また、以前は「つみたてNISAとiDeCoはどっちがお得なのか?」という記事も取り上げました。この記事も、一部の方から好評でした。昔と比べて節税制度が充実してきた一方で、「どれが一番お得なのかが分からない!」と悩んでいる方も多いようです。
中でも、個人投資家の方の多くが、「つみたてNISAとNISA、どっちの方がお得なのか?」という点で悩んでいるみたいです。iDeCoとつみたてNISAは併用できますが、つみたてNISAとNISAは併用できませんから、どちらを選ぶべきか悩むみたいです。
そこで今回は、この疑問にお答えすべく、運用スタイル別にどちらの制度がお得なのか?調べてみました。
「NISA」って何?
「NISAって何?」という方は、NISAに関する記事を過去に取り上げたことがあります。本記事と併せてご活用下さい。NISAは、「Nippon Individual Savings Account」の略で、日本語では「日本版:個人向け貯蓄口座」という意味です。難しい表現が並んでいて理解が大変かもしれませんが、ざっくり「資産形成に使える制度!」と覚えておくとよいでしょう。
NISAでは、年120万円の、5年間有効な非課税枠を使って、資産を運用することができます。通常、株式投資などで得られた売買差益は、約20%の課税がなされます。たとえば、10万円の利益が出たら、2万円は税金で取られる計算です。
しかし、NISAを使うと、この課税がなくなります。10万円の利益を出したら、そのまま10万円を受け取ることができます。2万円の税金を取られることはありません。(=2万円を得する!)
NISA制度の詳細を知りたい!という方は、図説が豊富な良い記事がありますので、本記事と合わせて読んでいただくことをオススメします。
「つみたてNISA」って何?
「つみたてNISAって何?」という方は、過去に何度か取り上げてきましたので、それぞれの記事をご参照下さい。●つみたてNISAに関わる記事一覧 従来のNISAは非課税枠が大きく(年120万円)、非課税期間が短い(5年まで)制度でした。何もせずに投資をするよりもお得な良い制度なのですが、一般の方から見ると、「非課税枠120万円の金額が大きくて使い切れない」「非課税期間が短く、あまり大きな恩恵を得られない」など、課題のある制度でもありました。
そこでできたのが、「つみたてNISA」です。つみたてNISAは、NISAから派生した新しい節税制度です。NISAと同様、資産運用を一定期間、非課税で行うことができます。
つみたてNISAは、非課税枠は小さい(年40万円まで)ものの、非課税期間が長く(20年まで)なりました。そのおかげで、節税枠を使い切れないことも減り、しかも長期間で資産を運用できます。
つみたてNISAに関する制度の説明としては、図説が豊富なこのページが参考になるかと思います。本記事と併せてご活用下さい。
結局、「つみたてNISA」と「NISA」のどっちを選ぶべき?
ひととおり復習が済んだところで、本題へと移りましょう。ズバリ、つみたてNISAとNISAは、どちらの方が得なのでしょうか? この議論は難しいところで、運用目標の違いによって、どちらが適しているかは変わってきます。「つみたてNISAとNISA、自分にはどっちの方がお得なのか?」と知りたい方は、これからお尋ねする1つの質問に答えていただければ、大よそどちらの方が得か分かります。ぜひ、考えてみて下さい。
●質問:あなたの運用目標はどちらですか?
□ 手堅く平均年利5%くらいを狙いたい!
□ 貪欲に年利5%以上を狙いたい!
この質問の回答結果によって、あなたに「つみたてNISA」が向いているか、「NISA」が向いているかが分かります。これから、詳しくご説明しましょう。
回答1:手堅く運用したい人は「つみたてNISA」がお得!
まず、「手堅く平均年利5%くらいを狙いたい!」と考えている方は、つみたてNISAを選んだ方がよいでしょう。つみたてNISAは、従来のNISAと比べて投資信託の積立投資に特化しています。つみたてNISAでは、個別株を選ぶことができません。自由がきかない代わりに無難な投資信託がラインナップの多くを占めています。
2016年に公開された論文(1)によれば、「株式投資の平均年利は約5%!」ということが分かっています。上手に投資信託を選ぶことができれば、リスクはあるものの、無難に年率4~5%くらいは期待できると思います。
過去に試算した結果を参考に考えてみると、年率5%でのインデックス運用では、「つみたてNISAの節税効果は、1万円の積み立てあたり3000円くらい!」と「NISAの節税効果は1万円の積み立てあたり500円!」というのが目安です。
つみたてNISAは、NISAよりも非課税期間が20年と長いです。その結果として、複利効果が高まるので、「つみたてNISAでできること(インデックス投資)を、NISAで実践するのは勿体無い!」と考えておくとよいでしょう。
ちなみに、つみたてNISAを使ってインデックス投資をする際は、「科学的に正しい投資信託の選び方」などもありますので、こちらの記事もお役に立つかと思います。
回答2:貪欲に平均以上の利回りを狙うなら「NISA」を選ぶ!
前項でも述べたとおり、「つみたてNISAでできることをNISAで実践するのは損!」だと思います。とはいえ、平均以上の利回りを狙いたい方にとっては、NISAは有力な制度となるでしょう。そもそも論として、つみたてNISAでは、「無難な投資信託」しか選ぶことができません。投資信託の運用では、平均的な利回りが限界でしょう。言うなれば、つみたてNISAでは「無難な成績」しか狙えないということです。
よって、平均以上の利回りを狙う場合は、銘柄選びの自由度が高い、従来のNISAを選ぶ必要があります。ぼく個人の見解としては、NISAを使う場合は、個別株投資に節税枠を使うと効果が高いと思います。
ちなみに、個別株投資をするときには、実証済みの銘柄選別術がいくつかあります。これらの手法を組み合わせて使うとよいと思います。以下にリンクを貼り付けておきますので、ぜひご活用ください。
●個別株投資に使える、銘柄選別術まとめ
まとめ
つみたてNISAとNISA。両方を同時に使えたら嬉しいのですが、片方しか選べないのが難しいところです。自分に適した方を選ばないと損をしますので、本記事を参考に、どちらを選ぶか吟味していただけたらと思います。なお、つみたてNISAも、NISAも、どちらも基本は「長期投資」に役立つ節税制度です。デイトレードなどの短期トレードに役立つ制度ではありませんので、短期的な投機に使うと勿体無いので、長期投資に使うようにしましょう。
最近の論文(2)によれば、「短期投資をする人よりも、長期投資をする人の方が、利益を出すし、成績のブレが小さいし、ストレスも少なく、幸せ!」なのだとか。
ストレス少なく資産を運用したい方は、ひとまず「つみたてNISA」や「NISA」を使って、長期投資から始めてみてはいかがでしょうか?
●参考文献
- 論文:山口勝業, 2016, "株式リスクプレミアムの時系列変動の推計 --日米市場での62年間の実証分析", 証券経済研究, 93, pp. 103-111
- 論文:川西諭, 田村輝之, 功刀祐之, 2012, "長期分散投資vs短期集中投資 日経マネー誌アンケートから見えるネット投資家行動の実態", 行動経済学, 5, pp. 152-156