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なぜ『ドクターX』は人気シリーズになったのか?

『ドクターX ~外科医・大門未知子~』『相棒』『科捜研の女』とシリーズものが好調なテレビ朝日。なぜこんなにシリーズものが得意なのか? その中でも『ドクターX ~外科医・大門未知子~』がエースなのはなぜ?

黒田 昭彦

執筆者:黒田 昭彦

ドラマガイド

『ドクターX ~外科医・大門未知子~』(以下『ドクターX』)は初回、第5回と20%越えの2017年民放ドラマ最高視聴率をマーク。さらに二番手には『相棒 season16』がつけ、『科捜研の女』も堅調。テレビ朝日のシリーズものが好調です。
『ドクターX ~外科医・大門未知子~』第3シリーズ

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シリーズものが好きなテレビ朝日

他局と違って、テレビ朝日ドラマはシリーズものが中心にあります。2017年放送されたテレビ朝日以外の連続ドラマでシリーズものというと、現在放送中『コウノドリ』、9年ぶりの『コード・ブルー ―ドクターヘリ緊急救命―』、テレビ東京『三匹のおっさん』『釣りバカ日誌』『警視庁ゼロ係 ~生活安全課なんでも相談室~』、それに2017年11月末スタートの『精霊の守り人 最終章』ぐらい。

それに対しテレビ朝日は現在放送中の三作に加えて『警視庁捜査一課9係』『遺留捜査』『緊急取調室』『警視庁・捜査一課長』と多数のシリーズものを抱えています。

なぜテレビ朝日はシリーズものが多いのでしょうか。それは、東映との関係によります。東映はテレビ朝日開局(当時はNET)以来の大株主。そのため昔から東映制作の時代劇や刑事ドラマが多く放映されていました。この2ジャンルは一話完結の長期シリーズにしやすいという共通の特徴があります。これが現在も続いて、今年放送したシリーズもの7作中5作が東映制作というわけなのです。


次代のエースと期待された『ドクターX』

ただでさえシリーズものが好きなテレビ朝日ですが、『ドクターX』を人気シリーズとしなければいけない理由がありました。それは、それまでのエースだった『相棒』がピークを過ぎたことです。『相棒』のシーズン別平均視聴率を見ると20%を越えた神戸尊(及川光博)の2年目、2010~2011年放送のシーズン9が最高。しかし全盛期は長くは続かずその後は低下傾向にあります。

入れ替わるように2012年に始まったのが『ドクターX』で最初のシリーズの平均視聴率は19.1%。『相棒』の後は『ドクターX』だ、と力が入ったのでしょう。
『相棒』シリーズ毎の平均視聴率

           『相棒』シリーズ毎の平均視聴率


米倉涼子も以前は……

テレビ朝日が続けようと思っていても、主演俳優がそう思っていなかったら続けられません。例えば『女王の教室』の天海祐希や『家政婦のミタ』の松嶋菜々子はイメージの固定化を嫌い、続編を断ったといわれています。

米倉涼子も以前はやめたがっていました。第2期の時に、第3期はあるのかと問われた内山聖子プロデューサーは「いたしません(笑)。でも、私も上から命令されたら『御意』と言わざるを得ないのかも」と米倉涼子の意を汲んで回答。第3期には米倉涼子も「第4シーズンはいたしません、というつもりで、全力を出し切って臨みます」と言っています。

第3期最終話の患者は主要キャストの神原晶(岸部一徳)。そして放送終了後に米倉涼子が結婚、さらに翌2015年には『ドクターX』は放送されず、シリーズ完結の雰囲気が漂っていました。

しかしその後、米倉涼子が日本テレビで主演した連ドラ『35歳の高校生』や『家政婦は見た!』リメイク版などのスペシャルドラマが不発。さらに結婚生活も破綻(2016年に離婚)したためか、2016年7月にスペシャル版、10月から第4期が始まり、完全復活しました。


一人の脚本家に頼ることのリスク

もう一人、『ドクターX』で重要な人がメイン脚本の中園ミホ。大学病院への取材で『ドクターX』を着想を得たとのことです。基本構造も中園ミホ脚本の『ハケンの品格』+『白い巨塔』のパロディ的。2012年の第1期は全話脚本を担当しました。

しかしその後、2014年3~9月放送の朝ドラ『花子とアン』を担当。その準備のためか2013年10月からの第2期は1,2話のみ担当、2014年の第3期は『花子とアン』終了後、すぐに『ドクターX』が始まるスケジュールで最終話のみ。さらに来年は大河ドラマ『西郷どん』を担当するためか、現在のシリーズでは脚本として名前があがっていません。

一人の脚本家に頼ってしまうと、その脚本家のカラーが強く出てしまいがちです。『コード・ブルー』1,2シーズンは『救命病棟24時』や『医龍』などを担当し医療ものを得意とする林宏司脚本でしたが、2017年放送の第3シーズンは安達奈緒子に交代。そのためか、恋愛要素が多くなり「『コード・ブルー』ってこんなドラマ?」という声もありました。

一方、『ドクターX』は早いうちに複数脚本家体制に変わったことで、新たなパターンも取り入れつつ長く続けられるようになったのです。


テレビ朝日のシリーズものは今後どうなる?

さて、テレビ朝日得意のシリーズものですが、一つ懸念があります。『警視庁捜査一課9係』で渡瀬恒彦さんが亡くなったことです。第12シリーズでは内閣テロ対策室のアドバイザー兼務で9係にはなかなかこられないという設定でしのぎました。亡くなってどうするんだろう?という興味もあって視聴率は好調でしたが、このまま続けるのはムリがありそう。

浅輪(井ノ原快彦)と倫子(中越典子)が結婚するスペシャル版を過去映像やCGを駆使して完結させるのがいいように思うのですが、どうするんでしょうか。こちらも、引き続き注目の点となりそうです。
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