亀山早苗の恋愛コラム

離婚しない、仮面夫婦とも違う「非離婚」という生き方

事実婚など婚姻届を出さずに結婚生活を送る人もいれば、共生婚のように婚姻届は出すがいわゆる恋愛関係とは違った関係性の人もいる。元夫が離婚届にサインしないため、離婚しないままに恋愛に生きる女性がいる。「けじめをつけろ」と人は言うが、彼女の真意とは。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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結婚とは、離婚とは。夫婦関係の「けじめ」とはなにか

離婚しない、仮面夫婦とも違う「非離婚」という生き方

婚姻届や離婚届は「けじめ」?

事実婚として婚姻届を出さずに結婚生活を送る人もいれば、共生婚のように婚姻届は出すが恋愛関係はない人もいる。また、離婚できない事情があり、仮面夫婦として表面上は円満夫婦を装い続ける人もいる。また、高齢男性が結婚するニュースなどに対し、「責任をとってエライ」と同意する傾向もいまだにある。

人はどうしても「けじめ」をつけたがる。だから離婚しない限り、次の恋愛に進めないと嘆くケースも少なくない。だが、相手が離婚に応じなければ、離婚届は提出できない。調停、裁判と進めるのか、いっそ離婚届など関係ないと自分の道を生きるのか。考え方は人それぞれだろう。  

最初の夫が離婚してくれないので……

双方が同意しなければ、離婚は成立しない。レイナさんの選択は。

双方が同意しなければ、離婚は成立しない。レイナさんの選択は。

レイナさん(42歳)は、現在、パートナーとともに暮らしている。婚姻届は出していない。彼女が離婚していないからだ。

「高校を出て専門学校に行き、一応、専門職を持っています。結婚したのは仕事を始めてすぐ22歳のころ。相手は10歳年上の人でした。すぐに妊娠、出産、仕事に復帰と忙しい日々でしたね」

子どもが小学校に入ったころ、夫とはうまくやっていけないと思うようになった。

「夫を嫌いになったわけじゃないんです。だけど夫と一緒だと息がつまる。年上だからなのか、私をいつまでも保護下に置きたがるのにうんざりして。別れたいと言ったけど別れてくれない。それじゃしょうがないと息子を連れて家を出たんです」

実の姉の近所に住み、息子は3人のいとこたちときょうだいのように育った。レイナさんも姉任せにはせず、ときに姉たちの子も連れてよく遊びに行ったという。

「その間、家には連れてこなかったけど、私自身も自由に恋愛はしていました。自分の最低限の自由を確保できたから、いつもご機嫌で息子に接していた。もちろん息子にもやりたいことはなるべくやらせました。その結果、なぜか息子は自立心が強くなって、高校の途中で交換留学のため渡米。そこでうまいこといろいろコネを作ってきたのか、こちらの高校を卒業すると、すぐにまたアメリカへ。よほどあちらの水が合ったみたいですね。私は息子が大学を出るまでがんばろうと思ったのに、ちょっと肩すかしを食ったような感じで」

さびしかったという。だが、息子には息子の人生がある。レイナさんは当時つきあっていたバツイチの男性と同居を始めた。

「とっても好きな人だったんですが、半年で音を上げました。彼が望んだのは、ごく普通の結婚生活。私が仕事をセーブして家事を丁寧にやることを求めた。でも私は思いきり仕事をして、週末は友人たちとめいっぱい遊びたいタイプ。ふたりきりで静かに暮らしたい彼とは合わなかったんですね」

彼がきちんとけじめをつけて、早く離婚してほしいと言ったことも、レイナさんにはどこか重かった。
 

また新しい彼と同居。それでも離婚しない夫

夫と籍は入れているが、別の彼と同居している。でも、夫は……

夫と籍は入れているが、別の彼と同居している。でも、夫は同意もしないが、離婚にも応じない。

その彼と別れ、また新たな恋をしたレイナさん。つい最近、その彼と同居を始めた。

「別に同居しなくてもいいんですけど、たまたま私の賃貸住居が更新だったんです。彼はひとりで暮らすには広いマンションを所有しているので、『越してきちゃえば?』と。じゃあ、そうしようかとなりました」

今の彼は、早く離婚しろとも普通の主婦として家事をやれとも言わない。

「ときどき、夫とも連絡をとっているんですよ。息子のこともあるので。でも夫はいまも離婚はしたくないと言う。そこにどういう意図があるのかわかりませんが、夫がしたくないならそれでもいいか、というのが私の正直な気持ち。別に籍を一緒にしなくても、私が愛しているのは今のパートナーですから」
 

今は婚姻届に縛られたくない

今の彼とは、互いに結婚の意志はあることを公正証書に記している。レイナさんは彼の財産には興味がないが、万が一、どちらかが病気になって同意書にサインもできない状態になるとつらいため、公正証書を作ったのだそうだ。

「どれほど効果があるかわかりませんが。今は婚姻届に縛られたくないという思いです。人の気持ちは変わっていくものだし。周りもみんなけじめをつけろというけど、それほどけじめって大事なんでしょうか。元夫が書きたくない離婚届を、裁判してまで書かせる必要がどこにあるんだろうって考えてしまうんですよね」

カテゴライズされると安心する人たちがいる。既婚、未婚、離婚。どこの枠に入るのか。枠に入ればほっとする。だが、レイナさんはそのカテゴライズがかえってうっとうしいと思うタイプなのだろう。

「私は私。結婚していようが、離婚届を出さずに恋愛を繰り返そうが、誰かと同居しようが、私は私であることに変わりはない。それだけのことなんだと思うんですけどね」

世間はそうはいかないみたい、とレイナさんはふっと笑った。潔く自分を生きる彼女は、どこかまぶしい。


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