冬だからこその楽しみが待っている京都へ
一年を通じて国内外からの観光客で賑わう京都ですが、冬は底冷えする寒さと雪のイメージが強く、足が遠のきがちという人も多いはず。でも冬にしか見ることのできない風景やスポットも、実はあるのです!今回は、第52回「京の冬の旅」非公開文化財特別公開で公開される2ヶ所の寺院をご紹介します。いずれも知る人ぞ知る隠れた名所で、派手さはありませんが、しみじみとした良さが感じられます。平成30年(2018)年といえば、明治維新からちょうど150年という節目の年。その立役者のひとり、西郷隆盛が注目を浴びています。まずはじめに紹介するのが、西郷隆盛にゆかりのあるお寺です。
西郷隆盛が半年間滞在した「東福寺 即宗院」
紅葉の名所として知られる東福寺の塔頭のひとつ。塔頭とは大寺の山内にある子院のこと。東福寺には20を超える塔頭があり、規模はそれほど大きくはありませんが、どの寺院もそれぞれに違った趣があります。即宗院は東福寺山内の東端にあり、薩摩の守護大名であった島津氏久の菩提を弔うため、室町時代の嘉慶元年(1387)に創建されました。通常は非公開ですが、紅葉時期と、冬季特別公開などの特別な期間のみ拝観が可能です。
慶長18年(1613)頃に再興された山門をくぐると、美しい石畳の両脇に冬になると赤千両、黄千両が鮮やかに実をつけ、一瞬で寒さが和らぎます。
また冬でも苔が青々と生え、境内に寒々しい雰囲気はありません。庭園部分は、島津氏久の菩提寺以前、関白であった藤原兼実の山荘「月輪殿」でした。国宝『法然上人絵伝』に描かれたほか、江戸時代にも山内塔頭随一の名園と称されたそう。
石畳をさらに進み、境内の奥へ。階段を上り、見晴らしのいい高台にたどり着くと、西郷隆盛による「東征戦亡之碑」と、戦没者524名の名が刻まれた石碑が立っています(中には西郷隆盛の弟の名も)。幕末には西郷隆盛や清水寺の勤王僧・月照上人が草庵・採薪亭で倒幕の計画を練ったと伝えられるほか、篤姫が徳川家にお輿入れの前に立ち寄った場所ともいわれています。
本堂では島津家ゆかりの火鉢や重箱、西郷隆盛や徳川慶喜自筆の掛軸といった貴重な文化財が公開され、間近で見学することができます。
史実には記されていない、知られざる西郷隆盛の姿や思いを感じ取ることができる点でも、西郷ファンなら一度は訪れておきたい寺院といえるでしょう。
「東福寺 即宗院」
・住所:京都市東山区本町15丁目
・「京の冬の旅」特別公開:2018年1月6日~3月18日
・公開時間:10:00~16:00受付終了
・休み:期間中無休(法要や悪天候などで拝観不可になる場合あり)
・拝観料:大人600円
・交通:JR奈良線東福寺駅から徒歩14分
・問い合わせ:075-213-1717(京都市観光協会)
織田信長の常宿だった日蓮宗の寺院「妙覺寺」
次にご紹介するのは、こちらも「京の冬の旅」で特別公開される「妙覺寺」。日蓮宗京都十六本山のひとつで、江戸時代建立の荘厳な「祖師堂」には、日蓮聖人、日朗上人、日像上人の三菩薩像が安置されています。絵師として有名な狩野派の菩提寺でもあり、境内墓地には元信、永徳などの墓があるほか、本堂北にある「華芳塔堂」の堂内にある木造多宝塔の扉絵は狩野派の絵師によって描かれています。
またあまり知られていない逸話としては、織田信長の上洛時の常宿でもあり、なんと20回も宿泊したとか!? 対して本能寺は5回のみというのが意外です。
堂内では今回、狩野元信筆といわれる幅約4.6m、高さ約5.9mの「大涅槃図」が特別公開されます。
また、庭園「法姿園」は法華経の中の「諸行無常」の教えである、“あるがままが素晴らしい”を表現したという自然庭園。苔の美しさに思わず目を奪われてしまいます。
庭を見晴らす本堂内では、期間中、画家・塩澤文男氏による、お釈迦様と四天王の巨大仏画の公開制作が行われます。幅約12mに及ぶ大作で、運が良ければ作家の制作風景に出会えるチャンスも! 寺院では大変珍しい試みです。太陽が昇る朝から月が沈む夜まで、1日の流れを5つの仏様で表現した作品で、極彩色のエキゾチックな作風に圧倒されるはずです。
「妙覺寺」
・住所:京都市上京区上御霊前通小川東入下清蔵口町135
・「京の冬の旅」特別公開:2018年1月6日~3月18日
・公開時間:10:00~16:00受付終了
・休み:期間中無休(法要や悪天候などで拝観不可になる場合あり)
・拝観料:大人600円(上記期間外は本堂・庭園が大人500円)
・交通:地下鉄烏丸線鞍馬口駅から徒歩10分
・問い合わせ:075-213-1717(京都市観光協会)
※これらの寺院の敷地内は庭園を除き、すべて一般撮影禁止です。今回は特別に許可を得て撮影しています。
これらの寺院の非公開文化財特別公開は、京都市・京都市観光協会が開催する毎年恒例のキャンペーン「京の冬の旅」のイベントとして開催されます。
参考:「京の冬の旅」
お寺巡りのあとは京菓子と抹茶で至福の時を
妙覺寺の拝観を終えたら少し足を延ばして、季節の京菓子と抹茶でひと休みしたいもの。妙覺寺から歩いて15分ほどにある「俵屋吉富 烏丸店 京菓子資料館」に訪れてみましょう。烏丸店では代表銘菓の「雲龍」をはじめ、季節の和菓子や干菓子、最中といった和菓子を購入できるのですが、併設される「京菓子資料館」もぜひのぞいてみたいもの。
館内には、和菓子職人たちが仕事の合間に丹精込めて手作りした「糖芸菓子」が展示され、魅了されます。大作ともなると数ヶ月かけて製作するとか!? こちらでは、展示鑑賞だけでなく、季節の生菓子と抹茶をいただくこともできます。
「京の冬の旅」開催期間には、限定の季節の生菓子と抹茶がいただける「JR東海」の特別プランも登場。往復新幹線+宿泊or日帰り+「京の冬の旅」対象施設15ヶ所より希望の1ヶ所が拝観できる入場整理券に、3店舗から選べる「限定新作京菓子+お茶セット」クーポン券が付きオトクです。
「俵屋吉富 烏丸店」の場合、1月は「一輪きんとん」、2月は「春東風」、3月は「すみれ」と月替わりに異なる生菓子が提供されるので、月ごとに訪れるのもいいかもしれません。
参考:「そうだ 京都、行こう。」×「京の冬の旅」コラボレーション商品
「俵屋吉富 烏丸店 京菓子資料館」
・住所:京都市上京区烏丸通上立売上ル
・TEL:075-432-3101
・営業時間:10:00~17:00
・定休日:水曜(京の冬の旅特別公開期間中は無休)
・入館料:無料
・交通:地下鉄今出川駅から徒歩5分
※資料館展示は一般撮影禁止です。今回は特別に許可を得て撮影しています。
いかがでしたか? 冬の京都で特別公開の寺院を巡る旅。いつもより静かな冬の京都で、一度体験してみませんか?