資金を捻出するとします。結果、手元に残る資金は約1900万円。
次に住宅ですが、3年後、ご主人45歳のときに実家の土地に建てるとします。予算は諸費用込みで2000万円とのことですから、頭金を300万円入れるとして、借入額は1700万円。45歳から20年返済、全期間固定、金利1.8%とすれば、毎月の返済額は約8万5000円。先の貯蓄の試算は、この住宅コストが含まれていませんので、45~60歳までの15年間の支払額1530万円を差し引かないといけません。結果、60歳の時点で手元に残る資金は約350万円。途中、クルマの買い替え等を考慮すれば、実際はほとんど残らないということになります。
老後資金はご主人の退職金と奥様の確定拠出年金、あとは保険の解約返戻金。現在の住まいを手放すとすればその売却益、あるいは賃貸としての賃料も期待できるかもしれません。また、これら具体的な金額は不確定ですが、ご夫婦とも厚生年金に加入していること、60歳以降も働けるといったプラス要因を考慮すれば、老後資金は何とか足りるかもしれないが、それなりにリスクもある、といったあたりでしょうか。
アドバイス2 住宅を建てる以外の選択肢を模索したい
では、第二子を出産した場合はどうでしょう。仮に第二子を3年後に出産したとします。まず、出産と育児の期間、若干奥様は減収します。また、教育費として新たに3万円、さらにその他の支出も増えますので、それが18年間で約850万円。一方、収入としては第二子の児童手当が支給されますので、第一子だけと比較して、高校までのコストはプラス650万円。さらに大学費用を差し引けば、ご主人60歳のとき手持資金は1350万円となります(児童手当は前倒しで加算)。
この時点で費用2000万円の住宅建築は無理があるということがわかります。さらに、もうひとつ懸念として、ご主人60歳のとき、まだ下のお子さんは15歳。再雇用で減収した場合、生活費の負担はより大きくなります。
したがって、少なくとも第二子を望むなら、転職による収入アップや親御さんからの資金援助が望めない限り、2000万円で住宅を建てることは、ほぼ不可能と考えられます。データを見る限り、現在のご自宅が狭いのはわかりますが、できるだけコストをかけず、創意工夫で、リフォームしていくことが現実的でしょう。あるいはご実家での同居も選択肢になるかもしれません。少なくとも1000万円以上、住宅に費用をかけることは避けるべきでしょう。
お子さんと住宅のどちらを取るか、といった比較、発想は決していいとは思いません。しかし、結果として、どうしても2000万円の住宅が必要であれば、お金の面を考慮すれば第二子は断念する方が賢明ということに、FPのアドバイスとしてはなってしまいます。
最後に、家計については無駄なく、よく管理されていると思います。
見直すとすれば、保険くらいでしょうか。奥様のがん保険は、年齢的にも早い気がします。現時点でも医療保険だけでもいいのでは。さらに思い切って見直すなら、ご夫婦とも医療保険、がん保険を解約して、医療共済に加入する。これで月1万円は保険料が軽減されます。
相談者「かもめーる」さんから寄せられた感想
現実を知ることが出来て良かったです。転職も含めて収入アップを目指したいと思います。また、目に見える貯蓄が増えないので家計をもっと切り詰めなければいけないと思っていましたが、無駄がないとの事で良かったです。住宅と第二子に関しては主人と話し合い、今後どうするか決めていきたいと思います。ありがとうございました!教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/清水京武
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