副業・複業/副業・複業の基礎知識

副業・複業の本格化―禁止から解禁へ

副業禁止規定により、禁止されることが多かった副業。ただ、人手不足や「働き方改革」の一環として政府が副業(複業)の解禁を推進する動きもあり、解禁に取り組む企業が増えています。この動きについて簡単に解説します。

中野 裕哲

執筆者:中野 裕哲

起業・独立のノウハウガイド

副業の本格化の流れが加速

オールアバウトが発表した「国民の決断アワード2017」のキャリア部門2位に「副業をする決断」がランクインしました。

副業禁止規定があるため、従来はこっそりと隠れて始めるものだった「副業」。それもお小遣い稼ぎの内職的なものが中心でした。

一方、今年に入り、政府では「働き方改革」の一環として、2つの仕事から収入を得る働き方を積極的に提言しています。従来の「副業」の概念と区別するため、こうした働き方を「複業」「ダブルワーク」を呼ぶことも増えました(この記事でも「副業」という言葉を、「複業」「ダブルワーク」の意味を包有した言葉として使っています)。

生産労働人口の減少による企業側の人手不足も相まって、副業を解禁する企業も増え、急速に世の中に浸透してきています。

今回は、この「副業の本格化」の動きを解説します。

副業の禁止から解禁へ

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副業禁止から解禁へ動きが加速している

日本では、従来より多くの企業で副業を禁止し、社員には会社の仕事に集中させる環境を守ってきました。

就業規則の「副業禁止規定」は、リソースを投下したら投下した分だけ成果が上がる経済成長期においては、必要な仕組みだったといえます。

「副業で溜まった疲れにより本業である会社の仕事に影響が出る」「本業側の守秘義務に違反する可能性がある」など、禁止しておくのが無難である、というのもその理由でしょう。

ただ、成熟社会に入った日本では、それらの副業のデメリットよりも、メリットに着目する企業が増えてきています。

オールアバウトが大企業(従業員数300人・資本金3億円以上)勤務のビジネスパーソン対象に行ったウェブアンケートの結果を紹介します。

・「勤務先は副業を認めているか」
「禁止されている」54%
「全面的に認められている」14.8%
「条件付きで認められている」20%

・「副業への興味」
「すでに行っている」34.6%、
「具体的に検討している」23.4%
「興味がある」27.3%
(n=446)

条件付きを含めると約35%の大企業が副業を解禁しており、ほぼ同じ割合の人が「既に副業を行っている」という結果です。検討・興味ありの層を含め85%の人が副業に関心を持っており、大企業勤務者にも副業は身近なものとなっているようです。


副業を解禁する企業側のメリットとは

副業の解禁する企業が着目するメリットには、主に以下の5つがあります。

1. コストのかからない研修
副業を行うことにより、社員が会社の仕事では経験できない幅広い体験をすることを期待できます。例えば、経理部員が営業やマーケティングの知識を必要とする副業を行えば、経理以外のスキルを身につけることもでき、営業社員の気持ちも理解できるようになります。

本業と同じ、または隣接した分野で副業を行うとしたら、副業側で新たに取り組んだことによる知識や体験、人脈などを本業側に持ち帰り、存分に会社の仕事に活かすことも可能です。会社側から見れば、こうしたことをコストゼロで実現できることになります。

2. 人材採用の強化・多様化
副業をOKとすることで、今まではターゲットにしてこなかった優秀な社員を確保することが可能になります。というのも、副業で人材を募集する場合、正社員の他に短時間正社員・契約社員・業務委託などさまざまな形態で柔軟な対応が可能となります。

例えば、他の会社の優秀な人材に手伝って欲しい、人手不足のところをどうしてもリソースが欲しいなどの場合、週2日・3日だけ働いてもらうなどといったことできます。従来の正社員オンリーの硬直化した採用戦略では実現できなかった採用で多様な人材を確保できるのです。

副業を行う労働者側から見れば、自分のスキルを広く本業以外にも提供することにより、プラスアルファの収入が期待できます。今後は、副業を認める企業に限定して就職活動・転職活動をする、といった動きも出てくるでしょう。

3. 人件費コストの抑制
副業を認めるということは、逆にいえば「本業側で生活の糧について全ての面倒をみる必要がなくなる」ということです。優秀な人材に必要なリソースを提供してもらいつつ、他でも稼いでもらえば、人件費の面で抑制できる可能性もあります。従来から副業を認めてきたベンチャー企業や中小企業が発想したことです。

4. 離職防止
ここのところの人材不足感を考えると、社員の離職防止は企業にとって非常に重要なテーマです。「この会社ではやりたい仕事を任せてもらえない」「もっと給料やボーナスを増やしたい」といった社員の不満も、副業で埋められる可能性があるのです。人事が重い腰を上げて取り組み始めた理由のひとつでしょう。

5. 本格起業への助走期間として
労働者側から見たメリットとしては、思い切って会社を辞めて本格的に起業する前に、ひとまず副業としてやってみるという選択肢ができることです。つまりは「本格起業への助走期間」としての副業です。

ガイドの起業相談でも、本格的に起業する前に、「助走期間として、ひとまず副業したい」という内容が増えています。本業である正社員としての給与を得ながら、お試しで始め、副業からの収入が本業の収入を超えたら会社を辞めて本格起業する、という方法です。

大手企業の会社員など、その地位や給料などを全てかなぐり捨てていきなり起業することに抵抗がある人が、こうした考えに至るケースが多いように感じます。

大企業の社員が続々と副業に挑戦

まだまだ副業を解禁する大手企業が大半とはいえませんが、じわじわと増えている、というのが現状でしょう。優秀な人材を確保するための採用の差別化という観点からも、急速に増えていくのは確実かと思います。

実際にガイドとしても、副業を行う会社員のサポートやコンサルティングをサービスメニューとして提供を始め、大手企業の会社員を中心に、日々の無料相談や実際にサポートするクライアントが増加しています。

法律や社内の就業規則など制度面が追いついていないこともあり、一足飛びにとはいきませんが、世の中の流れとして、副業が当たり前になるのは、遠い未来の話ではありません。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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