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「専業主婦は2億円損」は本当か

「専業主婦は2億円損」という本が売れています。この数字は本当でしょうか。調べてみるとやっぱり専業主婦より、女性も働くことが「得」ということが分かります。

山崎 俊輔

執筆者:山崎 俊輔

企業年金・401kガイド

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書籍「専業主婦は2億円損をする」が売れている

橘玲氏の新刊『専業主婦は2億円損をする』がよく売れているそうです。タイトルだけを見ると、専業主婦バッシングの本に見えますが、実際のところは、「働く女性」がこれからのお金の自由、恋愛の自由を得ることにつながり、自己表現の面でも子育ての満足度の面でも苦労するようでいてポジティブになれ、貧困のリスクから逃れるためにも外せない選択肢となっていることを分かりやすくまとめている一冊です。

言い換えると「働く女性」のほうが人生いろいろ得なのだよ、ということをまとめているわけですが、本当にそれくらい差がつくものでしょうか。

今回はマネーハックの視点から同書の指摘をまとめてみたいと思います。
 

今も未来も専業主婦より共働きのほうが経済的に有利

同書は女性の生涯賃金が2億1800万円あることのみを引き合いに「2億稼ぐチャンスを手放している」としていますが、要素をもう少しだけ追加してみましょう。

ずっと会社員で働く女性の場合、
生涯賃金 2億1800万円
退職金 およそ1000万円(中堅企業のモデル額を参考に設定)
国の年金 およそ4000万円(月14万円程度、24年もらうとして)
の合計で、2億6800万円を得ることになります。

これに対して専業主婦の場合、
結婚退職するまでの賃金 約3000万円
(年収400万円弱で30歳頃まで働いたとして)
パートで働いた賃金 約1600万円
(40歳から20年、年収80万円と仮定)
国の年金(月9万円程度、24年もらうと仮定)約4700万円
の合計で約9000万円です。

差額を考えてみると1億7800万円となります。結婚退職したのち、一度も働かず本当に専業主婦のままだと、1億9400万円の差ということになり「専業主婦が約2億円の損」はあながち間違っていないといえます。
 

専業主婦でパートが有利、と思わないほうがいい

今でも多くの人が誤解しているのは「専業主婦でパートをしていてそこそこ稼いだほうが有利になる」というイメージでしょう。

これは比較するスタートラインを間違って設定しているためです。すでに専業主婦である状態から働き始める状態であって、フルタイム派遣や正社員のチャンスもなく(あるいは能力も不足している)、パートしかできなかった場合なら仕方がありませんが、そもそも結婚や出産を機に会社を辞めなかった人、会社は一度辞めたけれど派遣や正社員で再就職した人のほうが確実に老後は豊かになります。

結婚退職後、パートで働いただけの場合、生涯収入は前述の9000万円です。

しかし、再就職で年240万円の派遣で20年働いた場合、生涯収入は約1億3000万円に増えます。100万円前後の壁を気にせず200万円以上稼いでしまえば、税金や社会保険料を引かれる以上に大きな差がつくことになります。

再就職が年収400万円の正社員で20年働いたと仮定すれば、1億6500万円程度に生涯収入が増えました。ちなみに、派遣や正社員で働いた場合、将来の公的年金もアップするので賃金アップ以上の効果が現れます。

「結婚後も働き続け、子育て中の産休・育休だけは取るがそれ以外は正社員で働き続ける」場合、前述の2億6800万円を得るケースになります。どの例でも一生涯の収入を積み上げてみれば「専業主婦でパートが有利」とは言えないことが分かります。

私たちは、100万円を超えたあたりの「壁」が気になったり、税金や社会保険料を引かれることが気になりますが、能力がある人ほどしっかり働いて稼いでおいたほうが有利であることは間違いありません。稼いだ以上に税金や社会保険料が引かれることはないからです。

はっきり言えば、派遣でフルタイムに近く働くか正社員待遇で働けるのなら、「壁」など気にする必要はない、といえます。ちゃんと手取りでも、パートの専業主婦より多くなるからです。
 

上手に夫を巻き込んで、仕事をし続けることが自分も家庭も幸せにする

ただしこうした条件は「夫の家事育児参加」が必須です。家事も育児も妻が100%背負いつつ、夫婦の年収の半分弱を稼ぐのはどう見ても負担が重すぎるからです。

結婚相手探しの段階では、家事ができない相手は断るのがいいでしょう。家事をしない男が育児をする可能性は低いからです。

また、実際に子育てがスタートしたら家事育児に男性を巻き込みます。ガマンして抱え込んではいけません。不満があればキレまくっていいのです。仮に妻年収450万円、夫550万円の夫婦であれば家事や育児の負担を夫にも45%やらせるくらいのつもりでいいのです。

夫婦の合計収入が増えるほど、女性の自由に使えるおこづかいは増えますから、ストレス解消予算も確保できます。

夫婦の合計収入が高いということは、買い物の予算や時々出かける旅行の予算も少し余裕を持った設定ができるということです。

「専業主婦は2億円損」と言われてムッと来た人はむしろ再就職を考えてみたほうがいいと思います。そして専業主婦願望のある人はその気持ちは願望だけにとどめて仕事を辞めないほうがいいでしょう。

時代はもう、共働きを前提としているし、共働きをすることが(大変なこともたくさんありますが)、なんだかんだいって幸せのチャンスを増やすことは間違いないのです。

 

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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