株式の購入額はマイナスに
日本銀行が四半期ごとに発表する資金循環統計によれば、2017年6月末の家計が保有する金融資産残高は1832兆円になりました。1年前が1755兆円ですから、金額にして77兆円、率にすれば4.4%の増加になっています。勤労者の収入があまり増えていないことを考慮すれば、驚異的な増え方と言えるかもしれません。家計の金融資産残高が増えた背景は、株高が進んだことです。2016年6月末の日経平均株価は1万5575円。2017年6月末は2万33円と約29%も上昇したのですから。ただ、株式の保有額は大きく膨らんだのですが、株式の購入額自体はマイナスとなっています。家計は利益確定を進めたと考えられます。
家計の金融資産残高が過去最高を更新したように、企業の金融資産額も前年同月比で13%増え、1116兆円と過去最高を更新しました。企業の金融資産では、保有株式が28.6%も増え371兆円と評価額が大きく膨らんだことが大きいようです。資産額が増えるのは企業にとってプラスなのは確かですが、一方で多額の金融資産を保有する必要があるのかと疑問が残ります。
現預金は42四半期連続の増加
それでは家計の金融資産の内訳を見ていくことにしましょう。資産別の金融資産残高で最も多いのが現預金。前年同月比2.6%増の945兆円となりました。そのうち現金は前年同月比5.3%増の82兆円でした。2016年2月中旬から日本銀行がマイナス金利政策を導入したことから、金融機関に預けてもその利息は微々たるものと考え、現金で保有する人が増えたようです。また、株価が上昇したことから、利益確定した資金が再投資されずに現預金となっていると推測されることも現預金が大幅に増加した要因と考えられます。
なお、現預金は42四半期、10年6ヵ月もの長きにわたり増え続けています。政府が主導する「貯蓄から投資(資産形成)」は進んでいないようです。
株式は前年同月比22.5%増の191兆円となりました。ちょうど1年前(2016年6月)は、英国のEU離脱(ブレグジット)問題による株安があったことから、その反動で株価の上昇率は世界的に高かったのです。結果として2割を超える増加率となったのですが、資産全体に占める割合は10.4%に過ぎません。
投資信託も前年同月比15.6%増の100兆円となりました。統計で比較可能な2005年以降、初めて100兆円の大台に乗せました。投資信託への投資資金の流入は緩慢ですが、株式同様、株高と円安が100兆円乗せに寄与したと考えられます。
ほとんどの資産が残高を増やしているのですが、今回の資金循環統計でも残高を減らしたのが債券です。前年同月比6.3%の減少となっています。債券の残高が前年同月比で減少となるのは3四半期連続。気になるのは減少率が期を追うごとに大きくなっていることです。資産全体に占める割合も1.3%、金額にして24兆円の残高しかありません。金利の上昇が期待できないことから、債券の残高の減少にストップがかかるのは時間がかかりそうです。
最後に資産別の構成比を記しておくと、現預金51.6%、債券2.4%、投資信託5.5%、株式10.4%、保険・年金・定型保証28.4%(内保険は全体の20%)、その他2.8%となっています。