貯蓄

もっとも手堅い「自分年金」の作り方とは?

「損をせずにお金を増やしたい!」と考えているのは、ぼくだけではないはず。人前では言えなくても、きっと、同じ望みを持っている人がいると思います。そんな欲張りな方に役立つ手堅い「自分年金」の作り方をご紹介しましょう。

中原 良太

執筆者:中原 良太

エビデンスに基づく資産活用&マネープランガイド

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「損をせずにお金を増やしたい!」と考えているのは、ぼくだけではないはず。日本人の多くは「時間よりもお金が大切だ!」なんて答えている(1)みたいです。だから、人前では言えなくてもきっと、ぼくと同じ望みを持っている人がいると思います。
 
今日は、そんな欲張りな方に役立つ手堅い「自分年金」の作り方をご紹介しましょう。
自分年金の作り方

損をせず、お金を増やす方法は?

 

そもそも「損」って何? 

詳しい話に移る前に、1つだけお話ししなければならないことがあります。それは、そもそも「損」って何? という話です。「損」という言葉を聞くと、「株で損を出す!」とか、そういったことを想像する方もいるでしょう。それも1つの正解ですが、損の種類はこれだけでないということをご存じでしたか?
 
ぼくは、「損」には大きく分けて2つの種類があると考えています。
 
1つ目は、会計上の損失です。これは目に見える損失で、「100円を失くしてしまった」とか、「1万円を無駄遣いしてしまった」とか。このようにして表れる損のことです。
 
2つ目は、確率上の損失です。これは目に見えない損失で、「機会損失」という呼ばれ方をしています。たとえば、「100円を節約するために、自転車で30分かけて、隣町のスーパーまでやってきた」としましょう。
 
このとき、会計上では100円を節約することができました。しかし、その裏で「スーパーに来るのに30分かかった」という費用が発生しています。この30分を「別のことに使えば、もっと良いことができたかもしれない?」と考えると、目に見えない損失が見えてきます。
 

「預金」が損につながるとき

ぼくら日本人の多くが「お金を銀行に預けておけば、それで安全!」と考えています。たしかに、銀行にお金を預けていれば、会計上の損失を被る心配はありません。預金封鎖でも起こらない限りは、問題ないでしょう。
 
しかし、確率上の損失のことを考えると、話が変わってきます。たとえば、日本株式市場は、2012年から2017年にかけて、5年弱ほどで2倍ほどにまで成長しました。たしかに、銀行にお金を預けていればお金は減りませんが、それと同時に「お金を5年で倍増するチャンスを逃してしまっていた!」と表現することもできるのです。
 
いまどきの日本人は、会計上の損失には敏感ですが、確率上の損失には疎い傾向が見られます。ですから、この点に注意をしながら、「どうやって自分年金を作っていこうか?」と考えることが必要です。
 

確率上の「損」はゼロにできない!

なお、「会計上の損も、確率上の損も、どちらもゼロにしたい!」と考える方がいます。ですが、残念ながらそれは不可能です。なぜなら、確率上の損はどんな場合でも生じるからです。
 
たとえば、景気が良くなれば「もっと株を買っておけばよかった」と考えることになります。逆に、景気が悪くなれば「こんなに株を買わなければよかった」と考えるでしょう。未来を完全に見通すことはできませんから、ぼくらはどこかしらで、必ず損をすることになるのです。
 
そこで重要なのは、「損の仕方を決める!」という点です。個人的にオススメなのは、「機会損失が平等に生じるようにする」という方法です。今回は、カウチポテトポートフォリオという考え方と、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)によるポートフォリオの2つのご紹介しましょう。
 

確率上の損を分散させる「カウチポテトポートフォリオ」

カウチポテトポートフォリオ(Couch Potato Portfolio)とは、米コラムニストのスコット・バーンズ氏が提唱した資産運用法⑵です。
 
カウチポテト(Couch Potato)の定義は諸説ありますが、「ソファ(カウチ)に寝転んで(ジャガイモのように)長時間を過ごす人」のことを指します。平たく言えば、怠け者のことです。
 
カウチポテトポートフォリオでは、資産の半分を株式、残り半分を債券にあてます。これによって、「好景気が来たときの機会損失」と「不景気が来たときの機会損失」を半々で済ませます。
 
カウチポテトポートフォリオは、年金を運用しているGPIFでも、大よその考え方が採用されています。ですから、「失敗したくない!」という方にとっては、うってつけの投資法だと言えるでしょう。
 

参考例:GPIFのポートフォリオ 

ちなみに、GPIFのウェブサイト(3)では、「債券と株式で、半分ずつ資産を運用する!」という旨の記載があります。まさに、カウチポテトポートフォリオそのものです。
 
資金管理の内容を探ってみるとGPIFでは、下記の割合で資金を4分割して資産を運用しているようです。
  • 国内株式:全体の25%
  • 外国株式:全体の25%
  • 国内債券:全体の35%
  • 外国債券:全体の15%
年金の運用には大きな失敗が許されません。少なくとも、GPIFが考える「失敗の確率が低いポートフォリオ」は、カウチポテトポートフォリオなのだ! と言うことができるでしょう。
 
「損をしたくないけどお金を増やしたい!」という方は、カウチポテトポートフォリオやGPIFによる資金管理の方法を参考に、自分年金を作ってみてはいかがでしょうか。
 

まとめ

この記事の内容の中でも、特に重要なポイントをまとめます。まず、覚えておいてほしいのは、「損には2つの種類がある!」という点です。そして、「確率上の損失はゼロにできないから、この損失を分散させよう!」ということで、以下の2つのポートフォリオをご紹介しました。
 
  • カウチポテトポートフォリオ……株式と債券を半分ずつ蓄える
  • GPIFのポートフォリオ……国内株:外国株:国内債:外国債=25:25:35:15
これらの点を押さえるだけでも、かなり安全に自分年金を作ることができるでしょう。「損をしたくないけどお金を増やしたい!」と考えている方は、ぜひ、この2つを意識して、資産運用を検討してみてはいかがでしょうか。

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【参考文献】
 
  1. 調査:GfK, 2017, "Consumers value time and experiences more than money and possessions"
  2. 記事:Scot Burns, 1991, "Couch Potato Investing",  The Dallas Morning News
  3. 記事:年金積立金管理運用独立行政法人, 2014, "基本ポートフォリオの考え方", 2018年10月25日時点
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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