助けてくれる人がいない……助けてくれる存在を探す5つの視点
助けてくれる存在の探し方
そう思って、一人でがんばってきた。でも、もうダメ。消えてしまいたい……。
そんなふうに感じたことは、ありませんか?
「消えたい」と思ってしまうときは、自分を極限まで追いつめ、疲れ果ててしまっていることが多いものです。
どれだけがんばっても、自分一人の力ではどうにもならない問題というのは起こるもの。うまくストレスマネジメントできる人は、極限まで心が追いつめられる前に、自分を「助けてくれる存在」をいろいろな視点から探しておく、という特徴があります。
では、どういう視点から「助けてくれる存在」を探したらいいのでしょうか?
ここでは、「助けてくれる存在」を探す手がかりとなる5つの視点をご紹介します(※1)。
ぜひ、極限まで心が追いつめられる前に、一度自分を「助けてくれる存在」について考えてみてください。
<目次>
視点1:「実質的に助けてくれる存在」はいないか?
たとえば、仕事で多大な損害を出してしまったとします。そんなとき、実際に、その損害を最小限にするために一緒に走り回ってくれる上司や同僚がいたら、「なんとかなりそう」と思えますよね? こうした上司や同僚は「実質的に助けてくれる存在」の一例です。
また「皆でこの問題を解決しよう」と一致団結するような会社で働いていると、「迷惑をかけて申し訳ない」という気持ちをパワーにすることができるかもしれません。
さらに、「事故を起こし多大な損害を出してしまったけれど、保険をかけてあったから倒産は免れる」といった制度やしくみがあると、反省はしても、極限まで心が追いつめられることは少ないでしょう。
こうした人や組織、制度やしくみはすべて「実質的に助けてくれる存在」です。
安心して働くためには、日頃から職場で良好な人間関係を築き、健康な職場づくりに取り組み、個人を追いつめない会社の制度やしくみを構築しておくことが重要なのです。
とはいえ、それがなかなか難しく、本当に困ったときに「実質的に助けてくれる存在」がいない場合もあるのが実際のところ。
だから「誰も助けてくれない。もっとがんばらないと!」と生きるのに疲れるまで、追い込んでしまうということが起こるのです。
心が追いつめられたときは、この「実質的に助けてくれる存在」ばかりに目が向きがちになるのですが、実質的な助けが得られなくても、これから紹介する残りの4つの視点に目を向けるとまた道が開けてくるのです。
では、実質的な助けが得られそうにない場合には、どこから助けを探したらいいのでしょうか?
視点2:「情報をくれる存在」はいないか?
まず、あなたの問題の解決につながりそうな情報をくれる人やサービスがないか、考えてみましょう。たとえば、仕事で多大な損害を出してしまい、上司に報告をしたら激怒された。さらにパニックになり、どこから手をつけていいのかわからなくなっているとき。そのときに「まずは落ち着いて、事実関係を整理し、取引先に謝罪をして! それから再発防止策をまとめよう。 取引先の理解が得られ、再発防止策が評価されれば、うまくおさまるかもしれない」等とアドバイスしてくれる同僚がいたら、対応に向けてやる気が湧きますよね?
また「こんなに大きな損害の責任をどうとったらいいんだ……」と不安でいっぱいのときに、弁護士の友人から、従業員の損害賠償責任の制限についての情報が得られたら、少しホッとするでしょう。
つまり私たちは、実際にまだ状況が何も変わっていなくても、「あっ、こうすればいいんだ」と理解するだけで、心が救われることがあるのです。
こうした「問題解決につながるような情報をくれる人」が、2つ目の助けてくれる存在です。
ここは特定の人に限らず、自治体・NPO法人等が行っている相談窓口・書籍やインターネットの情報サイト・研修会等のサービスや場も含まれます。
視点3:「心を癒してくれる存在」はいないか?
問題の解決につながる実質的なサポートや情報が得られなくても、つらい気持ちを受け止めてくれたり、がんばりを認めてくれたりする人がいるだけで、「よしっ、また明日からがんばろう!」という気持ちが湧いてくることもあります。たとえば、「こんな損害を出してしまった自分は最悪だ」と自己嫌悪を抱きながら帰宅したときに、家族がしっかりと話を聞いてくれ、「大変だったね」と自分のつらい気持ちを受け止めてくれたら、少し心がホッとしますよね?
「つらい気持ちを受け止め、心を癒してくれる人」は、3つ目の助けてくれる存在です。
家族に限らず、恋人や友人でもいいですし、「人よりもペットや植物等のほうが癒される」という場合には、それでももちろんOK!
大変なときこそ、こうした「心を癒してくれる存在」と過ごしましょう。
すると、「損害を出したからといって、自分の世の中に必要ない人間になったわけではない」と思えるのです。
視点4:「心の居場所をくれる存在」はいないか?
でも時には、親しい人だからこそ、利害関係があるために支えてもらえなかったり、あるいは、心配をかけたくなくて言えなかったりすることもあります。たとえば、多大な損害を出した結果、責任のとばっちりを受けたくないために同僚からは距離を置かれ、家族にも「まだしばらく子どもの学費がかかるのに、あなた、これからどうするつもり?!」と責めたてられ、孤立してしまったという場合。
そうしたときに、長年通っているバーに行き、顔なじみのマスターや常連客と、たわいもない話をしながらも、なんとなく温かいつながりや心の居場所を感じられたりすると、少し元気を取り戻せたりする、ということもあります。
こうした心の居場所が、4つ目の助けてくれる存在です。
具体的な悩みについて触れなくても、「ここには自分の居場所があるな」と感じられることが、傷ついた心の回復にじわじわと効くこともあるのです。
視点5:「フィードバックしてくれる存在」はいないか?
さいごに、迷いが生じ苦しみが増すのは、「この決断は正しかったのか」「こんなこと言ってしまってよかったのか」等と、自分の決断や言動に自信がもてないから、ということが少なくないことも覚えておきましょう。たとえば「同じミスを繰り返さないためには、こうした対策をとるといいだろう」と思ってはいても、その問題を起こした張本人である自分の決断にどうも自信がもてない……。
そんなときに、上司や同僚が「この再発防止策はいいですね」と言ってくれたりすると、自信をもって対応にあたれます。
安心して前に進めるようにサポートしてくれる、こうした冷静にフィードバックしてくれる人が、5つ目の助けてくれる存在です。
極限まで追いつめられる前に、「助けてくれる存在」に気づこう
複数の視点から助けてくれる存在を探す
様々な視点から考えてみると、私たちのまわりには、助けてくれる存在が意外とたくさんいることに気づくのではないでしょうか?
視点1の「実質的に助けてくれる存在」だけを考えて「ムリだ! 自分を助けてくれる人なんて誰もいない」と感じたときには、ぜひ残りの4つの視点から、自分を「助けてくれる存在」を探してみてください。
心の余裕があるときに5つの視点から「助けてくれる存在」について考えておく。そして、極限まで追いつめられる前にどれか1つでもいいからその「助けてくれる存在」に頼る。
それが、つらいことも起こる人生を、うまく歩んでいくために重要なのです。
※1 蝦名玲子『生き抜く力の育て方:逆境を成長につなげるために』(大修館書店、2016年)
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