高視聴率ドラマから考える、私たちが今観たいドラマとは?

高視聴率を取るドラマって一体どんなドラマ?

テレビ不況と言われる中、高視聴率を取るドラマとは一体どんなドラマなのか?

万人受けしない、視聴しにくい時間に放映されるなど、面白いドラマが高視聴率につながらないケースはよくあります。しかし、つまらない・面白くないドラマが高視聴率をキープし続けることもなさそうです。では、視聴率の高いドラマが、私たちの観たいドラマなのでしょうか。

近年の高視聴率だった人気ドラマを中心に「私たちが観たいドラマはどんなものか?」を考えてみました。
 

観たいのは、登場人物の生き方

かつて、憧れの海外の風景や流行りの服、おしゃれなインテリアを映し、トレンド情報のツールとしてチカラを発揮したドラマ。今もチェックすることはあっても、それを目的に最終回まで見続けることはありません。また、イケメン俳優が主演でも、つまらなければ最終回まで観ないでしょう。私たちが観たいのは、あくまで物語なのです。

性別や年齢に関係なく生き方が多様化している現在、登場人物たちがいかに生きるか、追い込まれた状況でどんな選択や判断をするのか、そこが興味深いところ。徹底的に描いてほしいところです。

平均視聴率20.7%の人気シリーズ『ドクターX~外科医・大門未知子~』(画像はAmazonより:http://amzn.asia/cYHBgF9 )

平均視聴率20%超えの人気シリーズ『ドクターX~外科医・大門未知子~』(画像はAmazonより:http://amzn.asia/cYHBgF9

ドクターX~外科医・大門未知子~』(2017年の第5シリーズの平均視聴率20.7%、以下平均視聴率) で、ぶれない生き方を貫いた大門未知子(米倉涼子)、『半沢直樹』(2013年/29.1%)で組織に対し力強く奮い立った半沢直樹(堺雅人)、『HERO』(2014年の第2期/21.0%)で自由にやわらかく事件に臨んだ久利生公平(木村拓哉)、登場人物の生き方や考え方に心が動いたドラマは確かに人気がありました。
 

観たいのは、プロの技が光るドラマの総合力

どんなに実力のある俳優が演じても、物語がまったく面白くなければ視聴者は離れます。どんなに物語が面白くても、時代考証があやふやだったり、セットや服装に違和感があったり、興醒め要素が散乱しても視聴者は離れます。

池井戸潤原作の『陸王』も2017年を代表するヒット作となった(画像はAmazonより:http://amzn.asia/hhWdbgI)

池井戸潤原作の『陸王』も2017年を代表するヒット作となった(画像はAmazonより:http://amzn.asia/hhWdbgI

大ヒットした『陸王』(2017年/16.0%)は、原作の面白さ×脚本のエネルギー×演出のこだわり×俳優たちの情熱、すべての要素が結集した大作。陸上部のユニフォームやマラソン大会の運営まで、徹底的にこだわり、すべての要素に情熱が注ぎ込まれることでリアリティを帯び、壮大な物語はエンターテインメントとなるものです。

最近は脚本への注目も顕著。『東京ラブストーリー』(1991年/22.9%)や『最高の離婚』(2013年/11.8%)など坂元裕二作品に根付く言葉の魂や、『逃げるは恥だが役に立つ』(2016年/14.5%)や『アンナチュラル』(放映中)を書いた野木亜希子の洗練された言葉のはこびには、積み上げてきた感性が生きています。雰囲気だけの脚本に視聴者は胸を熱くしません。ここにも高視聴率の理由が見えてきます。

観たいのは、大人の”遊び心”

洒落た台詞や登場人物の粋な心づかい、脇役が主人公になるスピンオフへの展開など、遊び心にあふれた演出も視聴率に結びつきます。大の大人たちの真面目なアタフタが愉快な『ドクターX~外科医・大門未知子~』の機知に富んだアドリブ、難解な事件を前に「実に面白い」と満足する『ガリレオ』(2013年の第2シーズン/19.9%)で見せる湯川学(福山雅治)のマイペース、小ネタのパレード『99.9-刑事専門弁護士-』(2016年のSEASON1/17.2%)など、医療現場や事件現場の緊張感にふと肩の力を抜くセンスに、作品への親近感が高まるようです。

 

観たいのは、共感からさらに一歩、考えさせられる深さ

しかし、遊び心だけでは視聴者の記憶に残りません。高視聴率のドラマが記憶に残るのは、私たちがドラマを観ながら、何かを心に響かせたからです。
様々な社会問題に挑み続ける『相棒』(画像はAmazonより:http://amzn.asia/4kn7hCz)

様々な社会問題に挑み続ける『相棒』(画像はAmazonより:http://amzn.asia/4kn7hCz


社会問題に挑み続ける『相棒』(2016年のseason15/15.2%)は、裁判官制度や社会保障のあり方、情報化社会の闇など、常に私たちに提示し続けています。事件に至るまでの心模様を丹念に描いた『新参者』(2010年/15.2%)は、寄り添うやさしさを教えてくれました。作品に納得したり共感したりしながら、そこから一歩、さらに考えさせられる深い作品に、観たいの気持ちは高まります。

学園ドラマや家族ドラマはダメなのだろうか?

事件ドラマや医療ドラマが目立つ昨今、学園ドラマはどうなのでしょう。学園ドラマを視聴するべき若い彼らはネット世代、見逃し配信などを活用するテレビ離れが著しい世代とも言えそうで、高い視聴率を得難くなっている印象はあります。しかし、大人であっても誰もが「学校」を経験していることから、学園ドラマに共感する視聴者は、どのジャンルよりも圧倒的に多いと考えられます。

ごくせん』(2008年の第3シリーズ/22.8%)や『ROOKIES』(2008年/14.96%)『花より男子』(2007年のリターンズ/21.6%)はブームとなり時代を代表する作品となっています。秀でた数字ではないものの最近では『仰げば尊し』(2016年/10.5%)といった名作も生まれています。学園ドラマの果たす役割は、まだまだあるようです。

また、家族を描いたドラマも数字が出にくい印象はありますが、特異な視点で家族に迫った『家政婦のミタ』(2011年/25.2%)や家族の再生を描いた『フリーター、家を買う。』(2010年/17.1%)など、かつての家族ドラマ=ドタバタとは違うアプローチにリアリティが生まれ、その新しさが支持されました。家族ドラマと呼ばないものの『陸王』で描かれた父と息子の関係には胸が熱くなりました。

視聴率が絶対性を持たないように、ジャンル分けも視聴者にとって絶対ではなくなっているのでしょう。「このジャンルだから観る」ではなく「面白いから観る」なのです。


「みんなが見てる」で、社会はやっぱり盛り上がる!

メディアの複合化と視聴時間の多様化によって高視聴率の獲得が難しい時代、視聴率の意味も疑問視されていることは周知のとおり。しかし、学校や職場で「昨日、感動したよね」「笑ったよね」と明るい話題を提供するドラマは貴重です。

「あの頃、あのドラマで踊ったよね」「泣いたよね」と、みんなの共通の想い出にもなるのもドラマ。高視聴率作品の持つエネルギーに社会が活気づくのも事実です。

視聴者とドラマのいい関係が、今後のドラマを開いていく

人生に補助線を引いてくれるのがドラマ。ドラマの世界を鵜呑みにできないことをわかっている一方、ドラマが視野を広げてくれたり、決心を後押ししてくれたり、塞ぎ込んでいるとき、ふと心を軽くしてくれることを、わたしたちは知っています。視聴者はドラマといい関係を築いているのです。

同じように、ドラマも視聴者といい関係を築き、さらにいい作品をつくってほしいと思います。迎合しすぎると作品はつまらなくなりますが、独りよがりすぎても、つまらなくなる。さじ加減は容易ではありませんが、そこを乗り越え、高視聴率ドラマで社会を盛り上げ、新しい時代をつくってほしいと思います。


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