中小企業診断士2次筆記試験では、「80分の使い方」が鍵
答案作成プロセスの必要性、理解していますか?
以前、中小企業診断士2次試験の筆記と口述:難易度と対策はでもご紹介したように、2次筆記試験は正解が公表されることもなく、相対評価の要素が大きい試験です。
そのため、2次筆記試験は受験生にとって明確な目指すべきゴールが存在しないことになり、20%前後という合格率以上に難関試験の様相を呈しています。
とはいえ、2次試験の本質を見極めた上で適切な対策を取ることで、ストレート合格などの短期間合格を手にしている受験生は、決して少なくありません。
一方で、1次試験は何度も合格しながら、その受験生活は4年~10年程度と長期化し、なかなか2次筆記試験に合格できない方々もいらっしゃいます。
2次対策として取り組むべきことを3つに大別すると、
- 1次知識の2次試験での使い方をインプット
- 2次筆記試験の特徴や傾向の把握
- 80分で実行可能な答案作成プロセスの構築・定着
となります。
受験が長期化してしまう最大の理由は、答案作成プロセスの構築・定着が不十分になってしまっていることなのです。
2次筆記試験必勝の心構えは「勝てる答案」ではなく、「負けない答案」を作ること
毎年、2次筆記試験の合格率は20%前後で推移しています。
これは「4科目の総得点で上位20%に入れるレベルの答案が作れればよい」ということであり、「トップレベル=高得点」を狙う必要がないということです。
仮に、高得点を取らねば合格できない試験であれば、周りの受験生が書けないような優れた答案を作成できるようになる対策が必要ということになります。
ですが、幸いなことに中小企業診断士2次筆記試験においてはその必要がなく、周りの受験生が書くようなことを全事例を通じて書きさえすればまず合格します。
むしろ、本試験の緊張感の中でノーミスは現実的ではなく、数箇所でミスをしても、それを連発さえしなければ合格できるということが、受験生の再現答案や得点開示請求の分析結果から明らかなのです。
つまり、試験時間の80分で上位20%に入れるレベルの答案を安定して作れるようになることが中小企業診断士2次筆記試験の合格要件であると言えるのです。
2次筆記試験の答案作成プロセスのセオリーは各校で異なる
答案作成プロセスとは、試験時間の80分の中、どのような工程で取り組み、どのような作業をこなして答案を作り上げるのかの具体的な手順を言います。答案作成プロセス自体は、まさに十人十色で、誰1人として全て同じやり方をしているという人はいません。
ですが、受験指導校はそれぞれのメソッドを保有しており、そのメソッドに基づいた答案作成手法を受講生に指導しています。
私自身はTACで合格してTACの講師をやっていますから、TACメソッドという手法に基づいて、プロセスを構築しています。
TACメソッドでは、「80分という限られた時間の中で出題者の意図(何を問うているのか、何を解答させたいのか)を常に正確に把握することはできないであろう」という前提に立ったものです。
他校のメソッドでは、出題者の意図を正確に捉えることに主眼をおいたものもあります。
このように、各校のメソッドの方針は様々であることから、受験生は自分が納得できるメソッドを教えてくれる学校を選択し、そのやり方を徹底的に身に付けることが重要なのです。
答案作成プロセスの一例
先にお話しした通り、80分の使い方やマーカーや線の引き方、記号の使い方といった具体的な作業方法は、人それぞれです。ただし、大まかな作業工程や時間配分に加えて、自分自身の知識やスキルを最大限に活かせるように具体的な作業方法まで決めておくべきです。
下図は、私自身が受験生時代から現在に至るまで採用している80分の基本プロセスです。
私の80分の基本プロセスは、前工程30分と後工程50分に分けており、さらに試験開始30分経過時点(TP)と60分時点(CP)を、タイムマネジメントや進捗状況の確認・調整ポイントとしています。
加えて、前工程の30分でやるべきこと、後工程の50分でやるべきこともそれぞれ明確に分けており、これを徹底しています。
ポイントは、80分を大まかな工程に区分けし、その工程ごとの作業をあらかじめ決めておくことで、いつでも同じやり方で答案を作れるようになることです。
参考までに、各工程についても記載しておきます。
- 設問分析:各設問で問われていることの確認、及び想定できる解答要素の設定、難易度評価と時間配分
- 大枠把握:事例問題の1回目の読み込み
- 全体戦略:設問文と与件本文の根拠の対応づけと、後半50分の取り組み順序・時間配分決定
- 詳細分析・編集:答案作成
したがって、出題者の意図をできる限り捉えて、そこから大きく外さない答案を作るという方針が大原則なのです。
そのために必要なのが、あらゆる事例で合格レベルの答案を書けるようになるためのメソッドを自分自身が使いこなせるような作業レベルに落とし込み、いつでも再現できるようになることなのです。
中小企業診断士2次筆記試験の具体的な作業例
80分という限られた時間の中で、与えられた情報を整理整頓し、1次知識を使って分析し、出題者が求めているであろう解答を書くには、あらゆる作業の積み重ねが必要です。ありがちですが、「なんとなく大事そうなところに線を引く」という程度の作業では、実際の答案作成には活かせません。
私が実際にやっていることを1つだけご紹介すると、与件本文の時系列(例:2000年代、現在、最近、創業時、今後)のチェックをしています。
設問によっては、過去・現在・未来と異なる時代について問われることがあり、ここを外すと致命的だからです。
このように、自分自身の作業について理由を説明できること、すべての作業が安定した答案作成に役立つ意味ある作業であることが重要なのです。