2018年のムードを色であらわすと?
日本流行色協会(以下JAFCA)は、1953年の創立以来、主に日本の産業界に向けて、カラートレンドの研究・発信を行っています。2015年から毎年11月16日に、メディアや一般の人々に向けて「今年の色・来年の色」を発表しています。今回は、JAFCAの広報ご担当・大野礼子さんに、2018年の色「ビジョナリーミント」などについて、詳しくお話しを伺いました。ーー2015年から「今年の色・来年の色=テーマカラー(象徴する色)」を選定し、発表されています。産業界、メディア、一般の人々から、どのような反響がありましたか?
日本流行色協会(Jafca)が選定した、2015年の色「ブルースカイブルー」と2016年の色「アースリングブラウン」
「今年の色、来年の色」の選定は、好まれる色というのはその時代の人々の気持ちと密接な関係があり、いわば時代のムードを反映したものであるということを、多くの方に知ってほしいということから始まりました。
1色に絞るということはなかなか難しいところがあるのですが、「1色でいうとどういう色なのですか」といった質問をよく受けるということもあったので、一般の方向けにはシンプルでわかりやすいものが求められているのだなと感じました。
マスコミや一般の方は、色と時代を結びつけること自体に多少驚きながらも、興味を持ってくださっています。特に一般の方からは「きれい」「おもしろい」とシンプルに感想をいただけるのが嬉しいです。また、カラー関係の方には、色と気持の関係をアピールするこの取り組みを応援していただいています。大きなプロモーションをしているわけではないのですが、3年目を迎えて少しずつ皆様に覚えていただいていると思っております。
「今年の色、来年の色」は生活者が求める気分
ーー2015年の色「ブルースカイブルー」、2016年の色「アースリングブラウン」、2017年の色「リーディングレッド」、2018年の色「ビジョナリーミント」というように、色のネーミングが印象的ですね。色名はどのように決めていますか?2017年の色「リーディングレッド」は、その名のとおり未来を開く力を秘めた色です。
色を選定する時は、色と同時にその時代を象徴するようなキーワードも考えていきます。「来年流行る色はこれ」というのではなく、来年、生活者がどのような気分でいるのか、どのようなものが求められているのかといったものを、色とキーワードで表現するということになります。
例えば2017年のレッドは、「積極的に行動し新しい扉を開くような気持ち」を表現するleading(先導する)という言葉を添えました。言葉があるだけでカラーも変わってみえてきます。
今後期待される社会にふさわしい色「ビジョナリーミント」
ーー2018年の色は「ビジョナリーミント」に決まりましたが、その他にも候補色があったのだろうと思います。どのようなプロセスを経て、「ビジョナリーミント」に決定したのでしょうか?2018年の色「ビジョナリーミント」。混迷を極める時代に風穴を開けて、明るく、爽やかに進んでいきたいという気持ちを込めて選定されました
候補の色は、トレンド傾向を踏まえて、いくつかあがりました。パントン社で選ばれたパープルも実は候補にあがっていましたが、最終的には明るく透明感のある色がいくつか残りました。その中でミントカラーが選ばれました。
2017年を振り返ると、古い仕組みや慣習の中で当たり前のように行われてきたことに、疑問を持つ人が増えているように思えます。今や秘密裏に物事を行うのではなく、若い世代を中心に、世界と自由につながりながら、オープンに新しい仕組みを作ろうとする動きがあります。ビジョナリーミントは、新しいビジョン、軽やかさ、オープンさといった、今後期待される社会に相応しい、希望のある色といえます。
「テーマカラー」と組み合わせる「アソートカラー」
ーー「テーマカラー」と組み合わせる「アソートカラー」も発表されていますね。また、Jafcaは「今年の色・来年の色」のほかに、春夏・秋冬のレディスウェア、メンズウェア、プロダクツ&インテリアのカラートレンドも発表されています。これらの情報をどのように活用してほしいとお考えでしょうか?Jafcaは、「今年の色・来年の色」との組み合わせに適した「アソートカラー」も発表しています。
2018年の色は、テーマカラー、アソートカラーはさまざまな組み合わせで、新しさが出せるようになっています。ライラックなどはちょっと不思議さを加える大事な色になっています。
また通常発表しているシーズンごとのトレンドカラー情報は、さまざまな産業界向けに常に新鮮に見えるカラーを提案しているもので、具体的には商品企画などで活用していただくことを目的としています。
カラーは重要といわれながらも、今市場にない色にトライすることはなかなか難しいと思います。しかし、いつも同じという変化のない状態では、市場もなかなか動きません。トレンドカラー情報を積極的に活用いただければ新鮮さが出せるはずです。
特に最近のカラートレンドでは、色単体というよりも、配色によって新鮮さを出そうという傾向が強くみられます。セオリー通りではない、ちょっと違和感のある配色などにもぜひ、挑戦していただければと思います。?
日本の方がカラーの流行が早い!
ーーJAFCAはインターカラーに加盟しています。仏伊と中心とする欧州のカラートレンドとの相違点をお教えいただけないでしょうか?1963年に発足したインターカラー(国際流行色委員会)は、ヨーロッパを中心にグローバルなカラートレンド情報を発信しています
JAFCAのカラー情報は、コンセプトの部分でも、カラーについても、基本的にはインターカラーの方向性を大きく受け継いでいます。ただ日本国内ならではの今のトレンドの動きがあったり、また日本人に受ける、受けない、また似合う、似合わない、といった点などを考慮しながら、あらためて修正しています。
選定した色のグルーピングを変えたりしていることもあり、それによりより使いやすいカラーグループになることを意図しています。
日本の方がカラーの流行が早いという感触もあり、グローバルなトレンドの流れを基本にしながら、日本に合ったカラーを作っているという感じです。
「パープル系」がグローバルに注目される理由
ーー米国パントン社の「カラー・オブ・ザ・イヤー2018」は、「ウルトラバイオレット」に決定しました。JAFCAは、マナードパープルやフレグラントライラックなど、パープル系をアソートカラーに選定しています。なぜ今、パープル系が重視されるのでしょうか?明らかな答えがない時代だからこそ、アートの創造性はますます重要になってきています
今、パープル系はグローバルに注目されている色域の1つです。パープルは、高貴さとその一方では反逆性という正反対のイメージを合わせ持っており、その不安定さが魅力といえるでしょう。またさまざまなカラーグループの中にアソートされた時に、少し不思議な印象を与える、アクセントにもなりえます。
また芸術性や創造性を象徴するものでもあります。パントン社も述べていましたが、ミュージシャンでもパープルをイメージカラーにしている人が多く見られます。芸術、アートというのは今注目されているキーワードです。
アートとはいつの時代も世の中に問いを投げかけていくもので、明らかな答えがない時代だからこそ、アートの創造性が重要になるのです。
日本の市場ではすでに2017年からパープルやラベンダー系のカラーの流行がはじまっています。昨年人気のピンクのバリエーションとしてとらえることもでき、微妙な色みのピンク、ラベンダー、パープルなどが今後も期待できそうです。
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日本流行色協会「2018年の色」は「ビジョナリーミント」、「パントン・カラー・オブ・ザ・イヤー2018」は「ウルトラ・バイオレット」。日米のテーマカラーは異なりますが、グリーン系とパープル系の組み合わせによって生まれる意外性に着目しています。2018年は、カラーコーディネートによる効果が再評価される1年となるのかもしれません。
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