TMAX530 が再びマイナーチェンジ!これまでの変化
オールアバウトでも2013年、2015年とTMAX530の試乗インプレッションをお届けしてきました。日本でも唯一無二のスポーツコミューターとして人気ですが、ヨーロッパではさらに人気があり年間2万台を超える台数を販売するそうです。これだけの人気車種なのでマイナーチェンジやモデルチェンジが多く、装備もどんどん豪華になってきています。2001年に登場したTMAXは2013年にモデルチェンジされ、この段階では快適装備はあまり追加されていませんでした。しかし2015年にマイナーチェンジされると、LEDのヘッドライト・スマートキー・12VのDCアウトレット(ソケット)が追加され日常的な使いやすさが充実。2017年には更にモデルチェンジし装備が充実しました。
今回試乗インプレッションするのは2017年にモデルチェンジした最新のTMAX530です。2013年、2015年と試乗インプレッションをお届けしてきましたが、過去のモデルと比べて走行性能はどうか? 追加で装備された詳細は? 一週間都内の通勤で試乗したインプレッションをお届けします。
2017年モデルは、更に研ぎ澄まされたTMAX530SXとTMAX530DXがラインナップ
2017年モデルから、スタンダードな装備のTMAX530SXと装備が追加されたTMAX530DXの2台がラインアップされました。DXに追加された装備は、冬場にあると助かるグリップヒーターとメインシートヒーター、高さの調整が可能な電導調整式スクリーンです。ツーリング時に便利なクルーズコントロールも追加されています。ヤマハの車両でグリップヒーターやメインシートヒーターが純正採用されたのは初めてのことです!価格はTMAX530DXが135万円、TMAX530SXは124万2000円です。DXに追加されている装備の内容を考えれば妥当な金額ですが、クルーズコントロールや電動調整式スクリーンは長距離ツーリングなどに行かないのであれば必要ないかもしれません。
TMAX530はモデルチェンジ前と何が変わった?
2017年モデルのTMAX530ではかなり大幅な変更がありましたが、わかり易いところではスロットルの制御をアナログなワイヤー式から電子制御に変更している点です。また電子制御スロットルに変更したことでパワーモードの選択と濡れた路面や未舗装路などでスリップするのを緩和させるトラクションコントロールも実装しています。更に今回徹底して行われているのが軽量化です。まずメインフレームは新設計アルミフレームを採用。タイヤサイズは変わらないもののリアホイール幅が狭くなり、軽量なタイヤが採用されました。結果的にスタンダードな装備のTMAX530SXは前モデルと比べて7kgの軽量化に成功しています。
前モデルから採用されたスマートキーも使い勝手が良くなっています。以前はガソリン給油時にはスマートキーに格納されている鍵を出してガソリンタンクの鍵穴に差し込まなければいけませんでしたが、今回のモデルからスマートキーを持っていればタンクのところのボタンを押してタンクキャップを開閉できるようになっています。こういったポイントは地味ながら日常的に使う部分なので歓迎したいところです。
TMAX530DXの装備の使い勝手をチェック!
今回はTMAX530DXをお借りしたので装備の使い勝手をチェックしてみました。まずグリップヒーターですが、社外品のグリップヒーターと違いグリップの径がほとんど太くなっていないため握り辛さがありません。暖かさは3段階の調整が可能で気温が一桁台の朝晩の通勤で試乗しましたが、一番弱いモード1ではあまり暖かさを感じず、モード2だと比較的暖かいもののブレーキレバーの操作が多い街中では指先が冷たく感じることがありました。モード3はかなり暖かいので真冬は3を使うと良いでしょう。
メインシートヒーターは正直あまり必要性を感じませんでした。というのもこの時期はズボンの下に防寒インナー、更にズボンの上にはオーバーパンツを履いているので熱の伝わりが悪く、冷える指先に比べてシートと接触しているお尻はあまり冷えないのです。
電導調整式スクリーンの効果は強烈でした。最も高い状態にするとヘルメットの上まで風が抜けていくようになり体全体にあたる風が緩和されるため長距離ツーリング時には心強い味方になりそう。また試乗中に雨に降られることがありましたがジャケットにあたる雨もかなり緩和されてた印象です。
シート下も比較的広く確保されておりフルフェイスのヘルメット一つはラクラク収納可能。更にレインウエアなどを追加で入れてもまだまだ物を入れるスペースはありそうです。高速道路で試乗した際にクルーズコントロールも使ってみましたが、操作も難しくないので直感的に使うことができました。やはり長距離を走るのであれば、高いポジションにスクリーンを調整可能なクルーズコントロール付のTMAX530DXが良さそうです。
TMAX530DXの足つき性は?
TMAX530DXのシート高は800mm。数値的には特別高いわけではないのですが、シート幅が広いので数値よりはかなり高く感じます。またTMAX530DXはシートの前側のカウル部分にはシートオープンと給油口を開けるボタンのユニットが、その前にガソリン給油口があります。このボタンのユニットの部分にはシートとの段差がなく、シルエットは綺麗なのですが信号待ちで止まる際に少し前に着座位置がずれるとユニットの上に座る形になります。プラスチックの上に座る形になるので座り心地は悪いですし、足つき性もよくありません。
TMAX530DXのリアサスペンションは固め
もともとスポーツコミューターなので足回りは若干固めではあるのですが、ライダーが跨ってもほとんど車体は沈み込みません。ヨーロッパで絶大な人気を誇るバイクなので、ヨーロッパの人の体格が基準になっている可能性もあります。走ってみても若干硬く感じますが、TMAX530DXは初期の沈み込み量を調整するプリロードの調整が可能です。スプリングプリロードは7段階に調整可能で新車出荷時は真ん中の4になっているようです。車載工具を使って一番柔らかい状態にするとライダーが跨っても相変らずあまり沈み込みませんが、走行中の動きはかなりしなやかに動くようになりました。調整時はサイドスタンドではなくセンタースタンドで車体を立てた方がよいでしょう。TMAX530DXのサスペンションは更に硬さの調整機構として伸び側減衰力の調整ができます。プリロードだけでは満足のいく調整が出来ない場合マイナスドライバーで調整できるので試してみるとよいでしょう。
パワーモードの変更で全く違う動きに
2017年モデルから追加されたパワーモードは、TモードとSモードの二種類から選択することが可能です。Tモードは市街地での扱いやすさ、Sモードはスポーティーな走行フィーリングを重視したモードです。Sモードで走行してみると今までのTMAX530同様にアクセルを少し開けるとエンジンの回転数が一気に上がります。高回転を使って機敏に加速するのがTMAX530のアイデンティティとも言えます。しかしTモードに入れてみると回転の上がり方が穏やかになり、250ccのスクーターのような加速感に。
パワーモードと同時に実装されたトラクションコントロールはスリッピーな路面などで滑るのを緩和させる効果があるので、穏やかなTモードとトラクションコントロールを組み合わせれば気温が低い日や雨の日の走行にも安心感が得られそうです。
走りの幅が広まったTMAX530DX
TMAX530に乗っている知人が「快適装備が追加されてTMAX530は軟弱になった!」と発言していました。今回試乗してみましたが、軽量化されたことや電子制御スロットルが導入されたことで走りも進化しています。そういった意味ではTMAX530SXは快適装備も追加されておらず先代モデルと比べて7kgも軽量化されています。純粋に走りを楽しみたい人は軽量化されたTMAX530SXを選べばよいし、スポーティーで快適なスクーターが欲しいのであればTMAX530DXを選べばよいでしょう。
誤解を恐れずに言えば、走りの本質的な部分は2013年に試乗したモデルも2015年に試乗したモデルも今回試乗したモデルも大きく変わっていません。徐々に研ぎ澄まされてきただけです。個人的なイメージとして、TMAX530がスポーティーな大型排気量のスクーター。スズキのスカイウェイブ650は快適装備が充実した大排気量のスクーターという印象がありました。しかしTMAX530DXが追加されたことで快適な大型排気量のスクーターの選択肢が増えたといえます。快適グレードを追加してきたTMAX530DX。今後の進化が楽しみです。
TMAX530DX関連リンク
TMAX530DXのエンジン音やマフラー音はこちらでご確認下さい。2015年モデルのTMAX530試乗インプレッション
スカイウェイブ650の試乗インプレッション