復職はスムーズに果たしたけれど、寂しさが身に染みる
数年ぶりの一人暮らしは寂しさがつのった
でも、数年ぶりの一人暮らしは、思っていたよりもずっとずっと寂しいものでした。育休中は自分の自由時間が皆無で、それこそトイレに行く時間もコーヒーを飲む時間もなく、自由を切望していたものです。それなのに、すべてが自由時間になってみると、今度はあの束縛が恋しくてたまらないのです。この気持ちは、両方の立場を経験した人にしかわからないでしょう。
息子は2歳になりたて。まだ言葉はあまり話せませんでした。唯一のコミュニケーション手段といえばスキンシップぐらい。スカイプ越しでは、そのスキンシップができない……。息子に触れられない毎日は、あまりにもつらい日々でした。バーチャルでは、あの胸きゅんは得られないのです。
やっぱり家族は一緒がいちばん!
一方の妻はといえば、親戚もいない異国の地で、保育園に預けてフルタイムで働くという生活。しかも、初めての育児で、いきなり魔の2歳児を相手にしなければなりません。肉体的につらかったに違いありません。2人とも弱音を吐かずに頑張っていましたが、やがて限界が訪れます。別居開始から4ヶ月が過ぎたころ、ほぼ同時に同じ結論に至ったのです。
「こんな生活、もうやめよう」
「やっぱり、家族は一緒がいちばんだよね」
こうして2009年8月、私は6年半在籍した会社を辞めました。
感動の再会のはずが……
感動の再会!のはずが、妄想とはだいぶ違う展開に
退職という一大決心をしての再渡米。もう戻る場所はありません。熱くこみ上げるものを感じながら、サンフランシスコ国際空港に降り立ちました。
カートを押しながらゲートを出ると、妻と息子の姿を発見!
手を広げる私の胸元に、2歳の息子が飛び込んできます。熱い抱擁。絵に描いたような感動の再会に、思わず涙がこぼれます。
「そうかそうか。寂しい思いをさせてごめんな。もう離れないよ」
……という妄想は、見事に外れました。
妻と息子は待っていたものの、胸に飛び込んではきませんでした。こちらから歩み寄ると、息子は指をくわえながら不思議そうな顔で見上げています。
このひと、だれだっけ?
すぐに思い出したのか、抱っこはさせてくれたけど、以前のようにくっついてはくれませんでした。
あの2年間の育休の日々は何だったのだろう。あれだけ、濃密な時間を過したじゃないか。抱っこひもで2人、あちこち歩き回ったじゃないか……。
息子を無理やり抱きしめながら、(妄想とは違う展開ではあるものの)用意していたセリフを言いました。
「寂しい思いをさせてごめんな。もう離れないよ」
こうして私は、無期限の主夫になったのです。
かけ足になってしまいましたが、以上が、私が主夫になった経緯です。
育休取得時の会社との交渉や育休生活、アメリカでの子育てやフリーとしての独立など……まだまだ書き足りないことが一杯あります。それらについては、また別の機会に!