中小企業診断士1次試験は7科目のマークシート方式。その合格基準は?
1次試験を攻略するには?
中小企業診断士試験の難易度、合格してわかるその実態でも述べたとおり、1次試験の合格率は20%程度となっています。
中小企業診断士1次試験の目的は、その試験案内に明記されているとおり、「中小企業診断士になるのに必要な学識を有するかどうかを判定すること」です。
つまり、経営コンサルタントとして必要な知識を習得できていることを確認する試験という位置づけです。
経営全般の幅広い知識を保有することが求められているため、受験科目数は7科目で、いずれも100点満点です。
合格基準は「総点数の 60% 以上であって、かつ1科目でも満点の 40% 未満のないことを基準として、試験委員会が相当と認めた得点比率」となっています。
これをシンプルに捉えると、全ての科目において40点以上、1科目平均60点以上取れれば合格できるということです。
合格基準は3つの要素に分解できる
合格基準として明記されている「総点数の 60% 以上であって、かつ1科目でも満点の 40% 未満のないことを基準として、試験委員会が相当と認めた得点比率」を3つの要素に分解すると、以下のとおりです。・総点数の 60% 以上
→ 他資格等保有による科目免除がなければ、通常は7科目受験をすることになるので、総点数で420点(科目平均は60点)
・1科目でも満点の 40%未満 がない
→ 総点数が420点を超えても、1科目でも40点未満(=30点台以下)になれば不合格。これを俗に足切りという
・試験委員会が相当と認めた得点比率
→ 通常、総点数の60%は各科目60点、7科目では420点となるが、受験者全体の得点水準を勘案し、変更となる場合がある。例えば、平成28年度においては、以下の2点の変更があった
- 総点数の59%以上
- 経営情報システムについて4点を加算
以上の合格基準から見ても、目指すべきは1科目平均60点、総点数では、
7科目:420点
6科目:360点
5科目:300点
4科目:240点
3科目:180点
2科目:120点
1科目:60点
となります。
このように、1次試験は絶対評価的な要素が強い試験であると言えます。
全科目で60点を狙うのは得策ではない?
中小企業診断士1次試験は、決して簡単に合格できるものではありませんが、戦略性を持って対策をとるか否かがその結果に少なからず影響を及ぼすことになります。1次試験の7科目は、
・経済学・経済政策
・財務・会計
・企業経営理論
・運営管理
・経営法務
・経営情報システム
・中小企業経営・政策
となっており、あらゆる分野にわたっているため、受験者自身のこれまでの知識や経験が活かされる科目とそうでない科目、学習効率がいいと感じる科目となかなか理解が進まない科目などに分かれるケースがほとんどです。
したがって、全科目で均一に60点を目指すよりも、得意・不得意を踏まえて、現実的に達成可能な科目ごとの目標設定をした上で対策を積むことが、合格可能性を高めることに繋がるのです。
もっとも留意すべき落とし穴は、“足切り”による不合格
多少の苦手科目があっても、他の得意科目でカバーできる点が中小企業診断士試験制度の良いところではありますが、一方で、極端な苦手科目を作ってしまった場合のリスクが大きい点には注意が必要です。1科目でも40点未満を取ってしまった場合には不合格ですから、仮に7科目の総点数で大幅に合格基準を上回る450点を取ったとしても、その中に30点台が含まれていれば、また翌年度ということになってしまいます。
したがって、どんなに苦手な科目があったとしても、40点台後半以上を目標として取り組むことが望ましいでしょう。
科目ごとの難易度の推移にも注意が必要
中小企業診断士1次試験は、科目ごとの相対的な難易度(他の科目と比較した時の難易度)の推移も注目されています。その傾向を掴めるデータとして、「科目受験者数・科目合格者数」が毎年発表されています。
平成29年度の1次試験においては、以下のとおりです。
科目合格者数に試験合格者は含まれてはいませんが、科目ごとの相対的な難易度は把握できます。
科目合格者数がもっとも少なかった「運営管理」は難しく、科目合格者数がもっとも多かった「経営情報システム」は比較的易しかったと捉えることができます。
この科目ごとの難易度も、年度ごとに変化するうえに、科目によって変化の激しい科目と安定している科目があるので、目標設定をするときには過去のデータを参考にしたいところです。
どの年度においても、十分な対策を積んでいても60点以上を得点することが難しい科目が含まれる一方、70点以上の高得点が見込める科目も用意されています。
したがって、合格するために重要なことは、試験時間内に受験科目の難易度を見極められるスキルを身につけて、難易度に合わせた柔軟な時間配分ができるように準備しておくことなのです。
中小企業診断士試験の問題が難しく感じる理由は、単純な基本知識を問う問題が少ないこと
中小企業診断士1次試験は、テキストの丸暗記で合格できる試験ではありません。専門用語知識の有無を試すような空欄穴埋め問題形式は少なく、4つか5つの選択肢の中から「最も適切なもの」や「最も不適切なもの」を選ばせる形式が多いのです。
さらに、文章問題のみならず、図表やグラフを使った問題、ケース問題や会話形式の問題など、出題のバリエーションも様々であることから「なんの知識を試されている問題なのか?」を冷静に判断する能力も必要です。
中には暗記要素の強い科目も存在しますが、読解力や応用力を身につけるためのアウトプット学習を重視した対策を取ることが基本です。
受験者の中には、2次試験に2回不合格して1次試験から再受験する人も一定数含まれますが、その全員がまた1次試験に合格しているわけではありません。
過去に一度受かっていても、試験傾向を踏まえた十分な対策をしないと合格できないのが現実です。
裏を返せば、1次試験の出題傾向を踏まえた適切な対策を取れば、ストレート合格や短期間合格も可能なのです。