アドバイス1 老後まで資金的な心配はほぼ不要
結論から先に申し上げますと、住宅ローンも教育費も、そして老後資金も現状、問題なしと言えます。いろいろ心配されていますが、安心されていいと考えます。ともあれ、試算してみましょう。毎月の貯蓄(と投資)は財形貯蓄と積立年金、持株会で毎月16万円。これに家賃収入の18万円を加えて、計34万円。さらにボーナスから126万円貯蓄しているので、貯蓄ペースは年間534万円ということになります。
みっちーさんが言われる「生活費はギリギリなので」は、毎月の貯蓄がすべて天引きですから、手元に残る給与は27万円ほど。毎月の生活費がほぼ同額なので、そう感じてしまうということです。家賃収入も、おそらく別口座で管理され、生活費には反映されていないのでしょう。
さて、住宅の着工が来年4月。建築期間を半年とすると、住宅ローンの支払いは来年10月から。その時点で、貯蓄も含めた金融資産は約7500万円。
これ以降は、住宅ローンが発生します。想定されている金利、借入期間ですと、毎月の返済額は22万6000円。年間で271万円の支出増となりますので、貯蓄は年間263万円に減ります。それでも、定年までの60歳までに3800万円、貯蓄を上乗せできますから、金融資産の総額は1億1300万円となります。
ここから教育費を差し引きます。ただし、進路によってかかる金額は大きく異なります。仮に1人1000万円とすると、3人で3000万円。結果、手元に8300万円残ることになりますが、その間、クルマや家電の買い替え、引っ越し費用、毎年の固定資産税などの支出も考慮して、7600万円とします。
また、実家の土地を相続する際に、兄弟に2000万円を譲渡されるとのことですから、退職金をそのまま充てるとすると、この7600万円が老後資金ということになります。ただし、お子さんが遠方の大学に進学して仕送りが発生する場合、最大で6500万円程度に減る可能性はあります。それでも、老後資金としては、想定される大きな支出(住宅リフォーム、医療・介護費用、長生きリスクなど)を考慮しても十分対応できる金額だと言えます。
アドバイス2 住宅ローンの借入額を減らし不安を抑えてもいい
アドバイスとしては、住宅ローンを5000万円借り入れるとのことですが、もっと自己資金を入れて、借入額を下げてもいいのではないでしょうか。例えば、2000万円を入れて、借入を3000万円にすると、金利0.8%、返済期間20年で毎月の返済額は13万5000円。住宅ローンの支払いという固定支出が大きく減ることで、毎月の家計負担は小さくなります。借入額が小さくなり、精神的な不安も緩和されるのではないでしょうか。当然、当初の手持ち資金は大きく減りますが、それでもこの貯蓄ペースならローン開始から6年間で貯蓄は元に戻ります。
また、住宅ローン控除という点では借入額は大きいと、その分、還付される金額も大きくなります。ただし、その分、支払利息も大きくなります。5000万円の借入に対して先の条件で返済すると、支払利息の総額は540万円ほど。一方、3000万円の借入なら325万円。住宅ローン控除の控除率は、毎年、年末のローン残高の1%で、かつ控除額の上限は40万円(一般住宅の場合。認定長期優良住宅等は50万円)となりますが、それを無駄なく活用しても、計算するとトータルでは3000万円の借入の方が支払う金額は抑えられます。
しかし、2000万円の自己資金を用意するとなると、その原資として積立年金を充てるか、それができない(定年までおろせない)なら、手持ちの株式を売却することになります。あるいは、自己資金は500万円程度に抑えて、繰上返済を積極的に行うのも同様の効果を得られます。
その繰上返済については「住宅ローン控除の期間が終了する10年以降に行う予定」とのことですが、必ずしもそれが得策とは限りません。金額や返済時期によっては、10年を待たずに繰上返済を行う方が効果的というケースもあります。実際に行う際は、金融機関に試算してもらうといいでしょう。
アドバイス3 投資は早めの利益確定も選択肢のひとつ
先の試算はあくまで現状の収支を目安にしたものです。ご実家の土地を相続された場合、単純に親御さんに地代として渡していた40万円が世帯収入になりますから、さらに資金的な余裕が生まれるでしょう。もちろん、家賃収入が減る可能性もゼロではありません。それでも、不動産そのものを売却するという選択肢もあるわけですから、減収について大きく不安になる必要はありません。したがって、「20万円くらいかけて旅行に行きたいとも思うものの、やはり贅沢かなと主人と話したりしています」とのことですが、毎年その予算で旅行をしても、家計的には何ら問題はありません。過度に心配することなく、毎年予算を組み、その枠内で楽しんでください。必要な資金、そのために必要な貯蓄ペースをしっかり把握すれば、自然と節約と贅沢のメリハリもつけられるようになるはずです。
最後に投資について。持株会は継続しても構いませんが、それ以外の投資の増額は控えた方がいいでしょう。資金的には余裕があるとは言え、現状、住宅ローンを抱え、教育資金を準備している時期ですから、これ以上のリスクは取るべきではありません。大きく含み益があるとのことですから、早めに利益確定しておくのもいいと思います。
相談者「みっちー」さんより寄せられた感想
子どもを遅くに授かり、教育費、老後費が重なって必要になる上、住宅ローンの支払いも始まったら大丈夫なのかな、と漠然とした不安でいっぱいでしたが、大丈夫そうだとの回答をいただき安心しました。投資に関しては素人ですので、利益のある今のうちに売却しようかなと思います。いままでコツコツと貯蓄をしてくれていた主人に感謝したいと思います。深野先生、ありがとうございました。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください(相談は無料になります)。
教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武
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