スキューバダイビング

さかなクンがアンバサダー!「国際サンゴ礁年」とは

近年、地球温暖化による海水温の上昇などの影響により、サンゴ礁へのダメージが心配されていますが、私たちひとりひとりが、サンゴについての正しい知識を身につけ、サンゴ礁を守るための行動を起こすことが大切です。皆さんも「国際サンゴ礁年」をきっかけに、サンゴ礁の保全に向けて行動してみませんか?

鴫谷 隆

執筆者:鴫谷 隆

海洋環境問題・スキューバダイビングガイド

国際サンゴ礁年とは

2018年は「国際サンゴ礁年」

2018年は「国際サンゴ礁年」


2018年は「国際サンゴ礁年」ということをご存じですか?これは、サンゴ礁生態系保全の国際協力の枠組みである、国際サンゴ礁イニシアチブ(ICRI)が、1997年、2008年に続き、2018年を3回目の「国際サンゴ礁年」に指定すると宣言したことに起因します。サンゴ礁生態系の価値やそれを取り巻く脅威について普及啓発し、ひとりひとりの行動を促すための世界規模のキャンペーンです。

各国において、政府・民間・学術団体・市民社会のパートナーシップの向上、効果的な管理戦略の実施、持続可能な管理に関する情報共有等を推進することが奨励されています。

国際サンゴ礁年2018アンバサダーのさかなクンとオフィシャルサポーターの皆さん

国際サンゴ礁年2018アンバサダーのさかなクンとオフィシャルサポーターの皆さん


日本でもさまざまな取り組みが計画されており、2018年1月28日に、その皮切りとなる「国際サンゴ礁年2018オープニングシンポジウム」が明治大学リバティタワーにて開催。国際サンゴ礁年2018アンバサダーとして「さかなクン」が任命されたほか、国際サンゴ礁年オフィシャルサポーターとしてPADIアジア・パシフィック・ジャパンやチーム美らサンゴ、三菱商事、コーセーなど13団体が任命され、中川環境大臣より任命書が手渡されました。

今後、国際サンゴ礁年2018の趣旨に沿って、サンゴ礁生態系の素晴らしさや大切さを多くの人に伝えるとともに、その保全に積極的に取り組むことが予定されています。

スキューバダイビング,国際サンゴ礁年

スキューバダイビングの教育機関PADIでは、より多くの人にサンゴ礁の保護の重要性を伝えるべく、2018年の最注目スペシャルティ・コースとして「AWAREサンゴ礁の保護」を設定。2018年2月1日申請分より、2018年12月31日までにコースを受講して申請した人に、国際サンゴ礁年のロゴ入りバージョンの認定カードを発行する


なぜサンゴ礁を守る必要があるのか

サンゴ礁は美しいだけではなく、私たち人間の生活にとっても非常に大きな役割を果たしています。なぜサンゴ礁を守ることが大切なのか、その理由として以下のようなものが考えられます。

●二酸化炭素を吸収、酸素を供給する「海の森」
サンゴの大きな働きのひとつが「二酸化炭素を吸収し、酸素を供給する」というもの。これが、サンゴ礁が「海の森」とも呼ばれる由縁ともなっています。サンゴはポリプと呼ばれる部分の細胞内に「褐虫藻(かっちゅうそう)」と呼ばれる植物プランクトンを共生させており、その光合成によって二酸化炭素を吸収、酸素を供給しています。

その量は、陸上の木を上回るとも言われており、さらにはサンゴ自身も二酸化炭素を吸収して、石灰質の骨格を作っています。「地球温暖化」の原因とされる二酸化炭素の削減のために、サンゴ礁は欠かせない存在といえます。

●「海のオアシス」として、多くの生き物のすみかに
サンゴ礁は「海のオアシス」とも呼ばれており、その豊かな生態系に起因しています。通常、サンゴ礁のあるところは、透明度が高い=プランクトンなどの栄養分が少ない(貧栄養)エリアなのにもかかわらず、海の中で最も生物が集まる場所となっています。

というのも、前述のようにサンゴ内の褐虫藻は光合成によって酸素を供給しますが、そのほかにも栄養分となる炭水化物やタンパク質などの有機物をつくり出しています。この栄養分は、サンゴが自分で使用するほか、余ったものは海中に流れ出して、小さな生物たちの栄養分に。つまり、食物連鎖の底辺にサンゴがいることになり、そこに豊かな生態系がつくられるのです。

また、枝状やテーブル状など複雑な形をつくり、しかも硬い骨格を持つサンゴは、生物たちのすみかとして最適。サンゴの陰、隙間、裏側、穴など、さまざまな場所にすみかがつくられており、多種多様な生物を観察することができます。実に6万種類以上の生物がサンゴ礁で観察されているといわれています。

サンゴ礁,海のオアシス

「海のオアシス」と呼ばれるサンゴ礁


●豊かな漁場となる
上記のとおり、サンゴ礁にはさまざまな種類の生物が集まります。人間にとって、そこは重要な漁場となります。

●海岸を取り巻く「防波堤」の役割を果たす
海岸を取り巻くサンゴ礁は、地震による津波や台風による高波による被害を抑える、天然の防波堤としての役割も持っています。モルディブでは、1kmの防波堤を作るのに1200万ドルかかったそうですが、これは見方によれば、1kmのサンゴ礁に1200万ドルの価値があるということです。

サンゴ礁の価値を貨幣単位で表すことには、いろいろと議論の余地がありますが、サンゴ礁の重要性を表すひとつの指標といえるのではないでしょうか。

●観光資源として大きな恵みを与えてくれる
数多くの生物がすむ水中が、ダイバーにとって最高の環境であるのはもちろんのこと、南の島らしい白砂ビーチもサンゴ礁からの贈り物。ブダイなど一部の魚は、サンゴのポリプを骨格ごとガリガリと食べてしまいますが、消化できなかった骨格はフンとして排出されます。そのフンをゴカイやナマコが食べることできれいになり、白砂ができ上がるのです。

サンゴ礁,ビーチ

白砂のビーチに囲まれた美しい島も、サンゴ礁からの贈り物


●環境をきれいにする役割もある
サンゴ礁にすむ生物が、流入してくる有機物を摂食することにより、その量が減少し、水質や低質の浄化につながります。

●地球の環境の指標に
サンゴの「白化現象」に代表されるように、地球の環境の指標としても利用できます。また、サンゴの骨格から、過去の気候の変動などが調べられ、研究上でもおおいに役立ちます。

私たちにできることは?

サンゴ礁保全のためにできることは、まずはサンゴについて「知ること」。いきなり行動しようとするのではなく、サンゴについての正しい知識を身につけることが大切です。そのうえで、自分に何ができるかをきちんと考えて、行動するようにしましょう。

私たちが参加できる行動にはさまざまなものがあり、温暖化によるサンゴ礁へのダメージを減らすために「COOL CHOICE」で提唱されているような温室効果ガス削減に向けての行動を実施したり、ダイバーであれば、サンゴの植え付けなどのボランティアに参加してもいいし、サンゴを観察してデジタルカメラなどで記録し、資料にするのもいいでしょう。

サンゴ礁の保全を目的とした募金に協力するという方法もあります。また、「国際サンゴ礁年2018」のFacebookページでも、さまざまなイベント情報が発信されていますので、チェックしてみてはいかがでしょうか。どんな小さなことでもかまいませんので、皆さんもぜひサンゴ礁の保全に向けて行動していきましょう!

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