貯蓄

【自営業用】iDeCo使わないといくら損?試算した

自営業向けの貯蓄制度はさまざまありますが、ぼく個人の偏った見解では節税効果を求めるならiDeCo一択!です。そこで今回は、iDeCoの素晴らしさをお伝えするために、「iDeCoを使うとどれだけ得なの?」か、試算してみました。

中原 良太

執筆者:中原 良太

エビデンスに基づく資産活用&マネープランガイド

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自営業として働いていると、会社づとめじゃないぶん貰える年金が少ないです。それもあり、「老後の生活が不安…」と、心配なさっている方も多いでしょう。
 
かくいうぼくも自営業で働いている一人です。ぼくは去年、結婚をしたのですが、家族がいる方はなおさら「しっかり将来設計しなきゃ!」と思いますよね。
 
そんな方にオススメな制度に、iDeCoがあります。iDeCoは個人的に一番オススメな制度でして、「iDeCoこそ最強の貯蓄制度だ!」とすら考えています。我が家でも夫婦で取り入れていて、毎月、満額を蓄財しています。
 
2018年からは年単位拠出が始まるなど、制度自体も改良が重ねられており、使い勝手も良くなってきました。
 
とはいえ、iDeCoの認知度はそこまで高くありません。2018年9月時点で、利用者は103万人程度にとどまっています(1)。とても良い制度なだけに、利用者が少ないのは残念ですね…(汗)
 
自営業向けの貯蓄制度はさまざまありますが、ぼく個人の偏った見解では節税効果を求めるならiDeCo一択!です。そこで今回は、iDeCoの素晴らしさをお伝えするために、「iDeCoを使うとどれだけ得なの?」か、試算してみました。
 

そもそもiDeCoって何?

iDeCoのことを知らない方がいるかもしれませんので、簡潔にご説明しましょう。iDeCoとは「個人向けの確定拠出年金」を指します。平たく言うと、「自分のために、自分で貯める年金」みたいなものです。最近は「じぶん年金」という言葉が流行っていますが、iDeCoは「じぶん年金」を作る上でも魅力的な制度です。
 
iDeCoは「節税をしながら貯金ができる」有利な制度です。具体的な節税効果としては、「積み立てしたお金は所得控除できる!」「運用で利益を出したら非課税にできる!」「受け取るときも控除対象にできる!」と、三段構えの節税効果が得られます。
 
一定期間引き出すことができない点が難点ですが、そもそも年金は引き出せてはいけません。ですから、むしろ、お金が引き出せないことは、メリットと言い表すこともできるでしょう。また、iDeCoの利用には若干のコストがかかりますが、節税効果と比べてコストは小さいですから、特に不安視する必要は無いのでは?と考えています。
 
iDeCoの制度に関する説明については分かりやすいシリーズ記事があるので、そちらをご参照いただけたらと思います。
 

iDeCoは何万円得?(積み立て時の所得控除編) 

さっそく、iDeCoがどれくらいお得な制度なのか、試算してみましょう。まず確かめたいのが、「積み立て時の所得控除」による節税効果です。
 
iDeCoに加入すると、毎月の積み立て額が、所得税および住民税の控除の対象になります。それこそ、いつも所得の20%が税金で取られている人は、10万円の積み立てをすることで、2割の税金を支払わずに済みます(=2万円得!)。
 
そこで今回は、平均的な自営業者が、どれくらいの控除を受けることができるのか、試算してみることにします。
 
まず、自営業者は、iDeCoで月々最大6万8000円までのお金を積み立てることができます。満額を積み立てるのは大変かもしれませんが、ここでは最大限の節税効果を確かめてみることにします。
 
積み立て時の節税額の大きさは、その人の所得の大きさによって変わります。今回は、所得税や住民税、個人事業税など併せて「税率20%(復興特別所得税は考慮せず)」であると仮定して、所得控除で節税できる金額を試算してみます。
 
具体的には、自営業者が、毎月6万8000円、満額をiDeCoで積み立てた場合の節税額を算出しました。加入年数ごとの節税効果の大きさは、下記のとおりです。
 
●50歳でiDeCoに加入し、10年間、満額での積み立てを続けた場合
 節税総額 = 積み立て額 × 積み立て月数 × 控除資金に係る税率
      = 6万8000円/月 × 120カ月 × 20%
      ≒ 160万円
 
●40歳でiDeCoに加入し、20年間、満額での積み立てを続けた場合
 節税総額 = 積み立て額 × 積み立て月数 × 控除資金に係る税率
      ≒ 6万8000円/月 × 240カ月 × 20%
      ≒ 320万円
 
●30歳でiDeCoに加入し、30年間、満額での積み立てを続けた場合
 節税総額 = 積み立て額 × 積み立て月数 × 控除資金に係る税率
      ≒ 6万8000円/月 × 360カ月 × 20%
      ≒ 480万円
 
●20歳でiDeCoに加入し、40年間、満額での積み立てを続けた場合
 節税総額 = 積み立て額 × 積み立て月数 × 控除資金に係る税率
      ≒ 6万8000円/月 × 480カ月 × 20%
      ≒ 640万円
 
以上が、自営業者の方が、満額をiDeCoで積み立てた場合の節税額です。満額を積み立てることは難しいかもしれません。とはいえ、「最大でこれだけ節税できる!」と知るだけでも、参考になると思います。
 
ちなみに、20%の控除額は「非常に大きいのだ!」ということを覚えておくとよいです。最近の論文(2)では、株式投資の平均利回り(リスクプレミアム)は年率4~5%だ!なんて話もあります。20%の節税と言えば、4~5年分の利回りに相当する節税効果です。
 
個人投資家の運用実績は平均利回りよりも悪い!なんて話もありますから、実質的な効果は、もっと大きいでしょうな。
 
 

iDeCoは何万円得?(資産運用による売買差益編)

通常、株式投資などで得られた売買差益は、約20%の課税がなされます。たとえば、100万円の利益が出たら、20万円は税金で取られてしまいます。
 
しかし、iDeCoでは、資産運用で得られた売買差益についても非課税にすることができます。上記の例のように、100万円の利益を出した場合は、「20万円の税金を支払わずに済む(=20万円得をする)」計算です。
 
iDeCoの節税効果を最大限に高めたい方は、「積み立て資金をすべて株式の投資信託に回す!」のが効果的です。一般的に株式投資は預金よりも利回りが高く、平均利回り(リスクプレミアム)は年あたり4~5%と言われています。
 
預金として預けておくだけではお金は増えませんが、株式投資の場合は、長い目でみれば年利4~5%ほど成長すると期待できます。iDeCoではせっかく節税できるのですから、預金として預けておくよりも、株式の投資信託を買った方がお得では?と思います。(もちろん、リスクが伴うので実践する場合は自己責任ですが)
 
そこで、ここでは、仮に「積み立て資金の全てを株式の投資信託に回し、平均的な利回り(年率5%)で運用することができたら、いくらの節税効果が見込めるのか?」を試算してみます。
 
資産が順調に年率5%のペースで増えた場合の節税効果を、加入した年齢ごとに試算しました。試算の結果は、下記のとおりです。
 
●50歳でiDeCoに加入し、10年間、満額での運用(年率5%)を続けた場合
 節税総額 = (運用後の資産総額 − 積み立て総額)× 売買差益税率
      ≒ (1052万円 − 816万円) × 20%
      ≒ 45万円
 
●40歳でiDeCoに加入し、20年間、満額での運用(年率5%)を続けた場合
 節税総額 = (運用後の資産総額 − 積み立て総額)× 売買差益税率
      ≒ (2766万円 − 1632万円) × 20%
      ≒ 225万円
 
●30歳でiDeCoに加入し、30年間、満額での運用(年率5%)を続けた場合
 節税総額 = (運用後の資産総額 − 積み立て総額)× 売買差益税率
      ≒ (5557万円 − 2448万円) × 20%
      ≒ 620万円
 
●20歳でiDeCoに加入し、40年間、満額での運用(年率5%)を続けた場合
 節税総額 = (運用後の資産総額 − 積み立て総額)× 売買差益税率
      ≒ (1億104万円 − 3264万円) × 20%
      ≒ 1370万円
 
※初年のみ、利回りは半分(年率2.5%)として算出
 
以上が、自営業者の方が、満額を株式投資(年率5%)で運用できた場合の節税額です。本当にこのとおりの結果が得られるかは保証できませんが、「過去と同じ利回り」が実現できれば、これだけの節税効果が期待できるでしょう。
 
資産運用による節税効果は、長期投資による複利効果により、「若い人ほど節税効果が大きい!」とも言えます。ですから、若い人こそ、早くiDeCoを始めるべきなのでは?と思いますな。
 
 

まとめ

ここまでの話をまとめると、年代別の節税効果は以下のように計算できました。
 
●50歳でiDeCoに加入し、10年間、満額での運用(年率5%)を続けた場合
 節税総額 = 所得控除による節税額 + 売買差益分の節税額
      ≒ 160万円 + 45万円
      ≒ 205万円
 
●40歳でiDeCoに加入し、20年間、満額での運用(年率5%)を続けた場合
 節税総額 = 所得控除による節税額 + 売買差益分の節税額
      ≒ 320万円 + 225万円
      ≒ 545万円
 
●30歳でiDeCoに加入し、30年間、満額での運用(年率5%)を続けた場合
 節税総額 = 所得控除による節税額 + 売買差益分の節税額
      ≒ 480万円 + 620万円
      ≒ 1100万円
 
●20歳でiDeCoに加入し、40年間、満額での運用(年率5%)を続けた場合
 節税総額 = 所得控除による節税額 + 売買差益分の節税額
      ≒ 640万円 + 1370万円
      ≒ 2010万円
 
若いうちにiDeCoに加入して、上手に節税できれば、20歳から始めれば「家一軒」、30歳や40歳から始めれば「高級車1~2台」、50歳から始めれば「世界一周旅行1回分」くらいは浮きそうなものです。
 
ここでの計算では、投資信託の運営に係る経費や、iDeCoの運営費といった経費やら、受取時の詳細が反映されていません。ですから、楽観的な金額であることはご承知おき下さい。とはいえ、「節税効果はとんでもなくデカい!」ということは、言わなくともお分かりいただけるのではないでしょうか。
 
 
●参考文献
 
  1. プレスリリース:国民年金基金連合会, 2018, "iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入者等について"
  2. 論文:山口勝業, 2016, "株式リスクプレミアムの時系列変動の推計 --日米市場での62年間の実証分析", 証券経済研究, 93, pp. 103-111
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