活動的な「健康人」が突然死してしまうリスク

スポーツ後のビールを楽しむ男性

スポーツ、サウナ、ビールなどを楽しむ体育会系の健康人は、病気とは無縁に見えがちです。しかし突然死リスクは他人事ではありません

国民的歌手とも言える西城秀樹氏が急性心不全のため逝去されました。2度の脳梗塞を経験されながらも超人的なリハビリ努力を続け、歌手としてのライフワークを全うされた人生には多くの人が感銘を受け、早すぎる死が悼まれています。同じ病の患者さんたちにも希望を与えた生き方だっただけに、脳梗塞を経験された同世代の患者さんたちの衝撃と悲しみはいっそう深いものでしょう。

西城氏は脳梗塞を起こす前から、水分制限をしながらのサウナなどの日常習慣があったそうで、これらが危険因子になったのではないかと振り返る声なども出てきているようです。

趣味のスポーツなどを活き活きと楽しみ、サウナでひと汗流した後にはぐいっとビールを流し込み、タバコも仲間たちと気にせずに吸う、いわゆる昔ながらの「体育会系」的なアクティブなタイプの方は、病気とは無縁に見えがちですが、見落としがちなリスクもあります。「健康人」の急逝は誰にとっても無関係のことではありません。今一度、健康管理のあり方、多くの人が陥りがちな盲点について、お話したく思います。

スポーツ中の水分制限は、脳梗塞・心筋梗塞の危険因子

以前はスポーツの最中に水を飲むのは悪いことのように言われていました。特に厳しい部活動などでは、水を飲むと根性が鈍る、胃がだぶついて調子を落とす、血液が胃に回って筋肉に行かなくなる、といったことから、水分制限すべきと教えられていたようです。

しかしスポーツの際に水分制限をするのは、急速な脱水を起こすために医学的には危険と考えます。特に夏場の脱水は危険です。脱水の怖いところは、ただ喉が渇くという不快感だけでなく、いわゆる「血液ドロドロ」と言われるような状態になることで、血管内の血液が詰まりやすくなってしまう点です。動脈硬化がありコレステロールや中性脂肪が高い方の場合、それがより起こりやすくなります。血管が詰まればその詰まった部位に応じて、脳梗塞や心筋梗塞などになります。またそうでなくても血管に脂肪が溜まって細くなったり、腎臓を弱らせて機能低下を引き起こします。水分制限を頻繁にやっていると、その繰り返しで全身に徐々にダメージが蓄積していくのです。

昔、プロ野球の放送中に高名な解説者が、夏場のピッチャーは最初の3回ほどで汗をかき切り、以後はあまり汗が出なくなって調子が上がるといったことを話されていたのを思い出します。今なら4回以後は脱水状態に耐えて投球をしていたのだろうと考えられます。試合の後にしっかり食べて水分を補給し、また対象が若く超健康なスポーツマンだったために運よく大きな問題にならずに済んだのだと思いますが、体に良いことではないと思います。

筋肉はスポーツによって鍛えることができますが、内臓、特に腎臓はなかなか鍛えられないものです。脱水で体内の水分が不足した時も、腎臓は律儀に尿を作り、体内の毒素を外へ出そうと頑張ります。そのため脱水状態が続くと腎臓は消耗し、次第に機能低下していきます。腎臓の機能は一旦低下すると戻りづらくなることも忘れてはいけません。

汗をかくこと、汗を流すことの効果・デメリット 

ダイエットのためにたくさん汗をかくように頑張っているという人がいます。汗をかくのが適切な運動の結果で、徐々に体重を落としていくような場合はもちろんよいことですが、汗をかくだけで痩せることはありません。汗として出た水分量だけ一時的に体重は減りますが、汗をかくことと脂肪が減ることは別物だからです。汗をかいた後に一時的に体重が落ちても、必要な水分を飲めば当然、体重は元に戻ります。

以前、「痩せ薬」として販売されていた漢方の中に利尿剤が入っていて問題になったことがありました。その薬を飲むと多量の尿が出るため一時的に体重が減らせ、痩せたと錯覚させていたようです。しかし利尿作用が強いために脱水状態になると、前述のような問題が起こりやすくなり、体にはリスクがあるために問題になったのです。

体の脂肪分を減らしたいと思う場合は、運動や正しい食生活によるダイエットが必要です。汗をかいたり水分摂取量を減らしたりしても、健康的に痩せることはできませんし、健康効果も望めません。

サウナの健康効果・効能と、注意すべき危険性・デメリット

では汗をかく方法の一つとして、サウナはどうでしょうか。サウナは正しく入れば健康によいことがいくつもあります。例えば、体内に「熱ショックたんぱく」や「一酸化窒素合成酵素」ができることで、血管の緊張がほぐれ、血行が良くなったり、体調を良くしてくれたりする効果があります。

ただ多量の汗をかくことから、上記でも解説したような脱水状態にならないよう注意が必要です。サウナに入る前に多量の汗を見越した十分な水やお茶、適宜スポーツドリンクなどを飲んでおくことが安全上勧められます。つまりサウナは健康的にも利用できる反面、強い脱水を伴うことがあるため、リスクもあるという訳です。

またサウナの直後に冷水に浸かるのは急速に血圧を上げるため、心臓が悪い方には危険な場合があります。サウナは個々人の年齢や状態に応じて正しく使ってこそ、健康的な効果があるものだと考えましょう。

やはり無視できないタバコの健康リスク

今は社会的にも大きな禁煙の動きがありますが、それでも喫煙をやめられない方は少なくありません。タバコを吸うと眠気が取れたり、体がシャキッとしたり、気分が良くなったりすると感じるためのようです。これらの喫煙者からすると「タバコの効果」と感じるようなものは、タバコが交感神経を活性化するために起こるもので、言うまでもなく、健康的なメカニズムによって起こるものではありません。

タバコには、ニコチンやタールなどの有害物質が含まれており、これらが肺や胃腸へ入っていくと、そこで吸収されて血中に入り、心臓や血管まで到達します。すると血管が収縮し、血液の流れが悪くなります。有害物質で血栓ができ易くなることも加わり、血管が詰まり易くなります。つまりタバコははっきりと脳梗塞や心筋梗塞のリスクを上げる危険因子なのです。

そもそも交感神経を活性化するということ自体、本来なら休みたいと思っている体を無理やり起こして元気を絞り出させているようなものです。一時的な感覚としては気分がよくなったとしても、いずれは何らかの破綻を体に来す……それがタバコの怖さなのです。

さらには発がん性のある有害物質のため、体のあちこちでがんが発生し易くなります。加えて習慣性・依存性があり、一度タバコが習慣化してしまうと、意志だけではなかなか止められなくなるのも怖さと言えるでしょう。この点では麻薬と同じです。

さらにタバコは肺の中の構造を徐々に壊し、肺気腫や慢性気管支炎などを起こします。いわゆる「タバコ肺」ですね。著者はタバコ肺の末期の患者さんのお世話をしたことがありますが、残念ながら悲惨なものでした。いつも息苦しく、ただ呼吸をするだけで苦痛が伴い、朝も昼も夜も、逃げ場がないのです。そこへ最後には肺がん発生という追い討ちまでかかりました。タバコはできれば禁煙、せめて減煙で、できるところから遠ざけていきたいものです。

世の中には痩せるためにタバコを吸う、逆にタバコを止めると太るからやめられない、とおっしゃる方も多数おられます。タバコは痩せる方向に効くのは事実ですが、それはタバコがそれほど有害であるという証左でもあります。どうしても痩せたいのであれば、やはりダイエットと運動です。ダイエットも穏やかな糖質制限を一部活用すると良いでしょう。糖質制限の簡略なまとめはこちらをご参照ください。

運動・サウナ・ビール・タバコを楽しむ方が注意すべきこと

昔からの楽しみ方、そして体育会的な方には豪快な健康法のように思われているパターンの一つに、スポーツを楽しみ、サウナに入った後にビールをぐいっと飲み干し、そしてタバコを一服……といったものがあります。充実した感じもあり、あぁ、至福のひと時……と感じる方もいるかもしれません。

これらは十分な水分補給のもとでタバコ抜きであれば、医学的にも推奨できますが、水分補給が十分でない場合は、スポーツによる脱水でのリスクもあり、サウナはそれをさらに悪化させます。ビールで一瞬水分が入っても、ビールの利尿効果で飲んだ量以上の尿が出て、ますます脱水になってしまいます。結果として、血液はドロドロになり、腎臓も弱り切ったところへ、体にとっては猛毒でしかないようなタバコが加わることになるのです。血栓が一層でき易くなり、脳の血管の中でできれば脳梗塞に、心臓の血管の中でできれば心筋梗塞や心不全に至ります。いきなりそこまで行かない場合でも、こうした習慣が続けばいずれは体が壊れてしまいます。こうした組み合わせが体に良いもの、健康的なものと信じてしまうと、自分に厳しくストイックで真面目な方ほど、体を徹底して傷めることにもなりかねません。

やはり体を使う楽しみはそのやり方が大切なのです。

■西城氏が提唱された脳梗塞予防5カ条
実際、西城氏も後年、水分をしっかり摂ることの重要さを説いておられます。「医者の言うことは神の声として聞くべきであった」と後悔し、「脳梗塞予防5カ条」を記しておられます。

  1. こまめに水分補給
  2. 冷房は弱めに
  3. 肝に負担をかけない
  4. 気を補う薬や食べ物を
  5. 血液をサラサラにする

いずれも皆さんに実行していただければと思います。4の薬については、医師にご相談ください。医学的観点から少し追加しますと、激しいスポーツや夏のスポーツの時やサウナに入る前などの水分補給は、その状況にもよりますが、小さい紙コップでは何杯も飲んでも不足することが多々あります。尿が少ない、あるいは濃くなる時は脱水、つまり飲水量を増やすべきと考えて良いでしょう。なお脳梗塞の本格予防には西城氏も言っておられたように、医師を活用し、その定期検診と指導を受けることが大切です。特に一回でも脳梗塞を患われた方はまた起こる可能性があるため本気で取り組まれることを勧めます。

定期検診にあたっては上述のことに加えて高血圧、糖尿病、コレステロール、尿酸、不整脈、心臓病、血管病その他様々な原因をまとめてチェックしてもらい、問題をできるだけ抑え込むと、脳梗塞はかなり起こりにくくなります。医者にかかるというのは健康自慢の方々にとって、少々心苦しいところもあると思います。しかしある程度の年齢、具体的には40代以後になると、体力、気力、体能力、運動神経などとは別の意味でからだへのケアが必要になります。元プロ野球選手で皇太子殿下への野球解説も務められた解説者の佐々木信也さんの名言を記します。「昔の健康は財産にはなりません」。

稀代のエンターテイナー西城秀樹氏の訃報からお話を広げ、健康法やその注意点をお書きしました。西城氏のご冥福と、皆さんのご健勝を祈ります。

脱水のリスクなどについては、心臓外科手術情報WEBの「熱中症・脱水
」もあわせてご参照ください。
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