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朝ドラ『わろてんか』低視聴率はキャラの薄さが原因?

イマイチ視聴率が盛り上がらない朝ドラ『わろてんか』。問題の一つにヒロインを中心にキャラが薄いことがあります。その原因は経営する会社がストーリーのメインになりすぎたからだった?

黒田 昭彦

執筆者:黒田 昭彦

ドラマガイド

視聴率がイマイチ盛り上がらない『わろてんか』

連続テレビ小説、朝ドラの『わろてんか』がイマイチ盛り上がりません。関東大震災が起きた第15週までの平均視聴率を近年の朝ドラの平均視聴率と比較すると『まれ』よりはいいけど『べっぴんさん』以下という微妙なレベル。その原因について考えてみました。

 

問題点1.キャラが薄い

原因としては続きが気にならないストーリー、ギャグがすべっているなどが指摘されています。ガイドが気になるのはキャラの薄さ。
主人公・てん(葵わかな)と、夫・藤吉(松坂桃李)undefined(画像はAmazonより:http://amzn.asia/7vt4Sbp)

主人公・てん(葵わかな)と、夫・藤吉(松坂桃李) (画像はAmazonより:http://amzn.asia/7vt4Sbp


ヒロイン・てん(葵わかな)は基本笑ってるばかり。夫・藤吉(松坂桃李)は序盤、芸はつまらなく米屋の若旦那としてもダメと意外性がありました。しかし寄席経営に乗り出してからは悩みながらも順調。人間的に成長したというよりはストーリーの都合上成功しているだけという感じです。

伊能栞(高橋一生)も『あさが来た』の五代友厚(ディーン・フジオカ)的ポジションが期待されましたが、てんとの関係はいつまでたっても微妙なまま。藤吉が死んでこれからでしょうか。

おもしろいのは風太(濱田岳)、トキ(徳永えり)、リリコ(広瀬アリス)の三人。2017年11月18日(土)の次週予告で濱田岳・広瀬アリスが『釣りバカ日誌』的かけあいをしたところが、本編外ながら『わろてんか』で一番笑えたところでした。

問題点2.現実とドラマの差

モデルとなった吉本興業の創業者の夫妻は、夫・吉兵衛が外に女をつくったあげく急死してしまい、妻・せいはそれを見ながらなお商売を一心不乱に続ける、もっと強烈なキャラだったようです。それがなぜ『わろてんか』になると変わってしまうのか?

ヒットする朝ドラは違います。『カーネーション』や現在BSプレミアムで再放送中の『花子とアン』ではモデルの女性が不倫していたという事実を形を変えながらも逃げずに描いています。

朝ドラで実在のモデルがいる場合「実際とは異なります」というのが原則です。それでも大きな流れとしては現実とドラマはリンクしているという印象でした。ところが最近は現実とドラマの差が広がっているように感じます。

それに最初に気づいたのは『とと姉ちゃん』。モデルは北海道出身なのに、ドラマは浜松出身だったあたりからです。『べっぴんさん』は女学校卒業がモデルは1936年だったのに対してドラマでは1943年と年の差7歳。『わろてんか』も実家が明石の米屋から京都の薬問屋になるなど、最初から大きく違っています。その後の展開も、モデルの人生にオリジナル要素を入れるというよりは、モデルのエピソードだけを抜き取り主人公にはめこむというように変わってきたように思います。

主人公の仕事の規模が個人から会社へ

なぜそうなったのか? 主人公たちの仕事の規模が大きくなっているからではないでしょうか。朝ドラが8時スタートになってからのモデルがいる場合の職業を放送順に振り返ると、『ゲゲゲの女房』マンガ家、『カーネーション』洋裁店、『花子とアン』翻訳家、とここまではフリーランスか個人商店レベル。

『マッサン』から大きくなり始めて、酒造メーカー勤務から後半は自ら経営。『あさが来た』炭鉱、『とと姉ちゃん』出版社、『べっぴんさん』子供服、『わろてんか』興行とそこそこの会社の経営者になってきます。

それとともにドラマの大きな流れの中心は、モデルの人生から会社の成長に変わっています。『わろてんか』の場合、ヒロインメインのエピソードとして使われているものというと”冷やし飴の入った瓶を氷の上で転がして冷やしていた”ぐらいで、後は吉本興業が発展するエピソードが中心です。


朝ドラはモデルの個性が重要

朝ドラも90年代~00年代はオリジナルの現代もの中心で、その間、長期低落が続きました。ターニングポイントになったのが『ゲゲゲの女房』で、ヒロインの夫のモデルである水木しげるの強烈な個性がヒットの要因でした。それ以降のモデルあり・なしで分類すると

  • モデルあり
『ゲゲゲの女房』『カーネーション』『花子とアン』『マッサン』『あさが来た』『とと姉ちゃん』『べっぴんさん』『わろてんか』
  • モデルなし
『てっぱん』『おひさま』『梅ちゃん先生』『純と愛』『あまちゃん』『ごちそうさん』『まれ』『ひよっこ』

と、どちらも8作品づつですが、平均視聴率はモデルありの方がやや優勢。モデルの個性をヒットにつなげています。

しかしモデルとして使うのが会社のエピソードが中心になったことで、主人公がオリジナルキャラに近くなりました。そのためモデルが持っていた個性がなくなり、平凡な主人公に変わった。それが『わろてんか』の大きな問題だと思います。

 

こう考えると前作『ひよっこ』は、なにも大きなことは成し遂げない普通の女性、みね子(有村架純)がヒロインだったのは挑戦的でした。今後の朝ドラは2018年春からの『半分、青い』はオリジナル、秋からの『まんぷく』は日清食品創業者でインスタントラーメンを発明した安藤百福夫妻がモデル、来年の『夏空』はオリジナルと、交互に続きます。今後の朝ドラのヒロイン像にも、引き続き注目です。
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