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なぜ安い?アラウンド1000万円「ローコスト住宅」の今

「住まいをできるだけ安く手に入れたい」と、多くの方々が考えていると思います。ですから、そうしたニーズに対応するため、住宅市場には「ローコスト(低価格)住宅」と呼ばれる商品が存在します。この記事では、その登場の経緯や現在の状況、注意すべき点などをまとめました。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

ハウスメーカー選びガイド

ローコスト住宅はどのような経緯で登場したのか?

建物の本体価格がおおよそ1000万円程度の住宅商品があります。「ローコスト(低価格)住宅」などと呼ばれるものですが、一昔前に大きな話題となりました。「できるだけ安く家づくりをしたい」という方にとってはもちろん、今も多くの方々にとって気になる存在であり続けているようです。そこで今回は、その登場の経緯や中身、そして現在の位置づけなどについて詳しく考えてみたいと思います。ローコスト住宅について知ることで、住まいづくりに必要なポイントを理解する契機になるとも考えられます。

私の記憶では、ローコスト住宅が登場したのは2000年代に入ってから。2001年にミサワホームが「リミテッド25」という商品を発売したのが最初だったと思います。「坪(3.3平方メートル)あたり25万円から」という価格設定で、当時大変話題になりました。
25万円

「坪25万円台」がローコスト住宅のおおよその目安。現実にはそれ以下をうたう商品も存在しているようだ(写真はイメージ。クリックすると拡大します)


その後、「坪25万円台~」を一つの目安に様々な事業者によりローコスト住宅が発売されましたが、リーマンショックが発生した2008年頃にさらに広がりました。同時に、この頃からローコスト住宅系を専門とするハウスメーカーの社会的な認知度が高まりました。

時代の落とし子、象徴的な住宅商品に

2000年~2010年頃は「失われた10年」(バブル崩壊期から数えると20年といわれることもあります)と称される、我が国にとっては経済的に難しい時期でした。少子高齢化のほか、国民の雇用と所得の低下が顕在化し始めた変化の大きな時代でした。
デフレ

デフレの時期には、多くのモノの価格が下がっていた。住宅もその波に飲み込まれ、結果的にローコスト住宅が登場したと考えられる(写真はイメージ。クリックすると拡大します)


ローコスト住宅はその象徴的な住宅商品であり、時代の落とし子といえるものだったといえるのではないでしょうか。当時はモノの価格が下がるデフレの時代でもありましたから、マスコミは「住まいにも価格破壊の時代が到来!」などと大騒ぎしていました。

少子高齢化や所得の不安定さは今も続いていますので、ローコスト住宅は社会の支持を得て、今も一定の需要と存在感を持っています。いわば、時代が求めたという側面があるわけですが、ローコスト住宅の登場と普及にはそのほかの要因もあります。

ローコスト住宅の普及を促した新たな仕組み

それは住宅部材の製造や流通の進化や発達です。ローコスト住宅のほとんどは木造住宅ですが、特にプレカット材による供給スタイルが一般化したことも、普及に大きく貢献したと考えられます。プレカットというのは、設計図に合わせて木材を加工することです。
プレカット

プレカット工場の様子。工場にあるコンピュータ管理された機械により、設計図通りに正確に木材が加工される(クリックすると拡大します)


機械化された専門の工場で加工するため精度が高い上、加工コストが削減されるという特徴があります。このことにより住宅建築の費用を抑える効果が生まれます。というのは、大工さんや職人さんの人件費も抑制できるほか、施工期間も大幅に短縮できるためです。

ちなみに、プレカット材の普及はローコスト住宅系ハウスメーカーのみならず、地域にある工務店やパワービルダー(小規模住宅の分譲住宅事業者)と呼ばれる事業者にもメリットを生み出しています。大手のプレハブ系ハウスメーカーは自前で部材の加工工場を有しなければなりませんが、工務店などそれを持たなくてすむのです。

つまり、工場の運営費用(設備投資や維持管理のコスト、人件費)などを負担せずにすみますから、大手のハウスメーカーに比べてコスト競争力を持つことができているわけです。これも大手のハウスメーカーと工務店の住宅価格の大きな違いとなっています。

坪単価表示から総額表示が主流に

では今、ローコスト住宅はどうなっているのかという話に移ります。一昔前と明らかに異なるのは、「坪単価」での表示が少なくなっていることです。その代わりに、「(延床面積の総額で)1000万円台~」などといった表現が増えてました。

というわけで、今回は「アラウンド(おおよそ)1000万円」という表現を使っているわけです。これは、住宅の建築価格表示するのに、以前から坪単価はわかりにくいという指摘が多かったからだと思われます。総額表示をすることによって、より実態に近い価格表示に改めているというわけです。
1000万円~

現在はこのような総額表示が主流になっている。もちろん「900万円台~」などという、さらに低い表示がされているケースもある(写真はイメージ。クリックすると拡大します)


ちなみに1000万円という総額は、
坪単価25万円×40坪
から来ているものと考えられます。元々、ローコスト住宅の平均的イメージが「坪25万円~」であり、平均的な延べ床面積が40坪(132平方メートル)であるためです。つまり、総額表示であっても中身はあまり変わらないというわけです。

このほか、住宅市場の状況がローコスト住宅の普及期から変わりつつあることも影響していると考えられます。ローコスト住宅はこれまで地方を中心に需要を伸ばしてきましたが、現在は大都市圏への人口集中の影響から、地方では住宅需要が減少傾向にあります。

そのためローコスト住宅系メーカーも大都市圏へ供給をシフトしようとしていますが、そこは高い提案力やノウハウが求められる厳しい市場でもあります。そこで坪単価表示ではなく、総額表示でローコストのイメージを薄めようとしているとしているのです。

ローコスト商品を広告塔とする動きも

ローコスト系ハウスメーカーの中には近年、そのイメージからの脱却を目指している事業者もあります。地域の工務店やパワービルダーとの価格競争を避ける必要が生じたためです。そこで、ローコスト系ハウスメーカーは以下のような戦略をとるようになりました。
パワービルダー

地場の工務店やパワービルダーとの競争で、「脱ローコスト住宅」を図るハウスメーカーも現れ始めている(写真はイメージ。クリックすると拡大します)


「1000万円台~」という価格表示をして商品も用意する一方、それに興味を持ってモデルハウスに来場したり、資料を請求したお客さんに、より付加価値のある上位商品を提案するというスタイル。いわば、ローコスト住宅商品は広告塔のようになっているのです。

このほか、インターネットを活用した商品も存在します。建物の形状や広さ、デザイン、設備仕様などを限定したもので、ネットを通じてある一定レベルまで顧客が決められるものです。これは営業経費がほとんど発生しないためコストダウンできるのです。

そもそもローコスト住宅とはどんな商品なのか?

以上が現状についてですが、最後にローコスト住宅に関して特に理解しておくべきポイントを紹介します。大きく以下のようなポイントがあるように思います。
(1)表示価格では建てられない
(2)限られた人たちしか建てられない
(3)ハイレベルな建物ではない

地盤改良

地盤改良工事をした土地の様子。これらの費用はローコスト住宅の表示価格には含まれないケースがほとんどだ(クリックすると拡大します)


(1)についてはあくまで建物の建築価格であるということ。水道管の敷設や外構などの費用、各種税金などは別途必要になり、総取得費用は2~3割増し程度になると考えておくべきです。地盤の状況など敷地の条件によってはさらに費用がかかるケースもあります。

(2)はローコスト住宅があくまで企画(規格)型商品であることに起因します。ですから、土地の形状や大きさ、周囲の住宅の状況(斜線制限など)がネックとなって対応できないケースがあるわけです。

形状や大きさについては対応可能でも、旗竿敷地(道路に接していない敷地)の場合では建てられない、あるいはより高額になることが考えられます。建設時に必要となる重機が入らなかったり、部材を入れるのが難しいケースがあるためです。
住宅密集地

都市部の住宅密集地の様子。仮にこのような場所に空き地があったとしても、ローコスト住宅は建てられないだろう(クリックすると拡大します)


(3)は、例えば今話題のZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)には決してならないということです。現在の住宅のスタンダードとされる長期優良住宅に対応しないケースもあるので注意したいものです。

(1)(2)(3)を総合すると、ローコスト住宅は非常に限られた方々にしか対応しない、柔軟性が極度に低い住宅商品であるという可能性が高いわけです。決して万人向けではないということだけは、前もってしっかりと理解しておくべきだと思われます。

逆に、地方や郊外にある程度の大きさの敷地を持っている(購入できる)上、あまり住まいに大きな期待をしないという方なら、ローコスト住宅は有力な選択肢になるといえるのではないでしょうか。

住まいに関する既存の概念を変えた!?

とはいえ、ローコスト住宅は悪い点ばかりではありません。「住宅は非常に高価なもの」という認識を変えたという意味で一定の存在意義がある、とも考えられます。住まいにばかりお金を掛けられるものではなく、新築後の生活には子育て費用なども必要ですし、暮らしそのものを楽しむことも大切ですから。
光熱費

より良い住まいを求めるなら、光熱費など新築後にかかるコストも含めたトータルなコストも検討したいものだ(写真はイメージ。クリックすると拡大します)


特に若い方々の住宅取得に対応しやすい商品ではあることは間違いないと思います。ただし、光熱費などのランニングコスト、リフォームを含む解体までのライフサイクルコストまでを考えると、本当にお得かをよく考えていただきたいとも思います。

そもそも、住まいづくりにおいては様々な検討が必要。ローコスト住宅も、展示場のモデルハウスなどに見られるハイスペックな住宅も同時に検討しながら、住まいづくりを進めて行くと良いでしょう。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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