テレビドラマの頂点を決める「エミー賞」とは
映画の祭典は「アカデミー賞」、音楽の祭典は「グラミー賞」、ミュージカルの祭典は「トニー賞」と呼ばれる。「エミー賞」はというと、ずばり“テレビドラマの祭典”である。毎年一月に「ゴールデン・グローブ賞」と呼ばれるアワードが開催されるが、こちらは「映画+テレビドラマ」の祭典。つまり、「エミー賞」とは一年に一度開催される、海外ドラマの世界一大きな祭典なのである!「第69回エミー賞授賞式」は日本時間9月18日朝8:00~(C)Television Academy
「エミー賞授賞式」を開催する主催者は、「米国テレビ芸術科学アカデミー(The Academy of Television Arts & Sciences;ATAS)」と呼ばれる、アメリカのテレビ業界で働く人々で形成される業界団体である。1949年より第一回目のエミー賞授賞式が開催されるが、しばらくラジオでの放送だった。1955年になって初めて、テレビで授賞式の様子が生中継されるようになるが、これは、「アカデミー賞授賞式」にならったものだとされている。
ちなみにテレビでの生中継は、アメリカの4大地上波ネットワークであるNBC、FOX、ABC、CBSが毎年持ち回りで放送しており、2017年は、CBSでの放送となる(日本ではFOXチャンネルで生中継される)。
俳優からスタイリストまで、海外ドラマに携わるすべての人が受賞対象
エミー賞の対象は、アメリカやイギリスなど欧米の主要テレビドラマを始め、リアリティショー、バラエティショーなど、あらゆるテレビ番組が該当する。受賞対象は、主演、助演、ゲスト出演の俳優のみならず、脚本家、製作総指揮、ヘアスタイリング、メイクアップアーティスト、撮影技術、音響に至るまで、作品に携わるすべての人である。ノミネートされる人が数多くいるため、授賞式会場には毎年1,000人近い人が集まる。あまりにもノミネートされる人が多く授賞式が一日がかりになってしまうため、最近では衣装やメイク、音響やカメラワークに関する授賞式は、作品賞などのメイン部門の発表よりも一週間ほど前に行われるようになった。
テレビドラマの中でも3つの部門が存在する
テレビドラマの中でも、ドラマ部門、コメディ部門、リミテッドシリーズ部門の3つの部門が存在する。ドラマ部門とは、一般的に私たちが視聴している海外ドラマシリーズのことを指し、コメディ部門はいわゆる30分以下のコメディドラマのことである。コメディドラマとしては「シチュエーション・コメディ(シットコム)」と呼ばれる観客の笑いが入るタイプなどがメジャーだろう。次にリミテッドシリーズ部門である。いわゆるミニドラマシリーズのことで、通常のドラマシリーズよりもエピソード数が少なく、1シーズンで結末を迎えるドラマがこれに値する。これらの部門以外には、アメリカ人に大人気なリアリティショーのナンバーワンを決めるリアリティショー部門や、ジミー・ファロンや2017年のエミー賞の司会を担当するスティーヴン・コルベアなどが出演する『ザ・レイト・ショー』などのバラエティ部門などがある。
注目されるのは、やはり、ドラマ部門、コメディ部門、リミテッドシリーズ部門におけるそれぞれの作品賞と主演男優賞、主演女優賞である。どの作品が、どの俳優が賞をとるのか、毎年注目されている。
ネット配信ドラマ全盛期から、地上波ドラマ下剋上の時代へ
これまでは地上波ネットワーク局が放送するドラマが数多くノミネート&受賞していたが、ここ最近はその傾向が変わりつつあった。HBOなどのペイチャンネルや、NetflixやHulu、Amazonプライム・ビデオといった定額制のネット配信サービスがオリジナルで製作した作品のノミネーションが過半数を占めるようになってきたのである。一時は、地上波時代が幕を閉じたように見えたが、2016年後半に、『THIS IS US 36歳、これから』というヒューマンドラマがNBCで放送され、高視聴率をマーク。2017年のエミー賞で10ノミネーションを獲得し、ペイチャンネルや定額制ネット配信サービスからの奪還なるかと注目されている。
なぜ同じドラマが毎年ノミネートされるの?
エミー賞とアカデミー賞の大きな違いは、エミー賞は同じ作品が何度もノミネート&受賞すること! アカデミー賞は、その年に公開された映画が対象になるが、エミー賞は、その年に公開された海外ドラマのシーズンが対象になる。したがって、昨年ノミネート&受賞したドラマが、翌年、新しいシーズンで再度ノミネート&受賞するというわけだ。ペイチャンネルHBOのヒット作『ゲーム・オブ・スローンズ』やコメディドラマ『モダン・ファミリー』、『VEEP』などがまさにその典型的な例である。毎年顔ぶれが変わらないなぁなんて思う人も少なくないだろう。しかし、2017年のエミー賞には、なんとエミー賞の常連である『ゲーム・オブ・スローンズ』の名前がない。というのも、新シーズンの放送が7月からだったため、エミー賞ノミネーションの対象(前年の6月~その年の5月までに放送されるドラマが対象)にならなかったのだ。『ゲーム・オブ・スローンズ』がない今、正直どの作品が、どの俳優が受賞してもおかしくない状況にある。エミー賞に名前を連ねるレベルになると、どの作品も比べられないほど素晴らしいからだ。
今年の海外ドラマの頂点を決める『第69回エミー賞授賞式』は、レッドカーペットが9月18日(月・祝)8:00より、授賞式は同日9:00より、FOXチャンネルにて日本独占生中継される。