絶滅しなかったビッグネイキッドモデル、CB1300SF
2017年は排気ガス規制が変更され、沢山の人気モデルがカタログ落ちしていきました。その中の一台がヤマハのXJR1300。丸いヘッドライトの伝統的なネイキッドデザインを採用した排気量の大きなバイクとしてはカワサキ・ゼファー1100やスズキのGSX1400なども該当しますが残念ながら2008年の排気ガス規制強化によってカタログ落ちしています。
XJR1300やCB1300SFは2008年の排気ガスの規制強化にも対応しカタログにラインナップされていましたが残念ながらXJR1300今回の排気ガス規制に対応せずカタログ落ちしました。そうなると最後に残されたCB1300SFの動向が気になるところですが、2017年10月19日に排気ガス規制に対応して継続販売することが発表されました。
最近リリースされた1000ccに近いエンジンを搭載しているバイクを見てみると車体は軽量化され、シートは薄めでシート高は高め。異型のヘッドライトを採用したいわゆるストリートファイターデザインを採用したバイクが大半をしめています。それに比べるとCB1300SFは全体的に大きめで車重は重く、シートは厚く幅広。シート高は低めで丸目一灯。いわゆる伝統的なデザインと言えます。
規制に対応することで若干スペックにも変更があったCB1300SFを試乗インプレッションしました。
<目次>
2018年モデルのCB1300SFは快適装備が標準に。価格は144万強
過去に販売されていたCB1300SFにはE Packageというバリエーションモデルが存在し、寒い時にありがたいグリップヒーターやETC車載機とETCのインジケーターランプが追加された専用メーターが装備されたモデルでした。2018年からはE Packageというバリエーションモデルは廃止され、これらの装備が標準装備となりました。2016年受注期間限定で販売された2018年モデルに近いグラフィックを採用したCB1300SF E Package Special Editionの価格は137万8080円(税込み)。それに対して2018年モデルは144万7200円(税込み)なので、その差は6万9120円。価格差は決して小さくはありませんが、これから説明する追加された装備を確認すればオトクに感じるはずです。
2018年モデルのCB1300SFはどんな装備が追加された?スペックに変更は?
新しい排気ガス規制に対応する為にエンジンのセッティングとマフラーが変更されています。エンジンは従来型が101PS/7000rpmだったところ、110PS/7250rpmまで出力アップされました。ただし燃費面では実測値に近いといわれているWMTCモードの数値が16.8km/Lとなり前モデルと比べて0.4km/L悪くなりました。CB1300SFのマフラーは2014年モデルから小型になりましたが2018年モデルから2室構造になり従来に比べて重低音の聞いたビッグネイキッドらしい音質となりました。
またマフラーの規制に適合する為に3つのキャタライザーが装備されました。排気ガスを薄める為のキャタライザーは蜂の巣のような構造で白金コーティングが施されたものです。かなり高価なパーツのはずですが、それが3つも装備されているわけですから車体価格を押し上げる一因となっている事でしょう。
前後サスペンションのセッティングも変更されましたが個人的には以前よりも硬くなり街中での快適性は以前のモデルの方が優れているように感じました。ですがCB1300SFはサスペンションセッティングが可能ですので調整してみました。詳細は後ほどお伝えします。
デザイン面と機能面で特徴的な変化を遂げたのはウインカーとLEDヘッドライト。ウインカーはCRF1000LアフリカツインやCB1100RSなどにも装備されているシャープなデザイン。またLEDのヘッドライトはCB1100RSに装備されたものと同じデザインが採用されています。
快適な装備としてはシート下に携帯電話などの充電に便利なアクセサリーソケットが追加されました。ハンドル周りで使うアイテムが充電できないのは残念ですが、シート下は雨が入りにくいのでメリットもあります。
使い勝手を追求したというプッシュタイプのヘルメットホルダーは車体左側に装備されています。最近のバイクには装備されないことが多いだけに後から社外品を購入するユーザーも多いですが、メインキーで操作することができるのはありがたいポイント。
操作をアシストする装備としてはクラッチの操作を軽くしシフトダウン時の急激なエンジンブレーキによって後輪がロックするのを緩和するアシスト&スリッパークラッチも追加されました。クラッチ操作が多い街中を運転するライダーにとってはありがたい装備です。エンジンパワーが増加し、足回りのセッティングが変更されたCB1300SF。体感的にはどう変わったのかレポートします。
CB1300 2018年モデルのサスペンションはスポーティーに。
CB1300SFに跨ってすぐに感じたのが前後のサスペンションの硬さです。思い返してみると2015年にバリエーションモデルのハーフカウル付きCB1300SBに試乗経験があるのですが、この時には前後サスペンション共に柔らかめで初心者ライダーでも問題なく、スポーツ走行を好むベテランライダーはセッティングで硬めにすると良いという取材メモが残っていました。
シート高は780mmと決して高くはないのですが、シートは広めで股が開き気味になります。しかし前回試乗した際はサイドカバーの形状が見直しされたこともあり足つき性の悪さは感じませんでした。
今回試乗した2018年式CB1300SFは若干足つき性が悪く感じました。乗車した際に以前のモデルに比べて前後サスペンションの沈み込みが小さいことが原因でしょう。
CB1300SFのフロントフォークは、プリロード(スプリングの初期沈み込み量)と伸び側ダンパー(縮んだスプリングが戻る際の負荷)の調整ができるようになっており、リアサスペンションはそれにプラスしてスプリングが縮む際の負荷を調整する圧側ダンパーの調整が可能となっています。
前後共に一番柔らかいセッティングに変更して座りなおしてみると、足つき性が良くなりましたが、それでも以前のモデルに比べると若干固めの印象です。ただ街中での試乗でも硬すぎて乗りにくいという程ではありませんでした。
CB1300 2018年モデルはエンジンが更にパワフルになった事でメリットとデメリットが浮き彫りに
2018年モデルのCB1300SFは以前のモデルに比べて9PSも馬力が向上しています。以前試乗した際もパワーに不満はありませんでしたし、特に特性は変わっていないのかな?と思って試乗してみましたが走り出しはかなりパワフルになっています。
アイドリングからアクセルを開けて走り始める低回転時のトルクが以前に比べてかなり増しており、更に力強く加速するようになりました。また、6速までギアをあげて低回転で巡航している際に少しアクセルを継ぎ足した時のトルク感も増しており、今回の馬力アップは実用域でも充分にメリットがありそうです。
ですが、若干アクセルに対して過敏に反応するようになった印象があります。以前のモデルはどの回転域からでもアクセルを開けると過不足無く回転があがりスピードがついてくる印象でしたが、馬力がアップした2018年モデルのCB1300SFは特に低回転時にアクセルを継ぎ足すと過敏に反応して多少ギクシャクする印象がありました。
もともとストップ&ゴーが多い混雑した街中の通勤は1000ccオーバーのバイクにとっては得意なシチュエーションとは言えませんが、以前のモデルだったら特に意識しないで運転できたところが若干気を使わなければならなくなったのは残念です。
前モデルと変わらず低速からしっかりとパワーがあるので、一度ギアをあげたら頻繁にシフトチェンジする必要はなく、街中では3速か4速ぐらいで走行していると調度良いでしょう。
新型CB1300SFは一つ上のギアを使うことで驚くほど街中も快適に!
今回も一週間試乗しましたが、はじめの2~3日は低回転時のギクシャク感がどうにもしっくりこなかったものの一つ上のギアを使うことでギクシャクした動きはなくなり乗りやすくなりました。以前のモデルであれば2速で走行していたところを3速で走行してもノッキングするようなことはありません。走り出して一旦ギアを上げたら街中でもあまり2速まで下げるシチュエーションはありません。3速と4速で大体のシチュエーションは走れてしまいます。せわしくなくギアをチェンジする必要は一切ありません。また一週間乗っているとさすがにアクセルワークにも慣れてきてモデルチェンジによるネガティブな部分はあまり感じなくなりました。
スポーツ走行やツーリングは更に快適に!
個人的にCB1300SFの素晴らしさはどのようなシチュエーションであっても乗りやすいの一言であったと思います。ですが今回のモデルチェンジでは街中の走行は若干苦手になってしまった印象があります。どの回転域からでも少し多めにアクセルを開ければしっかりと加速し、以前のモデルから素晴らしい制動能力だったブレーキシステムもキャリパーのピストン系が変更されてブレーキ効力が向上しました。LEDのヘッドライトで夜間の視認性もアップしましたし、トータル的には間違いなく進化しています。
しかし、私のように街中を走る機会が多いライダーの場合、今回のモデルチェンジを全面的に歓迎することはできないかもしれません。アクセルワークに関してはしばらく乗っていれば慣れますがサスペンションが硬めになってしまったのは残念です。折角調整機能付きのサスペンションを装備しているのですから、もう少し柔らかいセッティングもできるようにしてくれれば良かったと思います。
ですが私の場合、長距離走る場合はハーレー、近場を走る場合は原付2種スクーターと使い分けています。長距離を走る相棒としては、グリップヒーター、ETCが標準で装備されており直進安定性もバツグンなので、CB1300SFは最高のモデルといえるでしょう。
基本的には街中を含めてトータルに使いたいなら2017年モデルまでのCB1300SF、ツーリングやスポーツ走行をメインに考えたいなら2018年モデルのCB1300SFの方がおすすめです。
新型CB1300SFはスポーツ走行やツーリングは更に快適に!
CB1300SFは2018年に規制対応して型式が変更されているのでマフラーを購入する際には対応したモデルを購入する必要があります。モリワキのスリップオンマフラーの場合品番:01810-LK1Q3-00が対応。最近は認証取得していないマフラーを装着していると取り締まりされるケースも増えているので注意が必要です。CB1300SFは最近のバイクとしては車重が重いのでバランスを崩すと立て直すのが大変。自重があるために立ちゴケのダメージも大きいのでスライダーやエンジンガードを装着しておくとよいでしょう。
【関連リンク】
CB1300SFのエンジン音、マフラー音
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