もっと驚いたのは、「夫に資産運用は任せっきりだから、自分はよく分かっていないんです…」という方もいた点です。大事なお金の話。たとえ信頼する夫であろうと、任せきりにするのは不安の素です。
家族の財産はパートナーだけのものではないのですから、危険信号が無いかチェックしておいた方が安全です。ですから、「パートナーに資産運用を任せています!」という方は、少なくとも、あなたが監査役となり、パートナーが上手に資産を運用できているか、監視した方がよいです。
お金の使い方を監視されている人は、貯金をしやすくなる傾向があります。パートナーが資産を運用している場合は、あなたが監査役となることで、パートナーも危険な運用には手を出しにくくなり、安全な運用をしてくれるようになるかもしれません。
そこで今回は、パートナーに資産運用を任せている方のために、「パートナーが上手に資産を運用できているか?」を確認できる3つのポイントをご紹介しましょう。仮にパートナーが危険な運用をしている場合は、早く止めた方が身のためです。自分の財産を守るためにも、しっかり確認しておきましょう。
チェックポイントその1:借金は完済しているか?
まず確認すべきは、「借金は完済しているか?」という点です。たま~に、「住宅ローンや自動車ローンを完済していないけど、株式投資をやっている」という家庭の話を耳にします。これは、お世辞にも賢い選択とは思えません。
個人向けのローンは、総じて金利が高い傾向があります。積立投資などによる資産運用では、せいぜい「年利5%」くらいの利回りなものです(1)。それに、景気が悪くなれば、資産が減ってしまう可能性もあります。
ですから、個人においては、「借金返済にまさる資産運用は無い!」と言っても過言ではありません。株式投資などを始める前に、借金を完済する方が得になるでしょう。よって、「借金を完済するまでは、資産運用よりも、返済を優先すべし!」というのが原則です。
仮に、あなたのパートナーが、借金を抱えながら、同時に株式投資などをしているようなら、それは早まりすぎです。資産運用を始める以前に、パートナーと一緒に家計を見直した方が結果が出ると思いますよ。
チェックポイントその2:何に資産を配分している?
次に確認すべきは、「何に資産を配分しているか?」という点です。資産運用において最も重要なのは、資産配分です。Financial Analysts Journalに掲載された論文(2)によれば、「資産配分でパフォーマンスの8割~9割が決まる!」のだとか。
特に重要なのは、「どんな資産にお金を配分しているか?」という点です。着実な利益が期待できる資産の種類としては、「株式」や「債券」(そしてギリギリ不動産)しかありません。
よって、パートナーが、これら以外の「FX」などに手を出している場合は、危険信号です。これらの手法は「ゼロ・サム・ゲーム」と呼ばれており、安定した利回りが期待できません。
他にも、ぼく個人の見解としては、仮想通貨は経済学的に見ても、儲かる可能性が低いと考えています。上手くいかない可能性が高いので、パートナーが仮想通貨に執着している場合は、あなたが代わりに主導権を握った方がよいかもしれません。
また、株式や債券などの投資信託で運用している場合は、投資信託選びを間違えていないか確認しておくとよいでしょう。投資信託の選び方を間違えると、大きく損をする可能性があるので、注意が必要です。
投資信託については、過去に「科学的に正しい投資信託の選び方」に関する記事を公開しています。本記事と併せて、参考にしていただけましたら幸いです。
チェックポイントその3:取引の頻度はどれくらい?
さいごに確認すべきは、「取引の頻度はどれくらいか?」という点です。資産運用が上手なパートナーであれば、iDeCoやつみたてNISAなどの、節税制度を賢く活用し、長期投資に徹しているはずです。
さいきんは「デイトレード」など、短期間で頻繁に取引する手法が流行しています。しかし、経済学者らの研究(3)によれば、「ひんぱんに取引をしている個人投資家ほど、利益を出せていない!」という傾向が確認されています。だから、パートナーが頻繁に株取引や不動産取引に手を出している場合は、危険信号です。
また、ひんぱんに取引をする個人投資家ほど利益を出しにくく、ストレスが溜まりやすく、不幸になる!なんて研究もありますから、パートナーの幸せのためにも、短期取引をしている場合は、止めてあげた方がよいと思います。
まとめ
これまでの話をまとめると、「資産運用を始める前に、借金を完済すべし!」「着実な利回りが期待できる資産を持つべし!」「幸せになりたかったら放ったらかしにすべし!」という3点を確認するとよいでしょう。これら3点を確認することで、大よそパートナーの資産運用の腕を見分けることができます。1つでも当てはまらない項目がある場合は、危険な取引を行っている場合があります。パートナーに悪気は無いかもしれませんが、それにしても、一度お金について話し合う機会を設けた方がよいかもしれませんよ。
●参考文献
- 論文:山口勝業, 2016, "株式リスクプレミアムの時系列変動の推計 --日米市場での62年間の実証分析", 証券経済研究, 93, pp. 103-111
- 論文:Gary P. Brinson, L. Randolph Hood, and Gilbert L. Beebower, 1986, "Determinants of Portfolio Performance", Financial Analysts Journal, 42(4), pp. 39-44
- 論文:Brad M. Barber and Terrance Odean, 2000, "Trading Is Hazardous to Your Wealth: The Common Stock Investment Performance of Individual Investors", The Journal of Finance, 55(2), pp. 773-806