亀山早苗の恋愛コラム

母は女ではない? シングルマザーへの抑圧と切ない恋愛

「母親は女であってはならない」。そんな見えない抑圧が蔓延しているようだ。人が人である限り、恋愛する可能性はある。だが、彼女たちは恋愛に罪悪感を抱かざるを得ないのだ。ひとりの女性の生き方をもっと尊ぶ社会のありようが求められているような気がしてならない。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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「母親なのに恋愛なんて」心無い声と、うまくいかない恋

母親の切ない恋愛事情

離婚しても、子どもがいると「恋愛にうつつを抜かしている」、と言われてしまうシングルマザーたち。

どんな立場であれ恋をする自由はあるはずだが、シングルマザーとなるとなかなか思うようにはいかないそうだ。

「周りからのバッシングがすごいんですよ、子どもがいるのに恋愛なんかにうつつを抜かしてって。シングルマザーは必死に働いて、父親役も母親役もやらないといけないんでしょうか。もう気力も体力も限界です」

ナオコさん(38歳)は疲れた表情でそう話す。29歳で結婚、30歳で息子をもうけたものの、夫の浮気から32歳のとき離婚。現在、8歳になる息子とふたりで暮らす。

「息子が4歳のときだったかな。結婚したいと思った相手がいたんですが、どうも息子との折り合いがよくなくて。それ以来、結婚を考えるのはやめたけど、恋愛くらいしたいと思うこともある。でも、誰かとつきあい始めると近くに住む親やきょうだい、友人までもが『母親なのに恋愛するなんて……』と意見してくるんですよね。母親はふつうに恋愛してはいけないの?」

平日はフルタイムで働くナオコさんだが、極力、定時で帰って子どもとの時間を大事にしている。土日も子ども優先だ。そんな生活の中で、恋愛のひとつくらいしても誰が非難できるだろう。
 

離婚後でも、月1度でも非難され……母親は“女”ではいけない?

離婚後5年経っていて、彼に子どもを紹介してすらいないのに……。

離婚後5年経っていて、彼に子どもを紹介してすらいないのに……。

母親は四六時中、母親でなくてはいけないのか。女である時間をもつことは罪なのか。子どものいるシングルマザーたちの苦悩は、その立場にいない人間には計り知れないほど深い。

「離婚後、10歳と7歳の子どもたちは私と暮らしていましたが、月に1度は元夫のところに泊まりにいくことになっていました。その時間に私は友人と会ったりしていたんですが、あるとき友だちに男性を紹介されて。すごく楽しい時間を過ごしました。その彼から連絡があって、ときどき会うようになったんです」

離婚して5年、40歳になるチアキさんはそう言う。相手は離婚経験者だが子どもはいない。チアキさんは再婚を視野には入れていないので、彼に子どもを紹介するのは控えているという。

「私としては楽しい時間が過ごせればよかった。だけどそれが元夫に知られて、『“そんな女”に子どもを育てられるのか』と言われたんですよ。元夫の両親まで大騒ぎして、親権を取り戻せないかという話にまでなって。私が私の時間をどう使ってもいいじゃないですか。子どもに迷惑はかけてないのに……」

彼女の話を聞いて、びっくりするしかなかった。母親はそこまで神聖でなければいけないのだろうか。

「その場をおさめないといけないので、彼とは別れると言いました。それから3ヶ月くらいは彼にも会えなかった。ただ、彼のほうがすごく理解して支えてくれ、最近また少し会うようになったんですが、それでも誰かが見張っているんじゃないかとびくついている自分がいます。独身になったのだから、恋愛しようが再婚しようが誰かに責められることではないのに。『母親なんだから』と言われると、反論できないんですよね」

なんともせつない実態である。
 

子どもを手枷足枷だと感じてしまう自分も……

こうなると、自分が自由でいられないのは子どもがいるからだと思うようになっても不思議はない。

「私も一時期、そう思ったことがあります」

マユミさん(45歳)は当時を振り返ってそう言う。妊娠中に夫が浮気したことをきっかけに関係がぎくしゃくし、娘が3歳、彼女が35歳のときに離婚した。その直後、学生時代の元カレに再会してつきあい始めたものの、やはり周りからのプレッシャーは大きかった。

「その結果、元カレと別れることになったんですが、当時は子どもがいるから私は恋愛すらできないんだと、子どもに八つ当たりしそうになったことが何度もありました。そんなとき唯一、味方をしてくれた妹が、よく子どもを遊びに連れ出してくれた。だから虐待しないですんだのかもしれない。妹がいて助かりました」

抑圧が大きすぎると、人は思ってもいなかったような行動に出がちだ。彼女はぎりぎりのところで妹に救われていたのだろう。

その後、マユミさんは考え方を変えた。母親だって人間、恋くらいする。誰に何を言われても気にしないようにしよう、と。それも妹という強い味方がいたからできた決断だった。

現在、マユミさんにはつきあっている男性がいる。

「デートのときは妹が預かってくれます。帰ってくると娘が『ママ、楽しかった?』って。だから『うん、楽しかったよ』というとうれしそうな顔をする。その後、娘とたっぷり話したり遊んだりします。私自身も楽しい時間を過ごすことで娘との時間も充実させたい。娘のせいでしたいことができないと思ってしまったら、かえって娘にもよくないから」

シングルマザーたちは、ただでさえがんばりすぎる日常を送っている。母が女であっていけないはずがない。そもそも「母」と「女」を分ける必要さえないだろう。ひとりの女性の生き方をもっと尊ぶ社会のありようが求められているような気がしてならない。

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