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巨大戦艦ゴールドウイングを通勤に使ってみた

ホンダのフラッグシップ・ゴールドウイングが2018年にフルモデルチェンジ。ダブルウイッシュボーンやデュアルクラッチトランスミッションモデルをラインナップするなど仕様も大きく変更しました。見た目は完全に戦艦級のゴールドウイングを都内の通勤で使ってみました。

相京 雅行

執筆者:相京 雅行

バイクガイド

見ためは超大きい!ゴールドウイング!

ゴールドウイングと著者・・・かなりでっかい

ゴールドウイングと著者……かなりでっかい

毎年30~40台ぐらいは色々なバイクに試乗していますが、今まで試乗したバイクの中で最大級のバイクに試乗しました。ホンダが国内販売するバイクの中で一番排気量の大きい1833ccエンジンを搭載したフラッグシップバイク、ゴールドウイングです。
 
ゴールドウイングは1975年にアメリカで発売を開始すると40年以上ホンダのフラッグシップバイクとして君臨し続け、2018年1月に17年ぶりにモデルチェンジ。6代目のモデルとなりました。
 
6代目ゴールドウイングは前モデルと比べてなんと38kgの軽量化! しかしそれでも車両重量はなんと365kg! 重量車であることは間違いありません。以前に5代目ゴールドウイングのバリエーションモデルF6Cというモデルの試乗経験があるのですが、こちらは装備が簡素化されたモデルだったので車両重量は342kgでした。
 
今回も試乗コースのメインは都内の通勤コースとなります。大陸横断ツアラーを体現したような見た目のゴールドウイングですが、街乗りの使い勝手はどうでしょうか? 一週間通勤で試乗してインプレッションします。
 

ゴールドウイングは三つのバリエーションモデルがラインナップ

リアトランクがつかないのがベースモデルのゴールドウイング

リアトランクがつかないのがベースモデルのゴールドウイング


ゴールドウイングには左右パニアケースが標準装備となっていますが、更にリアトランクを追加して積載性を向上したゴールドウイングツアーというモデルと、オートマのような感覚で運転ができるゴールドウイングツアー デュアルクラッチトランスミッションというモデルが存在します。
ゴールドウイングの左右ウインカーはストップランプも内蔵しており、パニアケースと一体化している

ゴールドウイングの左右ウインカーはストップランプも内蔵しており、パニアケースと一体化している


通常パニアケースというとオプション装備のイメージが強いですが、ゴールドウイングはパニアケースとカウルが一体化しており、パニアケースにウインカーが装着されているので取り外しする事はできません。
ゴールドウイングツアーのリアトランクはパッセンジャーが寄りかかる前提で設計されている

ゴールドウイングツアーのリアトランクはパッセンジャーが寄りかかる前提で設計されている

ゴールドウイングツアーに採用されたリアトランクはヘルメット二個を余裕で収納できる大容量。ただし車重をスペック表で見てみるとゴールドウイングと比べて14kg重くなっています。パッセンジャーが寄りかかる前提で設計されているので、かなり剛性が考慮されているようです。
 
オートマ感覚で運転できるデュアルクラッチトランスミッションは、ギアが通常モデル6速のところ7速になっています。最近ではオートマの車も燃費を向上するためにギアが多段化されており、通常はオートマよりもマニュアルの方が燃費に優れていると言われていますが、カタログスペック上ではデュアルクラッチトランスミッションモデルの方が燃費の値がよくなっています。
 
今回お借りしたゴールドウイングツアー デュアルクラッチトランスミッション(以下ゴールドウイングDCT)はバリエーションモデル中で最大重量の383kgの超弩級バイク! まさに見た目は戦艦です。
 

ゴールドウイングの収納と電装系装備をチェック

ゴールドウイングのLEDは明るいのはもちろんだが造形も美しい

ゴールドウイングのLEDは、明るいのはもちろんだが造形も美しい


まずは全バリエーションモデル共通の装備を確認してみました。ホンダのフラッグシップだけあって、灯火類は全てLEDを採用。フロントのロービームは左右5個ずつLEDが配置され、明るいのはもちろんですがデザイン的にもインパクトがあります。
 
リアはバイクの場合テールとウインカーが別々のユニットになっている事が多いのですが、車のように左右二つに分かれたテールとウインカー一体式で、独特なデザインとなっています。
メインキーはスマートキーを持った状態で右に回すと電源がオンになる

メインキーはスマートキーを持った状態で右に回すと電源がオンになる

鍵はスマートキーを採用しており、メインスイッチを含めてゴールドウイングの様々な装備を使用する際には、スマートキーを持っていないと使う事ができません。
 
左右のパニアケースは標準装備。ハーレーのツーリングモデルなどパニアケースを標準装備としている車種は他にもありますが、基本的には脱着可能となっています。しかしゴールドウイングのパニアケースは脱着不可。カウルと一体化しており、前述したテールとウインカー一体式ユニットも埋め込まれています。
左パニアケース内にETC車載機は搭載されている

左パニアケース内にETC車載機は搭載されている

パニアケースは各ユニットの上にボタンがついており、スマートキーを持っていれば押すだけで開閉が可能。油圧式ダンパーがついているので開閉ボタンを押すとゆっくりと開きます。ETCの車載機は左のパニアケース内に納まっているのでカードを入れたまま車両を離れる際にも安心感があります。またきちんと閉まっていない状態だとメーターパネルに警告が表示されるのも便利です。
 

Apple CarPlayの使い勝手は正直微妙……オーディオも使う人を選ぶかも

ゴールドウイングフロントビュー

ゴールドウイングフロントビュー

ゴールドウイングの目玉機能の一つにApple CarPlayが使えることがあげられます。ゴールドウイングは左右に速度と回転のアナログメーター、真ん中には液晶ディスプレイが配置されています。
 
ホンダのホームページを見るとこの液晶ディスプレイにiPhoneの地図アプリのアイコンや音楽アプリのアイコンが表示されています。今やハンドル周りにスマホを配置してナビとして使うのは一般的と言えますが、ゴールドウイングならタンク上のアクセサリーケース内、他のバリエーションモデルならリアトランクないのUSBソケットに繋ぐ事で、液晶ディスプレイにiPhoneの様々な機能が表示されるApple CarPlayを使用できるので非常に便利です!
 
Apple CarPlayのアイコンを表示させるにはゴールドウイングをヘッドセットとブルートゥースで接続し車体とUSBで接続する必要がある

Apple CarPlayのアイコンを表示させるにはゴールドウイングをヘッドセットとブルートゥースで接続し車体とUSBで接続する必要がある


……と思ったのですが、何故かApple CarPlayを使用するためにはBluetoothヘッドセットとゴールドウイングをペアリングしなければ使う事ができないのです。画面を見ながら走行するのは危険という配慮だと思いますが、この仕様は正直残念です。
iOS12 iPHONE XSで繋げたところ画面がバグってしまった

iOS12 iPhone XSで繋げたところ画面がバグってしまった

また何故かiPhone XSでOSがiOS12の環境下で接続すると画面がバグって使えない状態に。最新のOSはiOS12.0.1なので更新してみたところ問題なく使用することができました。
 
オーディオはさすがにフラッグシップバイクに装備されているスピーカーだけあり臨場感のある音質なのですが、マフラーの騒音規制が厳しくなってきている昨今、スピーカーの音はよいのでしょうか?
 

ゴールドウイングの快適なライディングを支える様々な装備

ゴールドウイング サイドビュー

ゴールドウイング サイドビュー


ゴールドウイングにはライダーの運転をサポートしたり快適にする装備が多数採用されています。まずは電動ウインドスクリーン。電動で高さを無段階で調整可能なので、ライダーの体格に合わせて調度良い位置に調整可能です。
グリップヒーター内蔵だが径は太くない

グリップヒーター内蔵だが径は太くない

 
次にグリップヒーターとシートヒーター。真冬は防寒タイツなどの上にズボンを穿いて更にオーバーパンツを穿くのであまりシートヒーターの必要性を感じた事がないのですが「走り出してみたら意外と寒かった!」と感じる秋口には重宝しそう。グリップヒーターはいくら暖かいグローブをつけていても長時間走行すると真冬は指先の感覚が無くなるぐらい冷えてしまう事があるので、冬場もガンガン走る人にとっては必須装備。更にホンダのグリップヒーターは通常のグリップとほとんど太さも変わらないので操作感も抜群です。
 
アクセルはアナログなワイヤーではなく、センサーで開度を感知するスロットルバイワイヤシステムを採用。いわゆる電子制御スロットルを採用する事で、ライディングモードやトルクコントロールなどの細かい制御ができるようになるのが最大の恩恵。実際にゴールドウイングはツアー、スポーツ、エコノ、レインの4つの走行モードを選択可能で、モードを変更する事でパワーフィールだけでなくエンジンブレーキやトルクコントロールなどの効き具合を変更する事が可能です。
クルーズコントロールの制御は右ハンドルスイッチで可能

クルーズコントロールの制御は右ハンドルスイッチで可能

高速走行時などに便利なクルーズコントロールは1km単位で速度調整が可能。一度設定してしまえばアクセルを開けていなくても同じ速度を保つ事ができます。もちろんブレーキなどをかければ即座に解除されるので安全性は問題なし。アクセルを開け続けることの疲労を軽減します。
 
今回試す事ができなかった装備としてはゴールドウイングDCTではなくマニュアルトランスミッションモデルに装備されるアシスト&スリッパークラッチと電動リバース機構。前者はクラッチレバーの操作を軽くし、シフトダウン時にリアタイヤがロックするのを緩和する機構です。ホンダの他車種にも装備されている機構ですが、大排気量モデルほど通常は重くなるクラッチ操作が非常に軽くなるので便利な装備です。また電動リバースはモーターによってバックする事が出来る装備です。超重量級のゴールドウイングの取り回しには便利な装備といえます。
 

ゴールドウイングツアーDCTにのみ採用された特別な装備とは?

Apple CarPlayを使う際にもUSB接続は必要となる

Apple CarPlayを使う際にもUSB接続は必要となる

ゴールドウイングツアーとゴールドウイングDCTにはリアトランクが追加されており、ヘルメット二個を楽々収納可能です。また中にはUSBチャージャーとスマホを固定しておけるスペースが確保されており、安心して充電する事ができます。
車ではおなじみのエアバッグが装備されている

車ではおなじみのエアバッグが装備されている

更にゴールドウイングDCTには様々な特別な装備が採用されています。インパクトがあるのはエアバッグとウォーキングモードでしょう。前面衝突の際にライダーが前に投げ出される勢いを弱めるというエアバッグは、軽い事故でも大怪我に繋がりやすいバイクにはありがたい装備です。
ウォーキングモードの制御は左ハンドルスイッチで行う。

ウォーキングモードの制御は左ハンドルスイッチで行う。

ウォーキングモードは歩くようなスピードで前進、後退ができる機能です。足つきに関しては後述しますが、私の身長だと足がべったりつかないのでバランスを維持するのが難しく、跨ったまま使用するのは難しかったのですが、基本的にはバイクを降りて押し引きするのに便利な装備と感じました。超重量級のゴールドウイングは平坦な道でも押し引きするのに苦労するので、非常にありがたい装備と言えます。
 

ゴールドウイングの足つき性とは? 燃費はどれぐらい?

ゴールドウイングのシート高はカタログ上745mm。比較的低い数値といえますが、実際に曲がってみると数値から想像する足つき性よりもはるかに悪く感じます。今回の6代目ゴールドウイングはシート形状などが見直され数値上のシート高が上がったものの足つき性は向上したということですが、それでも一般的なバイクと比べるとシートはかなり広いので股が広がり気味に。身長165cmで足短めの筆者が跨ると片足の半分しか地面に設置せず、両足を地面につけるのは無理でした。
 
試乗中に最も使ったライディングモードは「エコノ」。このモードにしていると街中の走行でも比較的7速まで上がります。走行中のエンジンの回転数は常に低く抑えられ、街中メインの今回の試乗でも18km/L程度でした。ガソリンタンク容量は21Lなので400km程度は走行できます。
 

いよいよ出発! ……あぁぁ壁にぶつかる!

青山のウエルカムプラザ地下駐車場でゴールドウイングDCTを受け取り出発! 駐車場から出るには高低差のある坂道をグルグルと上がっていくのですが、アクセルのレスポンスが思ったよりも良かったのでスピードが出すぎてしまい壁に一直線! 焦ってクラッチを操作しようとしましたが、DCTには当然クラッチがありません。リアブレーキで減速してヨタヨタしながら地上に上がっていきました。警備のおじさんは危ない!と思ったに違いありません。
 
ゴールドウイングDCTのエンジンをかけるとデフォルトのライディングモードはツアーになります。このモードが思いのほかスロットルに対してのレスポンスが鋭く、巨体を勢い良く加速させます。初めて試乗する際には注意が必要です。仲間に何も言わずに試乗させたところ、私と同じように加速に驚いていました。
 

ゴールドウイングの乗り心地はまるでソファー

バイクでは採用されるのが珍しいダブルウイッシュボーンサスペンション

バイクでは採用されるのが珍しいダブルウイッシュボーンサスペンション

ゴールドウイングのフロントフォークには一般的なバイクで使われるテレスコピックサスペンションではなくダブルウイッシュボーンが採用されました。車などでは比較的採用される事も多いダブルウイッシュボーンですが、国内全モデルの中で採用しているのはゴールドウイングだけです。
 
乗り心地はというと、路面からの衝撃がほとんど伝わってきません。タイヤ→サスペンション→ハンドルと繋がっている一般的なサスペンションは路面の衝撃をサスペンションが緩和するものの、路面の段差などの衝撃がライダーに伝わります。
 
それに対してダブルウイッシュボーンはハンドルと衝撃を緩和する機構になっているのでほとんど衝撃が伝わってきません。リアサスペンションも比較的柔らかくセッティングされているため、乗り心地はまるでソファー。バイクでこのような乗り心地を感じたのは初めてでした。
 
ハンドリングも決して重くなく、街中でも軽快に走行する事ができます。ただ車体の倒し込みの際に多少「どっこいしょ」という感じはあります。街中の単発のコーナーは苦労しませんが、低速コーナーが続く山道などはゴールドウイングが苦手なシチュエーションの一つかもしれません。
 

街中の走行はエコノ、もしくはレインが最適

ゴールドウイング リアビュー

ゴールドウイング リアビュー

ツアー、スポーツモードはどちらもアクセルのレスポンスがやや鋭い印象です。街中でゆっくり走る際にはアクセルの開け始めに自分が思っていたよりも加速してしまい「おっとっと」となる場面がありました。またツアー、スポーツ共にエンジンブレーキの効きが強め。特に今回はゴールドウイングDCTだった事もあり、変速のタイミングを自分でコントロールできません。加速時はあまり変速ショックを感じないのですが、減速時は予期せぬタイミングでシフトがダウンし変速ショックに驚く事がありました。
 
エコノ、もしくはレインモードだとアクセルのレスポンスもゆったりしているので街中では最適。エンジンブレーキの効きも緩やかなので、ストップ&ゴーの多い街中の走行にも最適。60km/hで巡航する際にアクセルオフしてもエンジンブレーキが効きすぎる事がないので走りやすいのです。これがツアーだとエンジンブレーキが効きすぎてしまい、車速のコントロールがギクシャクします。
 
ちなみにスポーツモードは私の技量だと街中では絶対に使わないレベル。アクセルレスポンスが恐ろしく鋭く、加速し始めると常に高い回転で走ろうとするので、ちょっとアクセルを開けただけでも「ぐわっ」と加速するのです。またアクセルオフすればエンジンブレーキが「がつん」と効くので、メリハリを利かせたスポーツ走行時以外に使うことはないかもしれません。
 

ゴールドウイングなら大陸横断できる!

高速道路を走ってみると直進安定性が恐ろしいほどすごい。驚いたのは前後サスペンションの恩恵で、高速道路の継ぎ目の衝撃がほとんど伝わりません。バイクの運転をしていて高速の継ぎ目の衝撃が伝わってこないのは初めての経験でした。
 
また低重心で車重が重いので、横風に対して強く煽られません。私の通勤ルートは東京ゲートブリッジを横断するのですが、海の上を渡るので風が強い日はかなり煽られて怖い事があります。しかしゴールドウイングなら横風が強い日で多少煽られてもビクともしないのです。更にウインドスクリーンが前からの風を緩和するので加速による風の影響も受けません。
 
これは走っていて楽です。ストップ&ゴーがあまりないシチュエーションなら、ゴールドウイング以上に快適なバイクに試乗した事がありません。
 

ゴールドウイングを選ぶならシチュエーションを考えよう

ゴールドウイングは様々な装備のおかげでかなりマルチな仕上がりになっています。ですが低速走行が続く街中の走行はもちろん快適ではないですし、スポーティーに走ろうと思えば倒し込みはやや重く感じます。
 
ただ長距離ツーリングとなれば水を得た魚。タイヤと直接繋がっていないので多少路面の情報を拾いづらいダブルウイッシュボーンサスペンションは、逆に言えば路面のギャップをライダーに殆ど伝える事がありません。
 
超重量級の車両重量は低重心設計とあいまって抜群の直進安定性を発揮します。エンジンはギアが多段化されたおかげで高速道路を走行しても回転数は2000rpm前後。加速時も力強い加速が可能です。
 
私みたいに通勤にゴールドウイングを使おうなんて物好きはいないと思いますが、ロングツーリングメインなら2泊3日ぐらいなら荷物も収納可能。目的地に着く頃には他のバイクで行くよりもはるかに疲労は軽減されるはずです。
 
僕がゴールドウイングを与えられたら……北海道ツーリングを企画します!
 

ゴールドウイング関連リンク

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