晩産は増加傾向
昨今日本では、晩産家庭が増加傾向にあります。厚生労働省が発表する人口動態統計によると、出生時における父母の平均年齢は、年を追うごとに上昇しています。第一子が生まれた時の父母の年齢を見ると、1975年(昭和50年)の平均は母親が25.7歳、父親は28.3歳でした。一方2016年(平成28年)になると、母親は30.7歳、父親は32.8歳にまで上昇。母親は約5歳、父親は4.5歳上がったことになります。
第一子の出産年齢が上がると、当然、第二子、第三子を出産した場合の年齢も上がります。同調査によると、2016年(平成28年)における第三子を出産した親の平均年齢は、母親が33.6歳、父親は35.5歳です。いずれも1975年(昭和50年)の平均年齢に比べて、2~3歳上がっています。
支出が増えると同時に親は定年を迎える
40歳を過ぎて子どもを産む人も増えているようで、そのような家庭では、20代や30代前半で子どもを産んだ家庭よりマネープランをしっかり立てておくことが重要です。サラリーマンの給与構造は50代前半をピークにその後は徐々に下がっていくことが一般的です。しかしその頃は、子どもの塾代や学費の出費が年々増える時期となります。最もお金のかかる大学入学時には、親が定年を迎えるということも往々にしてあります。
また晩産家庭特有の問題には、親自身の老後資金を貯める時間が少ない点も挙げられます。前述の通り、定年間際に教育費の支出が膨らむため、親自身の老後資金を貯めるどころではないケースも考えられるからです。
「最終的には退職金でどうにかする」という方もいるようですが、退職金は長い老後の生活を支えるための原資。本来教育費に充ててはいけないのです。
晩産家庭の場合、どのような点に留意してマネープランを立てればよいのでしょうか。ポイントをまとめてみました。
貯蓄を増やすためのポイント
子どもが小学生までの間は、教育費はさほどかからないため、その間に最大限貯金を増やすことを目指してください。給与天引きができる財形貯蓄(勤務先が制度を導入していれば)や、銀行の積立定期預金などを使って、効率よく貯めていきましょう。そのほか、元本割れのない個人向け国債(変動型10年)に預けることや、運用で増やしていきたいという方なら、つみたてNISAを利用した投資信託の積立を検討してもよいでしょう。
住宅ローンを組む場合の注意点は?
これから家を購入しようとしている人は、住宅ローンを払いながら、教育費と老後資金を確保できるかを真剣に考えなければなりません。老後の生活のためにも、住宅ローンは定年退職までに返し終えるプランを立てることを基本としましょう。もしそれが実現できないようであれば、住宅購入計画を見直す必要があります。例えば、住宅を購入するなら、物件価格を下げる、中古住宅を選ぶ。そのほか、住宅を購入せずに賃貸住宅で暮らす、実家に同居させてもらうなど、先々を見据えた計画を立てることが大切です。
老後資金はいつどうやって貯める?
晩産家庭の場合は、子どもが独立した後に老後資金を貯め始めるのでは遅すぎることが考えられます。そこで、退職金のすべてを老後の生活費として確保することを念頭においてください。また、子どもの教育費を貯めるのと同時期に、老後資金の積立をはじめましょう。勤務先にある財形年金で貯めることや、確定拠出型年金制度があるようなら、まずはそれを有効活用しましょう。その際は、元本保証型の商品ではなく、株式などで積極的な運用を目指すことも一考です。勤務先に確定拠出年金制度がない場合は、ネット証券や銀行で扱っている個人型確定拠出年金(通称iDeCo)を活用しましょう。
生命保険は何を選べばいい?
「子どものために保険にはしっかり加入しておく」という考えは大切かもしれませんが、保険料がかさんで家計を圧迫してしまっては意味がありません。保険のスリム化を目指しましょう。例えば、死亡保障であれば、保険料が割安でありながら、子育て時期など、一定の間に手厚い保障が確保できる収入保障保険、あるいは、死亡保障と貯蓄性を兼ね備えた低解約返戻金型終身保険などを検討しましょう。
また、民間の医療保険にはあえて加入しないという選択肢もあります。なぜなら、公的な医療制度には、医療費が一定の額を超えた場合に助成される高額療養費制度がありますし、さらに会社員や健康保険に加入している派遣社員・パートであれば、ケガや病気で休んだ時に一定額を健康保険から支給してくれる傷病手当金もあるからです。
「保険は当たり前に加入しておくもの」という思い込みは切り捨て、いまいちど本当に必要な保険かどうかを慎重に判断することが重要です。
教育費の負担を減らす対策は?
教育費の中で最もお金がかかる時期は、子どもが大学生の時です。日本金融政策公庫の「教育費負担の実際調査結果」によると、4年間の入学費用を含めた在学費用は、国立大学で500万円以上、私立大学となると700万円以上かかっているという報告があります。この結果からすると、子どもが大学へ入学するまでに500万円くらいは貯めておきたいところです。もしそれまでに資金が確保できないようなら、国や自治体などから奨学金を借りることを検討しましょう。ただし、奨学金はあくまで借金です。将来子どもが返済に困らないためのプランを、親が一緒に考えてあげることが大切です。
なお、親が教育ローンを組むケースもありますが、晩産家庭の場合は、返済が老後に及んでしまうため、教育ローンによる借り入れはおすすめできません。
とはいえ、どうしても教育ローンを組むのであれば、勤務先の貸付制度や、国が運営する日本政策金融公庫の教育ローンの利用を優先的に考えてください。