アドバイス1 貯蓄ペースは現状でも十分
まずは、貯蓄を見ていきましょう。現在の貯蓄ペースは月5万円、ボーナスから100万円ですから、年間で160万円。また、来年には奨学金返済が終了しますので、それも貯蓄に回れば、それ以降は年間175万円。10年後にはご長男の学資保険、12年後には長女の方の学資保険代わりの終身保険を解約すると、それぞれ保険料の支払いがなくなります。対して、児童手当の支給はお子さん15歳まで。それらを考慮すると、ご主人60歳までに、およそ3800万円貯蓄ができますから、今ある貯蓄(投資商品も含む)と合わせて4250万円となります。一方、大きな支出ですが、お子さん2人は現在、8歳と3歳。年齢は異なりますが、大学卒業までの子育て費用(教育費、その他の養育費など、子どもにかかるすべての費用)今後1人1000万円かかるとします。ここから、学資保険と終身保険の解約返戻金、計400万円を差し引くと、貯蓄から捻出する金額は1600万円。
また、住宅ローンの繰上返済を4年後に予定されているとのこと。その返済額500万円があります。
ただし、先の貯蓄ペースは教育費5万円を加算しての収支ですから、1人1000万円を差し引くなら、月5万円貯蓄ペースが上がることになります。20年間で1200万円。結果、今後クルマの買い替えがあったとして、それでもご主人が定年までに計算上は3200万円前後の資金が手元に残ります。これに退職金を加えた金額が老後資金となるわけです。
アドバイス2 「今」を犠牲にするのはもったいない
この試算による老後資金が十分足りるかどうかは断言できません。ただし、現状の生活費から予想される老後の生活費、ご主人が厚生年金であることを考慮すれば、さほど心配することはないと言えます。ご相談文に「自分たちの収入に見合った娯楽費の使い方・比重を教えてほしい」とありますが、金額として20万~30万円、家族での楽しむ予算を増やしてもいいと思います。お子さんも成長すれば、家族全員で旅行に行ける期間は限られています。仮にその期間があと10年あったとして、年間30万円新たに使えば、10年間で300万円。定年後に手元に残る資金から、この金額を差し引いても2900万円。これでも心配するような額になるわけではありません。
いきなり30万円予算を増やすのは、ちょっと気が引けるかもしれません。であれば、徐々に増やしていけばいいでしょう。もちろん、金額をかければいいというものではありません。しかし、「今」という時間が二度と戻ってこないということも事実です。もしも、将来を過剰に心配するあまり、今しかできないことを犠牲しているとすれば、それこそ「もったいない」話です。
予算をアップすることで「日帰りのけちけち旅行」ではなく、2泊、3泊の旅行にする。海外旅行もプラン次第では可能でしょう。そのことで、もっと楽しむことができるなら、あるいはそれを楽しみに毎日を頑張れるなら、それは意味のあるお金の使い方ではないでしょうか。少なくとも、ビペさんの世帯にはそれができるだけの経済的余力があると、私は思います。
アドバイス3 金利の上昇基調を切り替えのタイミングに
住宅ローンの繰上返済についてですが、いただいたデータで試算しますと、期間短縮型であれば6年4カ月が短縮されて、利息軽減額は約176万円(手数料考慮せず、金利は変わらないとする)。一方、返済額軽減型であれば、返済額は7万5000円に減額されて、利息軽減額は約87万円。どらちかが望ましいかと言えば、一般に支払利息の軽減幅は期間短縮型の方が大きくなります。また、現状で貯蓄ができているため、家計における支払額軽減の必要性はさほど高くありません。それよりも、完済時期がご主人63歳から定年前の57歳に短縮できる方が、メリットは大きいと考えます。金利については変動から固定へはいつでも切り替え可能です。繰上返済の時期に限定せず、金利が上昇基調になった時点で切り替えればいいと思います。そのためにも、金利動向は定期的にチェックしておきましょう。
家計管理はしっかりやられています。「切り詰めるところがあれば切り詰めたい」とのことですが、現状のまま今後も維持できれば十分でしょう。しいて言えば、ご主人が医療保険に2本加入していますが、どちらか1本に絞っていいのでは。保険料はさほど高くはないですが、無理に加入にする必要はありません。
また、家計はメリハリです。節約するところは節約し、楽しむべきところは予算を組んで楽しむ。これが継続して貯蓄をしていくコツです。ピペさんはすでにそれができていますが、将来にやや目が向き過ぎている部分があります。例えば、教育資金も、大学の立地によっては仕送り費用が発生します(平均で月8万円前後)。
その分、老後資金が減りますが、それでも大きく不安になるほどではありません。足りないと感じれば、夫婦とも65歳、あるいはそれ以降も働いて収入を得れば、それで対応できるはず。長く社会と関わるのも大事なことです。もっとも効果的な老後対策は、元気に長く働くこと。その意味でも家計管理同様、今から健康管理にも気を配ってください。
ピペさんから寄せられた感想
アドバイスありがとうございました。家計のあれこれを試行錯誤でやってきましたが、大丈夫!と言われてとても安心しました。この調子で将来の貯蓄を増やし、その中で娯楽費をケチらず(笑)のびのびと楽しもうと思います。さっそく、今年の春と夏それぞれ1泊ずつ国内旅行の計画を立てました。また、4年後の住宅ローン繰り上げ返済で迷っていた 部分も明確となり、将来の設計が立てやすくなりました。ありがとうございました!教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武
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