そもそも「心付け」とは何か?
海外のレストランやホテルを利用した際に渡す「チップ」。日本の旅館でも必要なのか? 不要なのか? 特に高級な旅館に泊まる時ほど悩むものですね。この心付け、どんなときに渡すべきものなのでしょうか?心付けとは、給仕をしてくれる女中(仲居)へ渡す金銭のことを意味します。昔の旅館では心付けを受け取ったか受け取らなかったかで、提供する内容にバラつきが出てしまったり、心付けを受け取ることができる職種と受け取れない職種の違いがあるために職場のなかで不公平が生じていました。やがて、心付けを煩わしく思う客人のことを考えて「心付けお断り」と銘打つ旅館が出てくるようになり、旅館業界ではサービス料10%制度を導入することになったのです。
心付けは渡す必要がない
このような歴史的背景からしても私の結論は「渡す必要はなし」。サービス料は払っています。それでも心付けを渡そうと思いますか? もちろん「粋な見栄を張っておきたい」ならば否定はしませんが「見栄」の他に特別なサービスを期待しても、その恩恵に十分にあずかかれない場合もあるのです。心付けが隆盛した時代と比較して人手不足に悩む現在の旅館では、お客様をお迎えする前には一定の準備を済ませ、手順を決めておくことが必要です。お客様が到着する前に通す部屋は決まっていて、料理場では夕食の仕込みも始まっています。よって心付けを渡されたからといって、物的なサービスとして「眺めの良い部屋に変更する」「食事の内容をグレードアップする」ということは時間的にも人的にも応えきれない可能性が高いのです。
しかし、心付けを渡すことが、旅館を満喫するためのプラスの要因になる場合もあるのです。
心付けを渡すべき場合とは? またその相場はいくら?
心付けを渡すと良い場合とは、小さいお子様やご高齢の方がいることで宿側が特別な配慮をしなければならない時や、記念日で特別なお願いをしている「特別な時」です。心付けの金額の目安は、総額の10%程度。海外でチップを渡す時は、全てのサービスを受け終わった後に渡すのが通例ですが、宿にとって特別な配慮や業務が発生することが予め分かっている時には到着して間もなく渡してしまいましょう。そうすることによって「負担かけて悪いなぁ」という気持ちも薄れ、まとめ役や幹事さんも心置きなく滞在を楽しむことができるでしょう。
心付けの包み方 ティッシュで包むのは失礼?
心付けは、部屋に案内され係が下がる時にでも、白い封筒や懐紙に包んで渡すのがいいでしょう。お年玉用のポチ袋でもいいですね。しかし、それらの封筒やポチ袋など持ち合わせていない時もあるかと思います。とはいえ、ティッシュで包むのは止めましょう。受け取る方もあまり良い気持ちがしませんから。
そんな時は、旅館のフロントへ封筒や便箋があるかどうか聞いてみましょう。大抵の旅館では宿の名前が入った封筒や便箋があります。もしくは、館内の売店でレターセット等が販売されている場合もあるので確認してみるのもいいですね。
心付けの渡し方 どんなタイミングで渡すべき?
先述の「特別な時」を除いて心付けを渡すのであれば「特別な計らいをしてくれた後」でしょう。あくまでも「サービスの前」に渡すのは「わいろ」。期待をしてはいけません。しかし、思いがけず有難いサービスを受けた時、その「サービスの後」に、自然に「渡したい」という気持ちが芽生えて渡すのが本当の心付けです。とすると感謝の気持ちとしての心付けは、人間の自然な生業かもしれません。渡すのであれば、気持ちいいサービスの「後」にするのが自然でしょう。
心付けを渡す際は、あくまでも「袖の下」ではなく、「迷惑かけるね」と相手を想う気持ちをもちたいものです。心付けとは、そういう日本人ならではの精神文化の一つと言えるでしょう。
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