野菜は洗剤で洗うべき? 残留農薬の人体への影響は
「残留農薬が怖い」と言われます。野菜を作るときの野菜のメリットは納得できます。残ってしまった農薬はどう考えればいいのでしょうか?
残留農薬が怖いからと、少し高めな無農薬野菜を買ったり、野菜を入念に洗ったりしている方もいるかもしれません。最近も、アメリカの環境保護団体による調査結果で残留農薬の危険の高い果物が指摘されるなど、残留農薬の安全性を問題視する報道がありました(CNN「残留農薬ランキング 最悪はイチゴ、安全の筆頭はアボカド」)。
このような報道を見ると、「日本は大丈夫かな? 輸入野菜も国産のものも、野菜専用の洗剤で洗おう」という気持ちになる人も増えるかもしれません。実際に残留農薬の影響はどのようなもので、どれくらい有害と考えた方がよいのでしょうか?
残留農薬の日本の基準値・ポジティブリスト
それでは、残留農薬の基準について見てみましょう。まず、農薬は種類ごとに厳密な検査を経て使用量と使用方法が決められています。意外に知られていないかもしれませんが、最終的に流通する食品に対してだけでなく、農作物を作るための土壌や水、家畜のエサに至るまで、食品を生産するために必要なすべてのものに対して、残留農薬についての厳しい規定があるのです。規定の詳細を知りたい方は厚生労働省による「残留農薬」をご覧ください。日本の農業では、厚生労働省が定めた「ポジティブリスト」と呼ばれるリストに掲載されている農薬のみの使用が認められています。このリストに載っているのは使用しても人や土壌に影響を与えにくい農薬のみで、使用することのメリットがデメリットを大きく上回っているものです。さらに、使用方法も厳しく規定されています。
これに沿って正しく農薬が使われているかどうかも、農林水産省が「農薬の基礎知識 詳細」に沿って厳しく管理しています。農林水産省では、農薬の短期影響だけでなく長期的な影響についても調べており、その両方で人にも環境にも影響がないことを確認しています。
このように、国内で生産された国産の農産物は、2つの省庁の制度によって安全性が確認されたもののみが流通しているのです。
では外国からの輸入食材についてはどうでしょうか? 気候等の違いによって輸入元の方が日本よりも残留農薬の使用量が多く許可されているものもあります。しかし、日本に到着した際の検疫検査で安全性が確認されたものだけが、日本国内で流通できるシステムになっています。
このように、日本国内では厳格な検査を経た農産物だけが販売されているのです。残留農薬についてはそこまで神経質になる必要はないでしょう。
残留農薬調査結果に見る現場意識の高さ
さらに、最新の調査結果である「国内産農産物における農薬の使用状況及び残留状況調査の結果について(平成29年度)」によれば、調査した全ての調査農家(477戸)において適正に農薬が使用されていたことがわかりました。
また、すべての検体(のべ2,842検体)について、食品衛生法に基づく残留基準値を超える農薬を含んだ検体はありませんでした。
とあります。考えてみれば、農業の生産現場に従事している人たちも、自分たちが育てている作物以外は購入して食べているはずです。生産者でありながら消費者でもあるのですから、自分たちが食べたくないと思うような農薬がたくさん残った農産物を生産したいとは思われないでしょう。農家の農薬の適正使用についての意識の高さが現れた結果だと考えてよいと思います。
一般的な食生活を送っていれば、残留農薬が健康被害を及ぼすとは考えにくいと言っていいと思います。
カット野菜などの加工食品の安全性は?
残留農薬からは少し離れますが、カット野菜の衛生管理などについても気になる方は多いと思います。給食などを扱う現場では「大量調理施設衛生管理マニュアル」に沿って衛生管理を行っています。野菜や果物の原材料の処理として、という行程を行うことがはっきりと指示されています。すなわち、カット野菜などは厨房内や工場などでこれらの行程を経た後に出荷されています。これだけ何度も洗剤や次亜塩素酸ナトリウム、水を使って洗われているため、「カット野菜にはビタミンなどがほとんど残っていないのでは?」という声が上がるのでしょう。~前略~
4. 流水で3回以上水洗いする。
5.中性洗剤で洗う。
6.流水で十分すすぎ洗いする。
7.必要に応じて、次亜塩素酸ナトリウム等で殺菌した後、流水で十分すすぎ洗いする。
~後略~
カット野菜などの加工野菜にどれくらいの栄養素が残っているかはまた別の機会にお話しするとして、食卓に安全に食品を届けるために、これだけの工程が必要とされているということをまずは知っていただければと思います。
一方で、冒頭でも触れましたが、家庭で使う台所用洗剤には「食器専用」のものもありますが、野菜を洗っても大丈夫なものもあります。日本石鹸洗剤工業会の「「台所用洗剤=中性洗剤」とは限らなくなった」でも触れられていますが、過去には野菜の堆肥が心配された時代があり、その時代の名残で食器だけでなく野菜も洗える台所用洗剤があるといわれています。しかし肥料として堆肥を使わなくなった現在においては、一般家庭で野菜からどれだけしっかり洗剤を洗い流せるかと考えると、安全性が厳しく管理された野菜をわざわざ洗剤で洗うことには少し疑問が残ります。
もちろん台所用洗剤も、残った成分が口に入っても健康被害が出ないような高い安全性で作られています。しかし残留農薬と素人が洗剤を使って洗った野菜の洗い残しの洗剤とでは、どちらが怖いだろう?と考えてしまうのは、私だけではないのではないでしょうか。
このように食品の衛生環境も日々変わっています。農薬もより効果が高く、環境や人に優しいものへと変わっています。それでも日々の食事は変わらず、昔のままのスタイルが体によいことは間違いありません。ぜひ、食品や農薬の安全性や実際の影響について正しく理解して、美味しい農産物を衛生的に食べられる環境づくりをしていきたいですね。