深夜だからこそ出来る個性派ドラマの魅力に迫る!
深夜ドラマとしては異例のseason7放送が決定した『孤独のグルメ』(画像はAmazonより:http://amzn.asia/fXPa7r1)
ゆるい感性が光る『勇者ヨシヒコシリーズ』、食欲の奥深さが心にしみる『孤独のグルメ』、名脇役による国民の宝『バイプレイヤーズ』。ゆるいのに刺激的、大胆なのに特別感なし、深夜なのに胸躍るテレ東ドラマの快進撃はとまりません。他局とはひと味もふた味も違うドラマづくりの根底にある自由な土壌がおもしろさを強化、低予算によるチープ感がウリなのか、視聴率への執着心がイマイチ薄い風土が新しさを生み続けているようです。
視聴率に執着しない→万人受けを狙わない→超個性派で攻める→深夜枠のおもしろさに特化→テレビ東京らしさの成熟……といったところでしょうか。では、胸躍る深夜ドラマの楽しさとは、どんなものでしょう。
視聴者の深夜熱に応えるテレビ東京
ちょっとへこんでいる、ほろ酔い気分、とにかく腹ペコ、深夜にテレビを見る心模様はさまざまですが、共通するのはお疲れモード。そんな時間にドラマを見ながら思考をフル回転するのは正直しんどい。「あらあら」とクスっと笑ってしまうような、小さな心の振りがいいのです。また、忙しいお昼には「ハイハイ」と流していたことや「あぁ、バカバカしい」と気に留めなかったことが、可笑しくてしかたないのも深夜の不思議。どうでもいいことにクククと笑って、穏やかな気持ちで就寝できれば最高です。
そんな深夜ニーズにこたえてくれるのがテレビ東京。たとえば、松重豊演じる主人公の井之頭五郎が仕事先で食事する姿を追う『孤独のグルメ』は2018年4月にseason7が始まる人気シリーズ。登場するのは、贅沢な高級感ある料理ではありません。揚げ物の音、フワッと香る湯気、五感に届くおいしさは小難しいことなく楽しめます。「あぁ、それ!食べたい!」の想いがゆるやかに動く心地よさ、深夜こその楽しさです。
圧巻のオリジナリティー!個性的すぎるヒット作
チグハグ感の完成度が高すぎる!低予算の『勇者ヨシヒコシリーズ』シリーズ第3作目『勇者ヨシヒコと導かれし七人』(画像はAmazonより:http://amzn.asia/b4vJHiP)
2011年にスタート、2016年には第3作を迎えた『勇者ヨシヒコ』シリーズ。山田孝之演じる主人公の勇者ヨシヒコの冒険を描いた壮大"風"のストーリーになぜか胸が高鳴ります。低予算を宣言したドラマのセットや画像加工は最先端と相対する殺風景なものですが、演じる俳優陣の演技は本気度200%。クールな仕上がりのホームページやOP、俳優陣のキメキメの表情、音楽&画像センスは文句なしのかっこよさです。
豪華すぎる敵キャラ俳優陣、ゲームファンじゃなくても夢中になれる呪文やグッズ満載で、低予算なのにゴージャス、殺風景なのに緻密な設定、そのチグハグ感は福田雄一監督をはじめスタッフ総力戦の見せる技、テレビ東京恐るべしです。
親近感がわきすぎる!おじさんたちの本人役ドラマ『バイプレイヤーズ』
『バイプレイヤーズ ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』(画像はAmazonより:http://amzn.asia/exwbB1N)
ドラマの垣根の高さを変動させ、新しいドラマをつくり続けているテレビ東京。緊張感すら感じた山田孝之の『山田孝之の東京都北区赤羽』(2015年)や贅沢なゲスト俳優が本人役で登場する『居酒屋ふじ』(2017年)など、モキュメンタリ―的アプローチもテレビ東京の得意とするところですが、2018年2月にプライムタイムに進出した『バイプレイヤーズ』は、そのテクニックがシンプルに楽しめる作品。日本のドラマ界を支えるおじさん世代の名脇役、遠藤憲一、田口トモロヲ、寺島進、松重豊、光石研、そして今も私たちの心に生き続ける大杉漣が集結し、日本中を巻き込んでわちゃわちゃさせています。渋めの黒いスーツあり、裸あり、女装あり(今シーズン)のザワザワ+トホホの物語は、おじさんたちのエンジョイっぷりで最高潮。こちらも満たされた気持ちになるから不思議です。
挑むより楽しむ姿勢から生まれる人気作
ジャンプ愛に満ち満ちた現在放送中のコスプレドラマ『オー・マイ・ジャンプ!~少年ジャンプが地球を救う~』、演技ヘタを宣言したAKB48による『マジすか学園』シリーズ、本気でギネス記録に挑戦した北海道が舞台の『不便な便利屋』など、ドラマの既成概念を楽しく軽く打ち破るところにも、人気の秘密を感じます。
大人嗜好の『湯けむりスナイパー』(2009年)や続編を望む声も多い『リバースエッジ 大川瑞探偵社』(2014年)など、ワケアリの人生を味わい深く描く大根仁、独特の感性で魅せる『みんな!エスパーだよ!』(2013年)の園子音、絶品のコメディセンスが光る『勇者ヨシヒコシリーズ』、『アオイホノオ』(2014年)の福田雄一といったクリエーターたちの個性的な世界観を実現していることにも注目です。挑む力みよりドラマづくりを楽しむテレビ東京の生命線も、至極の脱力系ドラマを生んでいます。
映画化された名作も!
笑い、アイドル、お色気、アクション……、深夜ドラマならではのエッセンスが効いたドラマづくりが目立つなか、もちろん心にしみる名作もあります。恋愛の悲喜こもごもをギュッと凝縮した森山未來主演の『モテキ』(2010年)と、瑛太と松田龍平がしみじみかつ爽快に便利屋を演じる三浦しをん原作の『まほろ駅前番外地』(2013年)は映画化もされ、今も愛される作品です。
『まほろ駅前番外地』(画像はAmazonより:http://amzn.asia/8gSs2xF)
2011年の月曜22時に放送された、長谷川博己主演の『鈴木先生』はごく普通の中学生たちの生々しさを濃厚に描いた名作。日本民間放送連盟賞などを受賞し、視聴率はふるわなかったものの映画化され話題となりました。
深夜枠以外のドラマにもこだわりが!
1990年代には「12時間超ワイドドラマ」として『新春ワイド時代劇』(1981年~2016年)という超大作を作り続けていたテレビ東京、並々ならぬドラマ愛を感じます。また、2016年に2夜連続で放送した宮部みゆきの『模倣犯』や2017の二転三転に息をのんだ上川達也主演の社会派ミステリー『テミスの剣』など、骨太な作品も見逃せません。2018年の春には、事件を追う新聞記者を描いた竹野内豊主演の『ミッドナイト・ジャーナル』が放送されます。
老若男女、誰もが楽しめるドラマも得意とするところ。治安を守るおじさんたちの活躍を描いた有川浩原作の『三匹のおっさん』や漫画「釣りバカ日誌番外編 新入社員浜崎伝助」のドラマ版『釣りバカ日誌 新入社員浜崎伝助』もシリーズ化した人気ドラマです。
ゆるい=冷めているではなく、熱い想いでドラマをつくっているテレビ東京。新しい感覚でドラマをリードする異端児に、ますます期待が膨らみます。