平成30年度(2018年度)の年金額の計算方法について
2018年度の年金額は、どうなったのか見ていきましょう。
今年度の年金額は、年金額改定に用いる名目手取り賃金変動率がマイナス(▲0.4%)で物価変動率がプラス(0.5%)となったことから、新規裁定者・既裁定者ともにスライドなしとされました。つまり、新たに受給する人も現在受給している人も年金額は昨年と変わりません。
また、年金額が据え置きなので、マクロ経済スライドによる調整(本来なら▲0.3%)は行われませんが、今回の改正により、未調整分は来年度以降に繰り越されることになります(キャリーオーバー)。
(1)国民年金編
それでは、具体的な年金額の計算方法を紹介します。まずは国民年金です。
公的年金は社会保障制度なので、保険料を納めることが義務付けられています。そして、一定の受給資格期間を満たした人が、どのような職業であっても受けとることができる年金が国民年金です。国民年金からの老齢年金を老齢基礎年金といいます。
20歳から60歳まで40年間、すべての期間、保険料を納めた人については、今年度は年間で77万9,300円(平成30年度価格)の老齢基礎年金が支給されます。会社員などで厚生年金に加入している人(第2号被保険者)は、厚生年金の保険料全体から支払われており、専業主婦(夫)等の人(第2号被保険者に扶養されている配偶者:第3号被保険者)は、国民年金の保険料を納めてはいませんが制度全体で支払われているため、第3号としての被保険者期間も、国民年金の保険料を納めた期間(保険料納付済期間)となります。
もし、20歳から60歳までの40年間に保険料未納期間などがあったりすると、それらの期間は老齢基礎年金額には反映されません。年金額はその期間分減額され、少なくなってしまいます。このように保険料納付済期間が40年(40年×12月)に満たない場合、年金額は以下のような計算式で求めることができます。なお、年金額の計算式はすべて月単位で計算します。
【老齢基礎年金の計算式(原則)】
保険料納付済月数などがわかり、今後、60歳までの保険料の納付期間がわかれば、老齢基礎年金の年金額の計算は可能になります。特に、50歳未満の人は年1回原則誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」には将来受けられる年金見込額が記載されていないため、計算式を知っておくとよいでしょう。
(2)厚生年金編
会社員や公務員の人が加入する厚生年金からは、年金制度の2階部分にあたる老齢厚生年金が支給されます。受給資格を満たし、厚生年金に加入したことがある人は、65歳から受け取ることができます(生年月日によっては、一定要件を満たせば、60歳から64歳の間でも部分的に受け取ることができます)。
老齢厚生年金は現役時代の収入によって年金額が異なる「報酬比例」の年金です。つまり、入社したときから、退社するときまで(転職した場合は通算)の全期間の給与や賞与(標準報酬月額・標準賞与額)の平均額をもとにして、厚生年金加入期間と給付乗率を掛け合わせて年金額を計算します。
なお、平成15年(2003年)4月に導入された総報酬制により、それまで年金額には反映されなかった賞与が報酬比例の年金額に反映されるようになりました。したがって、老齢厚生年金の年金額を求める計算式は、平成15年(2003年)3月までの加入期間をもとにした年金額と、平成15年(2003年)4月以後の加入期間をもとにした年金額を別々に計算し、合計した額となり、以下のような計算式になります。
式の中にある「平均標準報酬月額」とは、簡単に言うと現役時代の給与の平均です。会社に入社し、厚生年金に加入してから会社勤めを辞めて被保険者資格を失うまでの全期間の給与の平均額です。
また、「平均標準報酬額」とは、平成15年4月以後の総報酬制が導入された後の期間についての賞与も含めた平均です。つまり、給与と賞与を合わせた平均額ということになります。
なお、給与や賞与をそのまま平均してしまうと、平均額は現在価値に比べて低いものとなってしまいますので、過去の給与や賞与にその後の物価の上昇などを考慮した「再評価率」という率を掛けて、現在の賃金水準に再評価した上で平均額を算出します。この再評価率は年代によって細かく設定されています。