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ベストセラーが説く100歳人生に必要なお金と資産の話

世界でベストセラーになっている「ライフ・シフト」の中から、今の日本人に特に必要と思われる部分を抜き出して、解説しました。分厚い本を読まなくても、5分で分かる「100年時代の人生戦略」です。キーワードは、ポートフォリオ運用とリ・クリエーション。

北川 邦弘

執筆者:北川 邦弘

はじめての資産運用ガイド

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世界で注目される著者はこんな方

「ライフ・シフト」という本が20万部を超えるベストセラーとなっています。著者は、リンダ・グラットンというロンドンビジネススクールの教授。英タイムズ紙が選ぶ「世界のトップビジネス思想家15人」のひとりで、安倍政権の看板政策「人づくり革命」を検討する「人生100年時代構想会議」の有識者議員にもなっています。

「ライフ・シフト」の副題は、100年時代の人生戦略。普通の人が100歳まで健康に生きるという時代において、生き方を変える必要を説いています。お金以外にも重要な人生戦略が展開されていますが、まずFP的に注目したいのは、やはり老後資金の確保というお金の問題です。

老後のための必要貯蓄率とは?

人生が80歳時代から、100歳時代に変化して、老後資金の確保の問題は、大変になりました。現在のリタイア層は、安心できる老後資金として、2~3千万を考えていると言われていますが、健康寿命が今より20年伸びたとすると、必要資金も2倍以上にはなるはずです。

それがどれほど大変なことか。リンダ・グラットン教授は、「ライフ・シフト」で、年代別の必要貯蓄率という数字で、分かりやすく説明しています。

その結論だけを端的に伝えるとこうなります。

・  1945年生まれのジャックは、毎年所得の4.3%を貯蓄すれば足りる
・  1971年生まれのジミーは、17.2%の貯蓄が必要
・  1998年生まれのジェーンは、25%の貯蓄が必要

(本の中では、この3世代の人生戦略が、時代を象徴するモデルとして、展開されます)

話をもっと分かりやすくするために、単純化してみます。彼らの年収が、みな等しく800万円だとすると、いま72歳の人は、毎月3万円の積立をしていれば良かった。いま46歳の人なら毎月11万円、19歳の人なら17万円。これが、100歳までの老後資金を作るための現実です。

今のシニア世代(ジャック)には、問題は軽いけれど、若年層(ジェーン)になるほど、問題が深刻であることが分かります。

ライフプランの前提条件は?

結論だけをあまりに簡単にお伝えしてしまったので、その計算プロセスに疑問符がつく人もいるかもしれません。そこで、必要貯蓄率の計算前提となっている4つの数字をご紹介します。

1、老後の生活資金は、最終所得の50%
2、長期の投資利益率は、年平均3%
3、所得上昇のペースは、年平均4%
4、引退希望年齢は、65歳

生活資金が最終所得の50%ということは、現役最後の年収の半分の金額で、老後生活をやりくりするという生活水準。
投資利益率は、年間で3%ずつ、投資資産が増えているという利回り水準。
所得上昇とは、定期昇給などで、給料が上がっていく増収水準。
引退希望年齢とは、お金のための労働を止めたいリタイア年齢水準。

この4つの水準を、前提条件として同一にそろえた結果として、先ほどのような必要貯蓄率が計算されます。しかし、今の若年層にとって、年間収入の25%を貯蓄し続けるというのは、あまりに過酷で非現実的です。そこで、生き方を変える必要があるという方向に導かれるわけです。

新しいお金の考え方とは?

新しい生き方の話に移る前に、新しいお金の考え方についても、一章をもうけて説明されています。必要な資金をどう得るかという方法論になります。

いくら老後資金がたくさん必要になるからといって、お金のために危険なギャンブルをしたり、独りよがりな学習で、時間を無駄にしていると、生活と仕事のバランスが崩れてしまいますから、ここもきちんとした原則が必要です。

先ほどの投資利益率の年平均3%という水準は、保守的な日本人から見れば、実現可能性を疑いたくなるような高い数字ですが、グラットン教授の提案する原則を守ることができれば、まったく現実的な水準だと、私は思っています。その原則とは、次の3つです。

・  長期投資
・  分散投資
・  自動つみたて投資

特に分散投資に関しては、複数のファンドを組み合わせて運用するポートフォリオ運用を推奨しています。この3つの原則は、日本でもいささか言い古された感のある専門用語ですが、金融の本場の英国で、気鋭の学者が、ベストセラーの中で語っているところをみると、いかに重要な基礎であるか、認識を新たにさせられました。

レクリエーションとリ・クリエーションの違い

最後に、「ライフ・シフト」で書かれている、お金以外の戦略の一部をご紹介したいと思います。

「マルチステージの出現、エイジとステージの分離、一斉行進型モデルの終焉はすべて、自分の人生をどのように組み立てるかについて、個人の選択の機会を生み出す」(本書より引用)

分厚い本の中に盛り込まれたいくつかの選択の機会の中から、私が一つだけ強調するとしたら、それは「リ・クリエーション」というキーワードです。

Re-Creationとは、自分を再び創造すること。自己再生といい直しても良いかもしれません。人生が長くなるなる時代に、人が幸せを維持するには、何歳になっても自分の最適化を心がけて、自分を再生する必要があると考えてください。単なる娯楽であるレクリエーションでは、人は再生できないという意図を含めて「リ・クリエーション」と書いています。

人生を変える無形資産とは?

その「リ・クリエーション」という自己再生を促進する推進エンジンとなるのが「変身資産」です。

人生には、有形資産と無形資産があり、お金や不動産や有価証券が有形資産なら、知識や友情という無形資産も、大事な資産としてあります。人は有形資産ばかり欲しがります。しかし有形資産を手に入れるには、実は無形資産が大事だったとは、近年普及してきた考え方ですが、リンダ・グラットン教授は、無形資産の中に、特別に「変身資産」というカテゴリーを作りました。

100歳人生は、いろいろなステージを渡り歩きます。あるいは、複数のキャリアを経験します。そこで、人生の途中で変化と新しいステージへの移行を成功させる意思と能力が必要となり、それを、「変身資産」と名付けたのです。

変身資産は、移行の不確実性とコストを減らし、成功の確率を高めるために役立つものです。具体的な変身資産は、次の3つ。

1、自分についての知識(内省)
2、多様性に富んだネットワーク(人脈)
3、新しい経験に対して開かれた姿勢(先見性)

第一に、自分をよく知っていなければ、変身はできません。深い内省と客観的な見極めは、変身の大前提の能力となります。

第二に、誰でも人脈は必要ですが、変身を遂げるには、活力と多様性に富むネットワークである必要があります。意外なことを、思い切りできるための触媒の役割です。

最後の姿勢ですが、受け身ではいけません。成り行きで変わらなければいけなくなった変身ではなくて、最初から計画され、主体的に選ばれた変身でなければなりません。

100歳時代の新しい人生において、自分を変えることができる能力と知識を「資産」と考えるあたりは、非常に柔軟な発想だと思います。他にも、ワクワクするような新しい生き方が例示されています。

全部の戦略をお知りになりたい方は、ぜひ本書を読んでみてください。
「ライフ・シフト」
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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