2代目は見た目も実用性も大きく向上
フォルクスワーゲンの生産モジュール“MQB”をSUVで初めて採用した、コンパクトSUVの2代目。ベーシックグレードのTSIコンフォートライン(360万円)、装備充実のTSIハイライン(432.2万円)、スポーティなスタイルのTSI Rライン(463.2万円)を用意する
先代の初代ティグアンの見映えは、ひと言でいって、モノ足りなかった。パッとしないという表現がぴったり。バッヂを付け替えさえすれば、どこか国産メーカーのSUVだと言われても納得しそうな、ありきたりなデザインに見えた。必然かどうか、走りのイメージもぼんやりしたもので、ベースであるはずのゴルフほどには高い評価を与えることができなかった。
ボディサイズは全長4500mm×全幅1840mm(Rラインのみ1860mm)×全高1675mm、ホイールベース2675mm。旧型より全長70mm、全幅30~50mm大きく、全高は35mm低くなっている
12.3インチディスプレイを用いたアクティブインフォディスプレイは、中央にナビなどの情報を表示する。ネットに接続することでナビの精度などを高めるテレマティクス機能や、スマホのアプリを楽しめる機能などが採用されている
要するに、立派なスタイリングを手に入れたうえで、実用性も大いに増した。積極的に選んでいい、コンパクトSUVの筆頭に躍り出た、というわけだ。少なくとも、静的な評価においては。
仕立ては良いが、あっさり薄味に過ぎる?
動的にどうか。まずは売れ筋、150ps&250Nmの1.4Lターボ+6DSGのFFに乗ってみた。トリムレベルは、他モデル同様、コンフォートラインを最廉価とし、順に、ハイライン、Rラインとなっている。試乗車は、これまた売れ筋、ハイラインだ。ゴルフ7と同じMQBプラットフィームをベースとしている(パサートもそうだ)。当然、ゴルフ7のような走りを期待して乗り込んだが、ん?何だか、ちょっとアッサリし過ぎていないかしら? というのが第一印象で、試乗コースをこなし、返却場所に戻ってきても、それほど印象が好転することは、なかった。
端的に言って、薄味だ。ゴルフだって、そうなのだけれども、丁寧に取った出汁のような深みというか、凄味があった。パサートも、昔ながらの乗用車はこうでなくっちゃ、とクルマ好きのオッサンを思わせるだけの懐の深さが乗り味に出ていた。ところが、ティグアンには、そのどれもがない。ちょっと背を高くしたくらいで、こうもあっさりと薄味になってしまうものなのか、と、逆に驚いてしまったほど。
ややかったるいものの、それなりに活発に走るし、乗り心地もSUVにしては決して悪いものじゃない。むしろ、良い。決定的にダメなところなど、どこにも見当たらなかったというのに、見晴らしがゴルフより良いという事以外に、ティグアンに乗って得られる幸福感が見あたらない。これはいったいどうしたことなのだろう?
VWの考える“未来のクルマ像”?
安全・快適装備も充実。アダプティブクルーズコントロール(ACC)やレーンキープアシスト、プリクラッシュブレーキシステム(フロントアシスト)、レーンチェンジアシスト(サイドアシストプラス)を装備する。駐車支援システムのパークアシストも備えた
ところが、昨今では、そこまでの“根の詰めよう”、が期待できなくなってしまっているのでは、ないだろうか? ゴルフベースのSUVを造るのに、スタイリング以外にさほど頑張った形跡が見受けられないのは、その現れの一つではないか……。もしそうだとしたら、ちょっと悲しいことだけれども、デザイン重視路線をひた走るメルセデス・ベンツ然り、ドイツ勢にひと頃の勢いが失われつつあることもまた、事実だと思う。
日本には都会的なエクステリアのオンロードバージョンを導入。前方の状況に応じてヘッドライトの照射パターンを変更し続けてくれるダイナミックライトアシストもオプション(コンフォートライン以外)で採用している